電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

バーネット『秘密の花園』を読む(1)

2010年04月29日 06時21分47秒 | -外国文学
光文社の古典新訳文庫で、バーネット著『秘密の花園』を読みました。訳者は、土屋京子さん。古典的名作の翻訳にしばしば見られる、時代を感じさせる言い回しなどは見当たらず、ごく自然な訳です。

第1章「だれもいなくなってしまった」第2章「つむじまがりのメアリ嬢」第3章「ムーアのはてへ」。メアリの父は当時インドを統治していたイギリスの軍人で、美人の母はその妻です。社交好きの母親がコレラの流行を軽視し、高原へ避難しなかったばっかりに、一家全滅してしまいます。そして、たった一人放置されていた少女が生き残ります。わがままで頑固でつむじ曲がりの九歳の少女、それが主人公メアリ・レノックスです。父の妹の嫁ぎ先であった英国ヨークシャーに、たった一人で引き取られていきます。真っ暗な夜、ミッスルウェイト屋敷に到着したときは、最悪につむじまがりの気分でした。

第4章「マーサ」第5章「誰かが泣いている」第6章「だれかの泣き声よ、絶対に!」。ここからは、お屋敷での話になります。女中のマーサは、純朴でやさしいし、一人で遊んでいるうちに頑固な老庭師のベン・ウェザースタッフにコマドリの名前を教えてもらいます。コマドリの後をついて歩き回るうちに、四方を壁に囲まれたお庭の存在に気づきます。奥さまが愛した花園、枝に腰かけていた時にその枝が折れ、大怪我をして次の日には亡くなってしまったという、その花園です。そして、夜の風の中に、だれかが泣いているような声がするのです。翌日、広大な屋敷の中を探検しているうちに道に迷ってしまい、メドロック夫人に見つかって叱られますが、やっぱり誰かの泣き声がするのです。

第7章「あのお庭の鍵だわ!」第8章「コマドリに導かれて」第9章「ほんと、へんなお屋敷…」。雨が止み、青空が出てきます。ベン・ウェザースタッフと話をしたあと、コマドリが飛びまわる後をついて回るうちに、メアリは古い鍵を見つけます。それはたぶん、あの秘密の花園の鍵にちがいありません。宿下がりから戻った日、マーサはお母さんからのプレゼントをメアリに渡します。それは、両端に赤と青のストライプの握りのついたなわとびでした。メアリは外に出て、なわとびをしながら菜園じゅうを回ります。そうして、コマドリをおいかけているうちに、風が散歩道を吹き抜けた瞬間、塀を覆うツタのカーテンの下に、丸いドアの把手を見つけるのです。例の鍵を差し込むとぴったり合い、両手で回すと鍵はなんとか回りました。そしてメアリは、秘密の庭の内側に入ったのです。
10年間誰も入らなかったという秘密の庭。それは、バラやつるバラ等が繁茂する秘密の花園でした。メアリは棒切れで草を取り、緑の芽が伸びる周囲をきれいにします。お屋敷に戻り、マーサに頼んで、おこづかいの中から小さなスコップや花のタネを買ってきてもらうことにしました。マーサの弟で、動物の言葉がわかるらしいディコンに持ってきてもらうことにします。外遊びをするようになって、メアリの健康も性格も、少しずつ明るくなってきたようです。

ここまでで、全27章のうちの3分の1を占めています。不幸な境遇ではあるけれど、へこたれない強さを持っている少女メアリが、叔父さんの不思議なお屋敷に引き取られて、秘密の花園を見つけるまでの物語、いわば導入部の第一幕、序破急の序といったところでしょうか。
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