電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第4番」を聴く

2007年06月19日 06時40分29秒 | -室内楽
先日購入したヨゼフ・スークとヤン・パネンカによるベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集(DENON COCQ-83953-6)の中から、一枚ずつ取り出しては、少しずつ聴いています。全部を一気には聴けませんが、なかなかおもしろいものです。昨晩は、ヴァイオリン・ソナタの第4番、「スプリング・ソナタ」の1つ前の作品番号23を持つ、イ短調の魅力的な作品を聴きました。今朝も早起きして、同じCDを聴いております。

第1楽章、プレスト。古いピアノのような音で始まります。でも、低音部はしっかりしている。楽器が古いのではなくて、意図的にそういう音で表現しているのでしょう。ヴァイオリンとピアノが、けっこう激しい曲想でぶつかりあうような音楽です。
第2楽章、アンダンテ・スケルツォーソ・ピウ・アレグレット。ヴァイオリンの愛らしさが印象的です。この楽章はあたたかい雰囲気の音楽で、いかにも室内楽らしいです。
第3楽章、アレグロ・モルト。再び速いテンポで、ヴァイオリンとピアノがときに激しくぶつかりあうような、互いに主張のある対話でしょうか。ピアノが終始リードするようであるばかりか、ヴァイオリンの表現自体が、モーツァルトの歌うような優美さではなくて、時に切れ切れに、鍵盤楽器のような表現を見せるのが面白いです。30歳を過ぎた頃の、颯爽としたピアニストとしてのベートーヴェンの面目躍如たるヴァイオリン・ソナタ、と言ってよいのでしょう。

当方、「スプリング/クロイツェル」以外のベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを体系的に聴こうとするのは初めての経験です。イ短調という調性のこの作品、若い時代の可愛らしい作品では決してありません。作品24の「春」のソナタと対にして聴くとき、スプリング・ソナタの旋律の魅力をあらためて感じるとともに、力の入ったイ短調の本作品の魅力を理解できるような気がします。

演奏は、ヨゼフ・スークのヴァイオリン、ヤン・パネンカのピアノ。1966年10月に、プラハのドモヴィナ・スタジオで録音されています。立派な日本語リーフレットが添付されており、解説は渡辺和彦氏です。この解説がたいへん丁寧で緻密なものです。労作と言ってよいと思います。このパンフレットだけでも、輸入盤でなく国内盤を購入した意味がありました。

しかし、スークのヴァイオリンはもちろんだけれど、ヤン・パネンカさんのピアノはほんとにいいですね。大げさな音はないのだけれど、素晴らしいピアニストだと思います。
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