とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

『下町ロケット』池井戸潤著

2011-08-14 22:58:53 | 読書
下町ロケット
池井戸 潤
小学館


しばらく前に、妻が珍しく自分の金で本を買った。何を買ったのか見たら池井戸潤の『下町ロケット』という本だった。以前WOWOWのドラマで同じく池井戸潤の『空飛ぶタイヤ』を見ていたこともあり、何故か興味を惹いた作家だったらしい。そして購入から数日後、この作品が第145回直木賞を受賞したことを知った。まさに妻の先見の明があったようだ。以後この本は爆発的に売れているらしい。

私も読んでみたいと思っていたが、なかなか読み終わらないので、待ちきれず妻がいない時間に一気に読んでしまった。

内容はこんな感じだ。
今回の受賞作『下町ロケット』は、高い技術を持つが経営に苦しむ小さな製作所が舞台。主人公・佃航平は、かつてロケット開発の研究者だった中年男性。佃は、実家の事業を受け継いで下町の製作所の社長を務めている。社長でありながら、技術研究者としての腕は確かで、夢であるロケットエンジンに関わる技術開発をこつこつと続けていた。ところがある日、資金繰りにあえぐ佃のもとに、ロケットエンジン開発の技術を買いたいという超大手企業からの申し出が舞い込んでくる。しかし佃が夢見ていたのは、自身の作った部品でロケットを飛ばすこと。佃は特許を売るのか、それとも自分たちでの製作にこだわるのか…。

話の筋としては、いわゆるNHKのプロジェクトXで取り上げられそうな話である。巨大なプロジェクトのロケット打ち上げの鍵が、ロケットそのものではなく、その一部品であるということだ。大きな夢を支える小さな技術は下町の中小企業にあった。ただ、その部品がロケットの部品として採用されるまでには、大企業からの嫌がらせや企業買収、経営不安、銀行からの融資拒否など数多くの苦難があった。その苦難を乗り越えていく社長や従業員の苦労が本作ではうまく描かれていた。そして、大企業からの特許侵害訴訟等を逆手にとって大企業をやり込めてしまうあたりは痛快である。

震災や、その後の原発事故で日本人の未来が見えなくなっている今、この本で書かれたような人たちがいることは確かである。“ものづくり日本”の復興への力になりそうな話ともいえる。直木賞の選考委員からも「読後感が非常にそう快であり、震災で少し落ち込んでいる中小企業を救済する良い作品」と評価されているそうだ。

400ページにもわたる長編作であったが、読み出したら止められなくなって一気に一日で読んでしまった。何の為に仕事をするのか、大事なことって何だろうとかちょっと考えさせられた作品である。そして、直木賞の選考委員ではないが、確かに読後感も爽快ですっきりした気分で読み終えることができた。お勧めの一冊である。

そして、この作品は8月21日よりWOWOW「ドラマW」で三上博史主演によるドラマ化も決定しているという。今後は、ドラマを見る楽しみもできた。