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電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

パストラーレ室内合奏団でベートーヴェン「七重奏曲」を聞く

2006年10月04日 22時37分09秒 | -室内楽
今日は、山形県文翔館議場ホールにて、パストラーレ室内合奏団の演奏会に行きました。開場前に到着してしまい、噴水のある広場で待機。ベンチにはすでに数組のカップルが語らい、高校生のお嬢さんが携帯電話をいじっています。夜気は涼しく、18度くらいでしょうか、風はないので上着を着てちょうどよいくらいです。
18時30分に開場、年代は若い人から年配まで幅広く、勤め先から直行したサラリーマンもいれば白髪の老夫婦もいらっしゃるという具合で、やや女性が多いようです。

パストラーレ室内合奏団は、山形交響楽団の奏者を中心とする、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、クラリネット、ファゴット、そしてホルンの七名からなっています。プログラムは

(1)W.A.モーツァルト、ファゴットとチェロのためのソナタ、変ロ長調、KV.292
(2)M.ハイドン、ヴィオラとチェロとコントラバスのためのディヴェルティメント
(3)ニールセン、甲斐なきセレナーデ
(4)L.V.ベートーヴェン、七重奏曲、変ホ長調、Op.20

今日のお目当ては、もちろんベートーヴェンの七重奏曲ですが、聞いたこともないニールセンの曲も、ちょっと興味があります。

さて、演奏会の開始はプログラムにないバルトークのルーマニア舞曲から。板垣ゆきえさんが進行役をつとめ、ヴァイオリンの中島光之さんが挨拶をします。そして最初の曲目がモーツァルト。ファゴットとチェロの音楽ですが、ファゴットという楽器の音色がこんなに魅力的なものだとは知りませんでした。フルートを吹いていた小学生のときに、ストラヴィンスキーの「春の祭典」のファゴットの出だしを聞いて、ファゴットという楽器を志したという高橋あけみさん、とても素敵な山響の女性ファゴット奏者です。センシティヴで情熱的でよく歌う山響の若いチェリスト・渡邊研多郎さん、通奏低音に終わらず、ファゴットとメロディを交代して、19歳のモーツァルトのメロディを奏でます。

続いてミヒャエル・ハイドンの面白い編成のディヴェルティメントです。山響のヴィオラ奏者・田中知子さんのまじめな演奏ぶりと対照的な真っ赤な衣装がおちゃめでした。それともう一つ、山響コントラバス奏者の柳澤智之さんのニックネームが「ポチ」というのだということを初めて知りました(^_^)/

次にニールセンの「甲斐なきセレナーデ」。面白い曲です。第一次世界大戦の前後、恋しい人の窓辺で、この編成でこの響きでセレナーデを演奏したら、私のような中年が「おっ、いいなぁ」などと顔を出すでしょうが、若い娘さんは顔は出さないかも。確かに「甲斐なきセレナーデ」ですね。

10分の休憩のあと、ベートーヴェンの七重奏曲。大好きな曲の一つで、以前にも記事を書いていますが、実際の演奏を見るのは初めてです。唯一山響団員ではないクラリネットの渡辺純子さんの音色のきれいなこと。山響ホルン奏者・八木健史さんの、思い切りのいいリズム。いやぁ、良かった!第五楽章のチェロの伸びやかで朗々たる歌に、あらためてこの曲の魅力を再確認しました。

弦と管との室内楽というのは、なかなか実演で聞く機会はそう多くありません。地元にオーケストラがあると、こういう機会も生まれるのですね。ありがたいことです。パストラーレ室内合奏団の意欲的な活動に敬意を表するとともに、やはりオーケストラは地域の文化的な財産だと痛感します。

次回はぜひシューベルトの「八重奏曲」を聞いてみたいものです。
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モーツァルト「ピアノと管楽のための五重奏曲」を聞く

2006年08月01日 20時52分22秒 | -室内楽
故郷ザルツブルグの大司教と決別し、ウィーンに出たヴォルフガングは、1784年、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットという管楽器にピアノを加えた、「ピアノと管楽器のための五重奏曲」変ホ長調(K.452)を作曲します。当時流行していた管楽器アンサンブルに、得意のピアノを加えた工夫が、モーツァルトらしいと言えるでしょうか。
しばらく前に近所のCDショップでたまたま見付けたクラシックのCD、ひっそりと売れ残っておりました。たしかに華やかなオーケストラ作品でもなければ弦楽四重奏などの格調高い室内楽でもない。いくらモーツァルトの作品と言っても、ヘンな編成の曲ですから、売れ残るのも当然かもしれません。
捨てる神あれば拾う神あり、いやちがった、残りものに福あり、だったかな。実は私もあまり大きなことは言えません。ジェイムズ・レヴァインのピアノと、アンサンブル・ウィーン=ベルリンというカルテット、すなわちハンスイェルク・シェレンベルガー(Ob)、カール・ライスター(Cl)、ギュンター・ヘーグナー(Hrn)、ミラン・トゥルコヴィッチ(Fg)という演奏家の「顔ぶれ」だけで購入したものです。言ってみればとってもミーハー的な選択。

でもいいじゃないですか。結果が良ければ。1986年8月、ザルツブルグでのドイツ・グラモフォンによるデジタル録音(UCCG-9575)。併録された若きベートーヴェンの作品「ピアノと管楽のための五重奏曲、変ホ長調、Op.16」も同様にたいへん楽しめるもので、大正解でした。

第1楽章、ラルゴ~アレグロ・モデラート、(10'13")。ゆったりと始まる序奏の素朴な響きに魅せられます。とにかくピアノがやけにかっこいい。
第2楽章、ラルゲット、(9'22")。中間の緩徐楽章ですが、管楽器が次々と交替で優美な旋律を奏でます。同じ時期のピアノ協奏曲の緩徐楽章に通じる、美しい調べです。
第3楽章、アレグレット、(5'31")。モーツァルトの音楽のフィナーレは晴れやかで開放的で、なんてすてきなのでしょう。絶望して暗く終わるのではなく、音楽的な解決が、気分も開放的にさせてくれます。
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シューマン「ピアノ五重奏曲」を聞く

2006年07月29日 18時00分20秒 | -室内楽
いささかくたびれた週末、午前中の気温は肌寒いくらいでしたが、日中は湿度が高く気温も上がり、梅雨の中休みのようなお天気です。今日はローベルト・シューマンの命日だそうで、自宅でゆっくりとシューマンのピアノ五重奏曲を聞きました。演奏は、ジャン・ユボーのピアノとヴィア・ノヴァ四重奏団で、1978年から79年にかけて、パリのノートルダム・リバン教会でのエラート録音(WPCS-1137/8)です。

第1楽章、アレグロ・ブリランテ。ピアノが活躍しますが、その中でもはじめに出てくるチェロの旋律がとってもすてきです。
第2楽章、イン・モード・ドゥナ・マルチア、ウン・ポーコ・ラルガメンテ。始まりは暗く重苦しい嘆きの音楽。やがて優しい曲調にかわりますが、それも哀しみの音楽のようです。再び重苦しい嘆き節のあと、激しさを増します。
第3楽章、スケルツォ、モルト・ヴィヴァーチェ。一転してピアノと弦楽によるテンポの速いスケルツォ。
第4楽章、アレグロ・マ・ノン・トロッポ。前半の楽章と同じ旋律が何度も登場しますが、ずっと活力のあるものになっています。曲が終わった後に、充実した音楽を聞いたあとの満足感を感じます。

これまで一番なじんできたヴィア・ノヴァ四重奏団の演奏は、全体としてやや速めのテンポで緊張感や焦燥感を出しているように感じます。しかし第2楽章はゆったりと葬送行進曲ふうであり、スメタナ四重奏団の演奏との一番の違いになっています。

スメタナ四重奏団の演奏は、あまり大きくテンポを変えないで、落ち着いたペースで進みます。にもかかわらず、音楽の姿がくっきりと浮かびあがるのは不思議です。シューマンの若々しさは後退しますが、むしろ作曲当時の落ち着きが感じられるようです。ピアニストのヤン・パネンカは、この頃腕の故障でしばらく演奏活動を停止していたはず。それが、ようやく復帰した最初の録音だったのではないかと思います。1986年秋、プラハの「芸術家の家」ドヴォルザーク・ホールでのデンオンによるデジタル録音(COCO-70741)です。

ローベルト・シューマンが32歳の1842年、三曲の弦楽四重奏曲とピアノ四重奏曲などを産んだ、いわゆる「室内楽の年」に完成されました。この曲は、オーケストラのような大音量で聞くには不向きで、どちらかといえば抑え目の音量で、ピアノと弦楽カルテットの響きのバランスを楽しむものでしょう。スピーカーとの距離も、あまり遠過ぎず、ほどよく近付いた位置の方がよいようです。

参考までに、演奏データを示します。
■ジャン・ユボー(Pf)、ヴィア・ノヴァ四重奏団
I=8'42" II=9'03" III=4'26" IV=6'43" total=28'54"
■ヤン・パネンカ(Pf)、スメタナ四重奏団
I=8'54" II=8'39" III=4'49" IV=7'09" total=29'31"

写真は、自分で焼いた陶器のペン立てのつもりだったのですが、いつのまにかCDスタンドと一輪ざしになってしまいました。しかも、間違ってピアノ四重奏曲のCDになっている(^_^;)>poripori
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インターネットで「プロムス2006」を聞く

2006年07月18日 06時39分42秒 | -室内楽
プロムスというのは、プロムナード・コンサートに由来する、英国の楽しい音楽祭。インターネットで各種ラジオ放送を楽しんでいますが、その中の BBC-3(*) で「プロムス2006」が紹介されており、いつも聞く「3 for all」から「Proms 2006 - PCM 1」というのを選択してみたところ、ピンポーン!大当たり。
曲目は、エッシェンバッハのピアノを中心として、

Schumann - Three Romances for oboe and piano, Op.94,
Stravinsky - Three Pieces for solo clarinet,
Poulenc - Sonata for clarinet and bassoon,
Mozart - Quintet in E flat major for piano and wind, K452.

というものです。

キングズ・イングリッシュでの女性の紹介アナウンスの後、シューマンの「三つのロマンス」が始まります。ひなびたオーボエの音色が寂しそうに響き、ピアノがそっと支える、といった風情でしょうか。

パソコンに接続した小型スピーカですので、音響的な楽しみというのは無理ですが、ラジカセのFM放送で聞く程度には楽しめます。私の Mozilla Firefox 1.5 で、NHK-FM に頼らずに「プロムス 2006」が聞ける・・・いい時代になったというべきか、恐ろしい時代になったというべきか。これも「フラット化」現象の一つでしょう。

(*):インターネット・ラジオ BBC-3 classical
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ラヴェル「ヴァイオリン・ソナタ」を聞く

2006年07月15日 09時55分08秒 | -室内楽
長い出張も終わり、ようやくくつろいでいます。コーヒーを飲みつつ雨音を聞きながら、心からほっとします。この期間、一番よく聞いたのがこの曲。なにせ持参した携帯型CDプレイヤーに入れっぱなし。移動時はイヤホンで、朝晩はPC用小型スピーカで同じ曲をずっと聞いていました。演奏は、ジャン=ジャック・カントロフのヴァイオリン、ジャック・ルヴィエのピアノ。1982年8月、オランダのハーレム、コンセルトヘボウでのデジタル録音。フランクのヴァイオリン・ソナタとカップリングされた、お気に入りのCD(デンオン盤)です。

第1楽章、アレグレット。ヴァイオリンの旋律はいかにも感覚的な印象派ふう。かと思うとピアノのパートはまだ親しげな要素があり、対比的に描かれているみたい。
第2楽章、ブルース~モデラート。都会の場末のブルース。田舎のファンキーなディキシーランドジャズではない。
第3楽章、初めから終わりまで同じ速度で~アレグロ。16分音符が爆発する、細かい音が高密度にぎっしりつまった華麗な音楽。

1927年に完成されたこの曲には、ジャズ風に感じられるところもあり、ロマン的心情とは異なる感覚的な新鮮さがあります。これはたぶん、世紀末の雰囲気をひきずった20世紀初頭の空気なのでしょう。この時代に育った若者達に、基本的には即物的なスタイルを示しながら、音色やリズムやフレージングに限りないニュアンスをこめるようにさせた、そんな時代の空気。

ちなみに、ヴァイオリニストの五嶋みどりさんがこんな解説(*)をしています。

(*):モーリス・ラヴェル、ヴァイオリンとピアノの為のソナタ ト長調 (1923-27年作曲)
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セルとドルイアンで、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタを聞く

2006年06月28日 21時07分08秒 | -室内楽
一気に暑い日が続きます。昨日も今日も、室内でもほぼ30度近い気温で、たいへんでした。帰宅して、窓から夕方の涼しい風を入れ、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタを聞き、生きかえるようです。

単身赴任をしていた時代、偶然に入ったレコード店で発見したCDです。演奏は、クリーヴランド管弦楽団の指揮者だったジョージ・セルのピアノ、そして同管弦楽団のコンサートマスターだったラファエル・ドルイアンのヴァイオリン、1967年の8月の録音です。収録された曲目は、モーツァルトのマンハイム時代~ウィーン初期を中心とする次の4曲。
(1)ヴァイオリン・ソナタ第32番、K.376、I=5'00" II=5'22" III=6'17"
(2)ヴァイオリン・ソナタ第25番、K.301、I=7'55" II=4'35"
(3)ヴァイオリン・ソナタ第28番、K.304、I=6'50" II=5'06"
(4)ヴァイオリン・ソナタ第24番、K.296、I=6'00" II=6'24" III=4'15"
いずれも快活で明るい表情の演奏です。コロコロと音符がころがるようなセルのピアノも達者ですし、モーツァルトの協奏交響曲やフルニエと競演したR.シュトラウスの「ドン・キホーテ」などでソロを演奏したラファエル・ドルイアンの清潔なヴァイオリンも見事なものです。

曲目からして深刻ぶったものではありませんし、今日のようなお天気の時にさっとシャワーを浴びるような、さっぱりして気持ちの良いものです。

写真で、手前に見えるのが畑のタマネギ。後方に見えるのはジャガイモの花です。
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フランクの「ヴァイオリン・ソナタ」を聞く

2006年06月21日 21時13分36秒 | -室内楽
以前、大好きなフランクのヴァイオリン・ソナタを、ピエール・フルニエがチェロ用に編曲して演奏したCDを取り上げた(*)ことがあります。ところが、肝心のフランクのヴァイオリン・ソナタを取り上げていなかったことに気がつきました。で、おそまきながら本家本元の出番です。
私が好んで聞いているのは、ジャン=ジャック・カントロフ(Vn)、ジャック・ルヴィエ(Pf)の演奏。1982年8月、オランダのハーレム、コンセルトヘボウでの録音とクレジットされていますが、デンオンのデジタル録音です。

第1楽章、アレグレット・ベン・モデラート、イ長調。ピアノのささやくような序奏に始まり、優しい憧れに満ちた主題が提示されます。ヴァイオリンとピアノの、とくにピアノの表情が豊かです。
第2楽章、アレグロ、ニ短調。速く激しい感情。ピアノが駆け回ります。ヴァイオリンの中低音部の音色と対比させながら、高音部の音色を効果的に生かしています。ゆっくりした中間部を経て再び速く激しくなっていきます。
第3楽章、レチタティーヴォ~ファンタジア・ベン・モデラート。ピアノが低音で呼ぶとヴァイオリンが低音で答えるが、ピアノが高音で呼びかけてもヴァイオリンは低音で答えるという具合に、きまぐれに幻想的に展開します。
第4楽章、アレグレット・ポコ・モッソ、イ長調。再び第1楽章の主題が出てきたかと思うと次々に先行する楽章の主題が再現され、優しいヴァイオリンの音色が響き、最後は華麗なコーダで締めくくられます。

このCD、とにかくヴァイオリンの音色が素敵です。そしてルヴィエのピアノが陰影を添えます。絶妙のコンビだと思います。クレスト1000シリーズの一つ、長く愛聴したい録音です。

■ジャン=ジャック・カントロフ(Vn)、ジャック・ルヴィエ(Pf)、DENON COCO-70457
I=5'44" II=7'49" III=7'02" IV=5'53" total=26'28"

(*):フランクのチェロソナタを聞く
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ベートーヴェン「チェロソナタ第3番」を聞く

2006年06月08日 19時04分26秒 | -室内楽
モーツァルトは、チェロを独奏楽器とする曲を書かなかったのだろうか、よく知られた範囲では見当たらないように思う。もちろん、バッハやボッケリーニやハイドンに優れたチェロの曲はあるけれど、ベートーヴェンのチェロソナタの魅力はまた格別である。それを痛感させてくれるのが、1807年から8年にかけて作曲された、チェロソナタ第3番、作品69だ。
最初にこの音楽を意識して聞いたのは、大学時代の、音楽マニアでもあった恩師のお宅だったと思う。カザルスのチェロで朗々と歌い出した音楽に魅了されてしまった。それまで地味な音楽だと思っていたのが、実は情熱と叙情を併せ持つ素晴らしい音楽だと気づいたのだった。

先年、学生時代にはレギュラー盤の代表的定番で高嶺の花と憧れたロストロポーヴィチ(Vc)とスヴィャトスラフ・リヒテル(Pf)の演奏のCD(Philips,UUCP-7047)を入手し、ずっと聞いて来た。1961年7月、ロンドンにて録音されたもので、ステレオ初期に属する録音ではあるが、充分に楽しめる録音だ。

第1楽章、アレグロ・マ・ノン・タント。独奏チェロがゆったりと奏する気宇の大きな主題が印象的な、スケールの大きい楽章。チェロとピアノが堂々とわたりあうところは、中期のベートーヴェンの音楽の充実した楽しみだ。
第2楽章、スケルツォ、アレグロ・モルト。活発に動くピアノ、おおらかに歌うチェロが印象的な楽章。
第3楽章、序奏はアダージョ・カンタービレ。主部はアレグロ。序奏の後の壮快な主部、圧倒的な終わり。

■ロストロポーヴィチ盤
I=12'05" II=5'34" III=8'35" total=26'14"

写真のベートーヴェンの肖像は、生誕200年にあたる1970年に、コロムビアの廉価盤ダイヤモンド1000シリーズに添付されたものだ。壁にかけていたこともあるが、学校の音楽室のようなのでやめてしまった。今は、裏面に記載されたベートーヴェンの年譜を調べたり廉価盤の型番を調べたりするために、LP棚からときどきとりだして眺めている。この曲を作曲した頃、ベートーヴェンは37~8才だった。
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シューマンの「ピアノ三重奏曲第2番」を聞く

2006年05月11日 18時22分12秒 | -室内楽
最近の通勤の音楽は、R.シューマンの「ピアノ三重奏曲」を聞いています。三曲のピアノ・トリオの中で、暗い表情の第1番も充実した音楽ですが、とりわけ第2番ヘ長調Op.80がお気に入りです。

第1楽章、きわめていきいきと。淡い陰影はあるものの、明朗で活発な音楽です。交響曲のようながっちりした構築感も見られます。
第2楽章、心からの表現をもって。ヴァイオリンの可憐な歌と、チェロ、ピアノの織りなす優しい音楽です。これは実にシューマンらしい緩徐楽章。
第3楽章、中庸の動きで。少々愁い顔の間奏曲ふうの短い音楽です。
第4楽章、急ぎすぎずに、という指定のあるソナタ形式のフィナーレ。

作曲年代は、1847年といいますから、第二交響曲を完成した翌年にあたり、神経障害と精神の不安定に悩まされていた時期だといいますが、この曲ではそのような不安定さはあまり見られません。

演奏は、ジャン・ユボー(Pf)、ジャン・ムイエール(Vn)、フレデリック・ロデオン(Vc)、録音は、1978年から1979年にかけて、パリで行われています。エラートのアナログ録音で、1981年のフランスACCディスク大賞を得た「シューマン 室内楽全集」のうちの一枚。この春の東京旅行で入手したもので、何度も繰り返して聞くほどに味が出てくるようです。

■ユボー(Pf)、ムイエール(Vn)、ロデオン(Vc)盤 (WP, WPCS-11379-80)
I=7'41" II=8'40" III=5'35" IV=5'27" total=27'23"

写真は、数日前に撮影したモモの花。桜はすっかり緑の葉をつけています。
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シューベルト「ヴァイオリンのためのソナチネ第1番」を聞く

2006年04月11日 20時37分04秒 | -室内楽
今日聞いているのは、シューベルトのピアノとヴァイオリンのための「ソナチネ第1番ニ長調作品137-1」だ。CDは、ディアゴスティーニのCDつき雑誌の付録で、バンベルク・デュオとの表記がある。この表記がどこまで信用できるのかわからないが、冒頭、ピアノとヴァイオリンがユニゾンで歌いだす。第1楽章、アレグロ・モルト。第2楽章のアンダンテもまた、優しい情感のある音楽だ。第3楽章、アレグロ・ヴィヴァーチェでは、情熱の激しさをも感じさせる。
演奏時間は、
I=4'11" II=4'51" III=4'21" total=13'23"
となっている。

実は、1970年代に、クラシックのLPレコードで1000円盤ブームがあった。中でも、エラート1000シリーズというのがあり、当時日本コロムビアから発売されていたエラート・レーベルの録音が、白地に花環をあしらったお洒落な体裁で、多数リリースされた。私もだいぶこのシリーズのお世話になり、たくさんの音楽を知ることができた。
最初にこの曲を知ったのは、やはりエラート1000シリーズの中の、シューベルト・ヴァイオリン作品全集[2]というレコード(RE-1041-RE)だった。これは、ミシェル・オークレール(Vn)とジュヌヴィエーヴ・ジョワ(Pf)による演奏で、決して当時の最新録音ではないが、可憐なシューベルトのヴァイオリン音楽をかなり網羅的に知り、親しむことができる、ありがたいレコードだった。

大家による巨大な音楽と演奏ばかりをもてはやすのは、一種の事大主義なのだということを知るようになって、こういう身近で親しみ深い音楽と演奏の価値がわかるようになった。これは、廉価盤レコードの恩恵の一つだろう。ヴァイオリンやピアノを趣味にしている人は、家庭的な雰囲気の中で合奏する楽しみを感じることができる。

オークレール盤の同曲の演奏時間は、total=13'03" となっている。

なお、写真は東京旅行で撮影したスナップの中の一枚で、桜の花が満開の路地。当地でも早く桜の花のたよりが聞かれないものか。
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シューマン「弦楽四重奏曲第3番」を聞く

2006年04月04日 19時49分42秒 | -室内楽
大都市には大都市の良さがあるけれど、田舎に戻ってくるとほっとする。休日を全部費しての東京滞在を終え、昨日から再び仕事の日々が始まった。まだ慣れないためか緊張感が強く、いらぬ神経を使う。帰宅してから、R.シューマンの「弦楽四重奏曲第三番イ長調」を聞く。演奏は、ヴィア・ノヴァ四重奏団。
(1)第1楽章 アンダンテ・エスプレッシーヴォ、6:57
(2)第2楽章 アッサイ・アジタート、6:51
(3)第3楽章 アダージョ・モルト、8:35
(4)第4楽章 フィナーレ、7:19
シューマンの室内楽の年である1842年に産まれた曲だが、優しさと前向きな情熱を感じさせる音楽になっている。三曲ある弦楽四重奏曲のうちで一番好きな曲だ。
ディケンズの『オリバー・ツイスト』が書かれたのが1838年、『クリスマス・キャロル』が1843年というから、実際の社会は小説に描かれているような悲惨な境遇にある人が多かったのだろう。恵まれた環境で幸福いっぱいのはずのメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲がある種の悲壮感や怒りを感じさせたりするのは、そんなせいもあるのかもしれない。だが、本作品の楽想の影には、あまりそうした深刻で悲劇的な要素は感じられない。ベートーヴェンやモーツァルト、ハイドンなどの同ジャンルの作品を研究し、意欲的に挑戦しているようだ。きわめて多産な時代のR.シューマン。
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メンデルスゾーン「弦楽四重奏曲第2番」を聞く

2006年03月22日 22時10分18秒 | -室内楽
このところ、若いメンデルスゾーンの曲を聞いている。3月8日に八重奏曲、10日にピアノ三重奏曲を取り上げた。最近、通勤の車中で聞いていたのがこの曲、弦楽四重奏曲第2番イ短調、作品13である。
この作品、添付の解説によれば、メンデルスゾーン18歳の1827年に作曲されたもので、実際は第1番よりも先になるという。ベートーヴェン以後、特別なジャンルとなってしまった感のある弦楽四重奏曲という分野で、習作を除き六つの弦楽四重奏曲を書いたメンデルスゾーンの出発点となった。
実際、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲のあとに書かれた作品で、若者らしい濃厚なロマン的気分を持ち、しかもしっかりと構成感も感じさせる、充実した作品であると思う。通勤の車中にずっと反復し、繰り返し聞くにたえる、新鮮味を感じる音楽だ。

第1楽章、アダージョ~アレグロ・ヴィヴァーチェ。そっとささやくような序奏のあと、イ短調の急速な主部が、情熱的な歌曲のように奏される。(8'05")
第2楽章、アダージョ・ノン・レント。お互いに響きを確かめながら、ゆっくりと語り合うような、静かな楽章だ。同じ主題を追いかけるようにメロディが次の楽器に移っていき、フーガ風の構成になっている。(7'17")
第3楽章、インテルメッツォ:アレグレット・コン・モート~アレグロ・ディ・モルト。子守唄かわらべ歌のようなメロディーが素朴に歌われた後、軽快なスケルツォが展開される。(4'48")
第4楽章、プレスト~アダージョ・ノン・レント。悲劇的な緊張感をたたえた音楽で始まり、ちょうど嘆き悲しむ人が心の痛みを訴えるように、テンポを変えながら展開される。やがて、ゆっくりしたアダージョ・ノン・レントと指示された部分が始まり、始めのメロディが回想されて静かに終わる。(9'14")
total=29'24"

カルミナ四重奏団によるこの録音(COCO-70517)は、同団体によるDENONレーベルへの始めての録音だったそうだ。初録音にメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲をもってくるというのも、カルミナ四重奏団という団体の自負と意欲とを感じることができる。
第1ヴァイオリンのマティーアス・エンデルレとヴィオラのウェンディ・チャンプニーの2人は、この団体を通じて結婚しているようだ。チェロのシュテファン・ゲルナーを加え、カルミナ・トリオとして始まったが、第2ヴァイオリンが加わってカルテットとなり、後に現在のスザンネ・フランクと交代し、現在のメンバーとなっているという。いかにも室内楽の団体らしいエピソードだ。
録音は、1991年1月、スイスのラ・ショー・ド・フォン、ムジカ・テアトルにてデジタル録音されたもの。
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J.S.バッハ「フルート・ソナタ全集」を聞く

2006年03月17日 20時45分46秒 | -室内楽
今週一週間、毎日の通勤に、J.S.バッハのフルートソナタ全集を聴いた。有田正広さんのフラウト・トラヴェルソ、有田千代子さんのチェンバロ、鈴木秀美さんのバロック・チェロの演奏である。
フラウト・トラヴェルソというのはどんな楽器か。例によってGoogleで検索してみた。すると、フルート族に関するこんな詳細な解説ページ(*)があった。
(*):フルート族の楽器の紹介と歴史
これによれば、フラウト・トラヴェルソというのは、要するにバロック時代の木製のフルートの一種で、多くのキーを持つ現在のベーム式のフルートに比べてずっとやわらかい音を特徴とし、軽やかな装飾音を多く持つ音楽の演奏が得意なのだとのこと。したがって、同時代の音楽で、こうした特徴を持つ音楽を軽やかに演奏するのに向いている、ということなのだそうな。

収録された音楽は、偽作の疑いも持たれている作品をふくめて全部で八曲。
(1)フルートと通奏低音のためのソナタ、ハ長調、BWV1033
(2)フルートと通奏低音のためのソナタ、ホ短調、BWV1034
(3)フルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ、イ長調、BWV1032
(4)フルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ、変ホ長調、BWV1031
(5)フルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ、ロ短調、BWV1030
(6)無伴奏フルートのためのパルティータ、イ短調、BWV1013
(7)フルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ、ト短調、BWV1020
(8)フルートと通奏低音のためのソナタ、ホ長調、BWV1035
作曲年代がわかっているものについては、どうやら1720年代から1740年代、作曲家の40代の作品が中心のようだ。油ののった円熟期の仕事といえよう。息子のC.P.E.バッハがベルリンのサン・スーシー宮殿で、フルート好きのフリードリヒ大王のところに仕えていたことも影響しているのかもしれない。たいへんに軽やかな、ギャラント・スタイルの音楽になっている。金属性のベーム式現代フルートの音色とは異り、木製楽器らしいまろやかな音色になっているせいもあるかもしれないが、ずっと飽きないで聞くことができる。

演奏をしている有田正広さんは、世界的に有名なフラウト・トラヴェルソ奏者とのこと。アリアーレ・レーベルとしてリリースされたこのCD(DENON COCO-70556-7)は、添付の解説によれば有田正広さんのデビュー録音だったと言う。デビュー録音でこの楽しく素晴らしい演奏!

■1989年1月、東久留米、グレゴリオの家にてデジタル録音されたもの。
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今日は花の金曜日~メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲を聞く

2006年03月10日 21時38分28秒 | -室内楽
今日は全国的に花の金曜日なのだが、連日の早朝出勤と仕事の緊張の連続で、もう眠い眠い。帰宅すると、疲れてぐったりだった。娘の嫁ぎ先の両親から贈られた甲州ワインをいただき、ようやくゆっくりする。今日は、再びメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番ニ短調作品49を聞いた。作曲年代は1838年というから、円熟期に入った30歳のときの作品(*)だ。

第1楽章、冒頭のチェロ(ヨゼフ・フッフロ)の出だしにまいってしまった。対旋律を奏でるヨゼフ・スークのヴァイオリンも素敵だが、ピアノのヤン・パネンカの卓抜さに驚かされる。三つの楽器が存分に活躍する、モルト・アレグロ・エド・アジタート。
第2楽章、アンダンテ・コン・モート・トランクィーロ。情緒ゆたかな緩徐楽章、夢見るような気分がいかにもメンデルスゾーンらしい。
第3楽章、スケルツォ、レッジェーロ・エ・ヴィヴァーチェ。ピアノが主導する弾むようなリズムがヴァイオリンとチェロにも受け継がれ、速い軽快な音楽となっている。
第4楽章、フィナーレ、アレグロ・アッサイ・アパッショナート。曲の終わりかたがとにかくかっこいい。

このCD(DENON COCO-70527)は、1966年にプラハのドモヴィル・スタジオで録音されたスプラフォン原盤で、コロムビアのクレスト1000シリーズのうちの一枚。録音は室内楽でも直接音が中心で、無響室のような当時のスタジオ録音をしのばせるものだ。あまりホールの響きや雰囲気を生かすような録音ではない。だが演奏は見事だ。
■スーク・トリオ
I=9'11" II=6'44" III=3'25" IV=8'59" total=28'19"

写真は、復元された山形県郷土館「文翔館」の見事な飾り天井とシャンデリア。本当は、こういうところで室内楽の演奏を聞いてみたい。

(*): メンデルスゾーンの生涯~主な作品と年代の一覧
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メンデルスゾーン「八重奏曲」を聞く

2006年03月08日 20時53分07秒 | -室内楽
銀行家の父と哲学者の祖父(*)を持つ富豪の家に生まれ、少年時代に文豪ゲーテに愛され、ピアノを聞かせることを日課とした時期があったという幸福な美少年は、12歳~14歳の間にたくさんの弦楽のための作品「弦楽のための交響曲」を書いた。ユダヤ教からキリスト教に改宗した父親は、宮廷楽団と契約、日曜音楽会を開催する。驚くべき姉と弟は、天与の才能を存分に発揮し、さらに注目を集めた。音楽的才能に富んだ姉ファニーとともに、弟フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディは、16歳にしてこの「八重奏曲」と劇音楽「真夏の夜の夢」を作曲する。
(*):レッシングの『賢人ナータン』のモデルとなったモーゼス・メンデルスゾーンは、フェリックス・メンデルスゾーンの祖父にあたるという。

メンデルスゾーンの「八重奏曲」、実はまったく興味関心がなかった。ずっと前に、たまたまズーカーマンによるヴァイオリン協奏曲を聞きたくて購入したCDに、いわば付録として付いていたこの曲が、通勤の音楽としてくり返し聞いているうちに、気に入ってしまったというしだい。
劇音楽「真夏の夜の夢」については、セル指揮クリーヴランド管のきわめてクリアーな演奏や、クーベリック指揮の夢幻的な演奏などを通じ、よく親しんできている。同時期に作曲された曲らしく、若々しい息吹と活力を感じさせる音楽だ。
私は他の演奏を知らないので比較することはできないが、ズーカーマンがヴァイオリンを演奏しながらセントポール室内管弦楽団員と演奏したこの録音(Philips 412 212-2)は、響きが力強く振幅が大きく、リズムの切れ味のよい、活力ある素敵な音楽になっている。

第1楽章、アレグロ・モデラート・マ・コン・フォーコ、14'49"
第2楽章、アンダンテ、7'41"
第3楽章、スケルツォ、4'33"
第4楽章、プレスト、6'30"
total=33'33"
録音:1983年11月、アメリカ合衆国、セントポールにてデジタル録音。

写真は雪がとけて顔を出した庭木の一部。
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