電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

佐伯泰英『荒海ノ津~居眠り磐音江戸双紙(22)』を読む

2009年05月24日 06時38分15秒 | -佐伯泰英
先祖の墓参と婚約者の披露のために豊後関前藩に里帰りした坂崎磐音とおこんの二人は、前巻においてめでたく仮祝言を挙げたばかりでなく、関前藩に巣食う悪徳政商一味を退治した関係で、博多の大商人・箱崎屋次郎平から是非にと博多へ招待されます。藩政改革に取り組む父・正睦の立場もあり、承諾した磐音とおこん、本編はいわば筑前博多道草の巻です。当代の人気シリーズ、おそらくスポンサーの都合とか何とかいろいろ大人の都合があったのかも。なんせ、九州は作者の地元(*1)ですから(^o^)/

第1章「隠居老人」。さっそく藩道場での練習試合(?)です。隠居老人の吉田久兵衛という人は、大の剣術好きというだけでなく、なかなかの人物のようです。箱崎屋の末娘お杏の案内で散策に出たはずが、無粋な斬り合いの場面に遭遇してしまいます。
第2章「博多便り」。場面は変わって江戸の今津屋。由蔵と吉右衛門のもとに、博多から手紙が届きます。一方、佐々木道場には道場破りが二人。佐々木玲圓が立ち合い、荒っぽく退けます。依田家に婿入りした鐘四郎は、西の丸の家基の近習として出仕予定とのこと。まあ、VIP のボディガードといった役回りでしょうか。いっぽう、筑前博多の箱崎屋では、先日の斬り合いは譜代の娘と新参の侍の身分違いの恋が原因と判明。また剣術好きの吉田老人が、先の国家老で藩建て直しの功労者であることを知ります。帰途、三人の侍に襲われますが、なんなく撃退。
第3章「大股の辻」。なんと、品川柳次郎クンのおさななじみの登場です。椎葉のお有さん。父と兄が家を出てしまい、品川家廃絶の危機に加え、お有にも怪しい縁談が。若い二人のために、今津屋が力を貸すことになりそうな暗示がちらり。一方、博多では、身分違いの恋の逃避行が困難な場面を迎えており、磐音が力を貸します。「幸せになられよ!」という幕切れが、いかにも人気時代劇です(^o^)/
第4章「恋の芽生え」。品川柳次郎と椎葉お有の二人のために、今津屋の由蔵が乗り出します。お有に持ち上がっていた縁談はどうやら裏があるようで、柳次郎は「お有から手を引け」と武士二人に襲われますが、なんとか自力で撃退。恋をすると強くなるのでしょうか(^o^)、お有は思い切って家を出ると言います。柳次郎は、佐々木道場にかくまってもらうことにします。佐々木玲圓は、お有に目をつけた御書院番組頭がもぐりで開帳する賭場を一網打尽にすべく、笹塚孫一やら速水左近やら、錚々たるメンバーで布陣。
第5章「幸せ橋」。品川家廃絶の危機は大逆転で一挙解決。いっぽう磐音は、最後の対決を終えて、おこんとともに福岡を旅立ちます。江戸深川、鰻処宮戸川では、品川柳次郎母子と椎葉お有が、柳次郎の品川家相続決定を祝い、会食中。その席で、今はだいぶ有名になった、お有さんの爆弾発言あり。

「そうか、内職は続くのか。これでは嫁の来手はございますまい」
悄然と肩を落とした柳次郎の落胆ぶりにお有が、
「柳次郎様に嫁の来手がなければ、私が嫁に参ります。いけませぬか」
と言い出し、
「えっ!」
と驚きの声を発した柳次郎の顔が、一気に晴れやかに変わった。

この場面、先日のテレビ「陽炎の辻3」でもちゃっかり取り上げていました。ユーモラスでいて心温まる、なかなかいい場面ですね。

さて、次巻はおそらく陸路での江戸行きになりそうです。おこんさんは法師の湯を往復した経験(*2)もありますので、なんとかなるでしょう。海路とは異なり、どんな事件・悪役でも登場させることが可能です。果たして作者はどんな趣向を凝らすのか、楽しみです。

(*1):Wikipediaより~「佐伯泰英」の項
(*2):佐伯泰英『紅椿ノ谷~居眠り磐音江戸双紙(17)』を読む~電網郊外散歩道

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6 コメント

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Unknown (Aki_1031)
2009-05-26 11:26:55
この巻は柳次郎くんとお有ちゃんのカワイさに
やられた巻でした(笑)。
なんだかとってもフレッシュでラブい2人でしたよね~。
しっとり落ち着いてしまった磐音くん&おこんちゃんと
対照的で、微笑ましく読みました♪
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Aki_1031 さん、 (narkejp)
2009-05-26 21:15:42
コメントありがとうございます。第22巻は、やっぱり柳次郎とお有さんのエピソードがハイライトでしょうか。このあと、国端さんと桜子さん、柳次郎君とお有さん、そして磐音クンとおこんさん、という具合に、ご祝儀の場面が続くのでしょうか。なんとなく、一波乱ありそうな気もしますが(^o^)/

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Unknown (なほまる)
2009-05-28 20:23:25
こんばんは、いつもコメントありがとうございます。

NHKの放送も気にはなるのですが、どうにも作りが気に入らず、一度見たきりです。
でも続いているので、視聴率がいいのかな とかどうでもいいことが気になっています。

narkjpさんのペースなら、今年中には最新刊まで追い付きそうですね。
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なほまる さん、 (narkejp)
2009-05-28 20:33:19
コメントありがとうございます。NHK の土曜時代劇は、時間が合えば観るようにしていますが、時々しか観られないのが残念です。まあ、原作とは大幅に違いますので、割り切らないと開いた口がふさがらずにあごを痛めてしまいます(^o^)/
もう22巻まで来てしまいましたので、なんだかこのペースで読み終えるのが勿体無い(^o^)/
少しペースを落とそうかとも思いまする(^o^)/
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Unknown (キョースケ)
2009-05-29 19:36:41
こんにちは。「みんな教えてもらった」のキョースケです。こちらでは初めましてですね。
磐音とおこんの博多行きの裏事情(?)は、地元を愛する作者の陰謀ですか(笑)これは考えもしなかったです。
柳次郎はどことなく影が薄かった登場人物ですが、磐音の留守中に急に頼もしくなりましたよね。
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キョースケ さん、 (narkejp)
2009-05-29 21:25:54
いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。キョースケ さんの「みんな教えてもらった」の居眠り磐音シリーズ記事は、ひねりのきいた展開がたいへん興味深く、楽しみに拝見しております。
博多道草の事情は、当方が山響を応援するのと同様に、地元振興の深謀遠慮かと推測しましたが、はたして真相やいかに(^o^)/
品川柳次郎クンは、登場したばかりの時は、人はいいが軟弱なキャラクターだったのに、ほんとにすっかり頼もしくなっていますね~。喜ばしいことです(^-^)Y
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