電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

佐伯泰英『湯島の罠~居眠り磐音江戸双紙(44)』を読む

2014年01月11日 06時01分43秒 | -佐伯泰英
双葉文庫の12月新刊で、佐伯泰英著『湯島の罠~居眠り磐音江戸双紙』を読みました。人気シリーズの第44巻です。当シリーズでは悪役となっている田沼意次・意知父子が失脚するまであと少しですので、トリックスター役の佐野善左衛門がウロチョロするのはしかたがないのですが、どうもこの人に振り回されて、話がいかにもセコイ感じが漂います。

第1章:「霧子の復活」。小梅村の民家を回収した尚武館坂崎道場の改築の最中に、陸奥白河藩藩主の松平定信が訪ねて来ます。殿様剣法でない、王者の剣を示唆されて、坂崎磐音クンと師弟の関係に。策士の殿様にしては、えらくあっさりと決めちゃった感があり、展開早い!復活した霧子は、田沼意次の愛妾だったおすなの弟・五十次を発見し、追跡します。どうやら五十次は、佐野善左衛門のチョコマカ行動を追っているようで、なんとか暗殺を防止します。

第2章:「闇読売」。師匠の坂崎磐音が弟子の重富利次郎の将来について案じているところへ、土佐藩の山内豊雍は、父の重富百太郎の隠居の代わりに利次郎が兄とともに奉公する願い出を、飢饉を理由にやんわりと拒絶します。現代ならば、不況を理由に、新規雇用の余裕はない、と言うところでしょう。一方、世間では佐野善左衛門が刷らせた田沼父子告発の闇読売が撒かれます。佐野善左衛門が田沼に予定よりも早く口を封じられては大変(^o^;)です。そこで考えてうった手が、もう一種類の闇読売でした。このあたり、毒をもって毒を制する謀略戦の様相を呈しております。

第3章:「五十次の始末」。白河藩主・松平定信さんは、再び小梅村の坂崎道場を訪ね、ずいぶん剣術修行に熱心です。まあ、田沼時代の後を継ぐ中心人物だけに、なんとか主人公の物語に絡めるには、剣術修行が一番良いという判断なのでしょう。松平辰平クンは、坂崎道場の普請改築の完成記念に、ゆかりの藩の若手からなる剣術試合を企画します。ふーむ、これは反田沼の諸藩連合の布石と見ました。一方、五十次の命を救った弥助・霧子の忍びの師弟は、豊後関前藩の明和三丸の水夫として送り込みます。

第4章:「辰平失踪」。利次郎と霧子のカップルを、豊後関前藩は剣術師範として引き受けても良いと言います。将来の就職先として、思いがけない提案に喜んだものの、それでは田沼父子との戦いから離脱することになろうからと、二人はしばらく待ってほしいと要望。ふーむ、磐音クンは良い弟子を持ちました(^o^)/
ところが、剣術試合の発案者である辰平が行方不明になります。どうも、湯島天神から奉行所の同心一行に同行する形で、途中から消息不明になっているのです。久々に笹塚孫一の出番です。

第5章:「女牢の髷」。笹塚孫一と奉行の牧野成賢との会話は、いかにも古狸と大狸とのやりとりのようでいて、かなり有益なものでした。佐野善左衛門の行動に、なぜいちいちそこまで義理立てしなければならないのか、作者の都合だとはわかるのですが、登場人物の側の事情はよくわかりません。とにかく松平辰平救出作戦は決行され、戦いは始まりました。



木下一郎太と酒豪らしい菊乃さんとの間に、どうやらおめでたのようです。ただし、作者は幸せな夫婦を苦難に遭わせるという習性がありますので、うかつには喜べませんが(^o^)/


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