電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

中村晃『最上義光』を読む

2010年04月11日 06時23分33秒 | 読書
上杉の賢臣で景勝に仕えた直江兼続を主人公にした「天地人」が大河ドラマになりましたが、当方、原作は読んだものの、残念ながらドラマの方は中断してしまいました。それにつけても謎なのは、なぜ上杉軍が撤退する徳川軍を追撃しなかったのか、という疑問です。これについては、

景勝も兼続も、北の制圧、すなわち最上と伊達の攻略を最重要視し、実際は関ヶ原合戦がわずか一日で終わるとは予想していなかったのだろう。

という解釈がもっとも合理的なものだろうと思います。

それにつけても、最上義光について、自分自身まったく知らないことに気づきました。地元にある霞城公園などで親しみ深い武将であるにもかかわらず、伊達騒動を描いた『樅の木は残った』などのように、腹黒い悪役として描かれることが多いのです。多忙な中、お堅い歴史書はちょいとごめんをこうむって、PHP 文庫でたまたま目についた本書を手に取った次第。

構成は、次のようになっております。

第1章 最上の家督
第2章 天童氏との戦い
第3章 栄枯盛衰、有為転変
第4章 寒河江城の攻防
第5章 伊達政宗、勇躍す
第6章 人生最大の危機
第7章 小田原参陣の明暗
第8章 秀吉の大名試験
第9章 勝算なき朝鮮出兵
第10章 悲劇の幕開け
第11章 徳川家康の策謀
第12章 直江兼続との激闘~陸奥の関ヶ原
第13章 悲願成就
第14章 義光の決断
第15章 死出の旅立ち
第16章 流転輪廻

なるほどなあ。日本列島の、いや本州の端っこにあるという地政学上の立ち場が、最後の決定的な場面で、逆転を許してしまうのですね。結果的にはそういうことか。

それにしても、いくら戦国の世とはいえ、秀頼に嫁ぐことになり到着したばかりの娘・駒姫が、秀頼に連座して死罪になるなど、最上義光が秀吉に心服せず徳川家康に忠義を示した事情は理解できます。ところが、家康に味方し貢献したものの、その家康の一言が最上の跡目相続の騒動を引き起こすのですから、まったく気の毒な話というか、腹黒い家康の策謀か、と思ってしまいます。家康の一言で長男を廃した義光の亡きあと、跡目をついだ家康ご贔屓の家親が、なんと家臣の妻に臥所で刺殺されたとあっては何をか言わんや(^o^)/
源氏の正当な嫡流であった最上家の改易は、徳川幕府の正統性の安泰を図るための絶好のチャンス、恰好の生贄だったのでしょう。



最上義光の時代、県都・山形は広大な三の丸を持つ商業都市になっていたようです。三の丸まで含めれば、山形城は小田原城、大阪城、江戸城と並ぶ四大平城だったそうな。明治に破却され堀は埋められ、旧陸軍の錬兵場となりましたが、戦後は霞城(かじょう)公園として市民に親しまれています。現在、二の丸、本丸の石垣の復旧が進められ、史跡として発掘調査が行われておりますが、桜の季節には格好の散歩コースです。今年は当方も、最上の悲劇に思いをはせながら、霞城公園で桜見物ウォーキングを敢行いたしましょう(^o^)/
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