電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

水田の保水・排水能力と果樹園の場合

2020年07月30日 06時01分36秒 | 季節と行事
集中豪雨による増水で氾濫危険水位を超えても、なんとか持ちこたえることができた当地の堤防のおかげで、田んぼも濁流に洗われずに済んだようです。ウソのように水が引いて、一面の緑が風にそよぐさまを見るとき、稲作農家の安堵の気持ちが伝わるようです。丈夫な堤防と広大な遊水地とで守られた田んぼの保水力は、豪雨の時には強力な緩衝地帯・バッファとして作用しますし、河川の水位が下がればたちまち田んぼの水位も下がる排水能力は、縦横に張り巡らされた農業用水路ネットワークの威力を示すものでしょう。

一方で、お米が余っているからと転作を強制され、水田を果樹園に転用したケースでは、大きく明暗が分かれているようです。これは、大きくは転作果樹園の位置条件、すなわち低い土地なのか比較的高い土地なのかによるわけですが、それにしても水害の様子はまるで違います。



写真のように、堤防のない小さな河川に隣接するような低い土地に苗木を植えた果樹園では、しばしば水害を受けやすく、ある程度の日数、水をかぶってしまうと根が呼吸できずに根腐れをおこしてしまい、やがて樹全体が枯れてしまいます。これは位置的な条件であって、農家個人の努力ではどうしようもありません。





これに対し、わが家の果樹園の場合、代々の専業農家だった祖父・亡父の代に、桑畑だった土地に井戸を掘り、一度は開田して稲作を行い、その後に転作を余儀なくされた時代には経費をかけて再び客土をして、地面を高くしてから苗木を植えています。また、周囲には排水路を掘っています。したがって、周辺の田んぼよりもだいぶ畑の地面が高いのです。雨水は田んぼの水路に流れ、果樹園が水浸しになる時間は、その日・その時だけとなります。



果樹園は水はけが要です。このあたりは、戦前の農学校で専門教育を受けた専業農家の設計と覚悟の違いもあるのかもしれません。二箇所あるわが家の園地のうち、自宅から少し離れたところにあるサクランボと桃、リンゴ等の園地は、全く水に浸かった様子がなく、大丈夫なようです。




もう一つ、自宅裏のサクランボ、桃、プルーン、スモモ、梅、柿等の果樹園では、傾斜地の一番低い部分が少し水に浸かりましたが、大部分は大丈夫だったようです。こうした経験をするうちに、祖父と亡父は偉かったと、しぜんに頭が下がります。これで梅雨は終わりで、夏の日差しがどっと照りつけるのでしょうか。

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