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(4点/5点満点)
「integrity(インテグリティ)」という言葉は、「誠実」とか「高潔」「廉直」などと訳されますが、ぴったり一致した日本語の単語は存在しないのではないかと思います。
この本では、そんなインテグリティの本質を解説し、インテグリティが自分自身の軸・物差しになることで、仕事や人生において後悔しない意思決定ができるようになることを目指します。
とにかく目立つ仕事を成功させたという手柄を誇示したかった。自分と一緒に働く部下や取引先のことなど、まるっきり考えていませんでした。おそらく部下の手柄も自分のものにしていただろうし、できない人とは仕事をしたがらなかった。私より年上の社員に辛く当たったこともあります。あることをきっかけに、「いてもいなくても変わらないから」と言ってしまいました。その人はしばらくして会社に来なくなりました。若いころを思い出すと、人間としてどうかと思うような、恥ずかしい思い出だらけです。
(あとがきより)
そんな著者が、どう周囲に感謝し共感を得ながら、インテグリティを高めていったのか。
プロフェッショナル論、リーダー論としても学べる1冊です。
【my pick-up】
◎正しいことを実行する〝突破者〟になる
社長が改革者であり続けることは難しい。そもそも社長というのは、多くの場合、既存の環境に最大限に適応し、そこで成功をおさめたからこそ社長になっているわけです。改革をした経験がない。そういうとき私たちのようなコンサルタントに声がかかります。私たちが「こう変えなければいけません」と提言しますが、でもそれはなかなか組織的には受け入れられません。そんなときに必要なのが、突破者です。
突破したあと、突破者が社長になれるとは限りません。しかし本人は自分の会社とか、自分の事業とか、今のお客さんとの関係に拘泥せすに、「これから世の中はこうなるだろう」「それなら産業はこう変わるべきだ」「その結果、お客さんも自社も、もっとよくなる」「だから私はこうするべきだ」というようにシンプルに考えることができている。突破者を見つけることができれば、私たちの仕事は半ば成功したも同然です。
突破者は普通、会社の中ではくすぶっているか、社外にいます。それも当たり前の話で、順調に出世している人で、突破なんかしようとする人は少ない。黙っていたら役員になれるのですから。改革をしたい社長がいて、こういう突破者が見つかるとすごく面白い。経営コンサルタントの仕事の醍醐味はここにあると言ってもいいくらいです。
◎リーダーの仕事は「登る山」を決めること
リーダーとは何かというと、目指すものの全体像やゴールを決めて、それを共通認識させることです。そうしたらチームメンバーはおのずと働きだす。
今までの自分の仕事のやり方は、根本的に間違っていたと思いました。私はまさに分割したタスクを与えていた。チームメンバーは最終的に何ができるかわからないまま、言われたからやっているだけでした。完成形がわかっているのは自分だけでした。
◎部下には今できること以上のことをやらせてみる
部下にプレゼンテーションをさせてみる。何かの交渉をさせてみる。機会を与えない限り絶対に成長しません。人間は同じことをやらせていると育ちません。常に今できること以上の、少し背伸びしたことをさせる必要があります。
今までやったことがないけれど、社長の前でプレゼンテーションするなどのチャレンジをさせることです。そしてそのときの成功の手柄は、「彼が・彼女が頑張ったからです」というように、きちんとその人に花を持たせる。
◎多様性とその受容が新陳代謝を促す
みんな同じであることを求められる同調圧力に屈せず、むしろ他人と違うことを面白がる。とくに組織の上層部の意見と異なる見解を述べることに対する忌避感が強いため、そういう人が現れると組織がアレルギー反応を起こして、その人を中心から周辺へと遠ざける傾向があります。
性別、国籍の多様性を叫ぶ前に、違う意見を表明する者、違う視点から物事を捉える人がいることを良しとする組織風土にしていくことです。そうでなければ、仮に女性や非日本人を増やしても、多様性の目的の大切な部分を達成することはできません。