東京でのまちづくり勉強会。今日は地下鉄について、営団地下鉄に長く勤められたOさんから話を聞く機会がありました。東京には探せばこんな勉強会がいくらでもあるんです。
地下鉄は、1863年にロンドンで誕生しました。最初の路線はロンドン市内のメトロポリタン線6kmで、まだ電化される前だったために、蒸気機関車が客車を牽引しました。なかなか無茶ですね。
機関車はできるだけ煙の排出を少なくする装置が設置されたといいますが、あまり効果は得られず、社内や駅は煙が充満し評判が悪かったそうです。もっとも便利なことは便利だったので利用者は多かったのだとか。
地下鉄のドアは一部に1.5mのものが使われていますが、通常は幅1.3mのものが使われているそう。この幅は広ければ乗り降りがスムースに行われる反面、幅が広いと開閉に1~2秒余計に時間がかかるんだそう。
乗降のために20数秒を費やして、一駅での停車をほぼ1分でこなして出発をしているわけで、大量輸送機関としての地下鉄はまさに秒単位で時間を節約するすごいノウハウが満載なのでした。
* * * * *
面白かったのは車輪の方式の話でした。東京の地下鉄はご存知の通りJRと同じ鉄輪ですが、札幌の地下鉄はゴムタイヤです。これって何が違うんでしょう?
私は一度さいたま市大宮の鉄道博物館に行ったことがありますが、そこに鉄道技術を学ぶ展示のコーナーがあって、そこでは同じ重さの運搬具を、5つの運び方で運んでその違いを体験することができる展示がありました。
実際に自分で押してみる事ができるのですが、やってみるとタイヤで運ぶよりも鉄軌で運ぶほうがはるかに少ない力で動かすことができることが実に良く分かります。
そういう観点からみると、鉄軌ではなくてゴムタイヤで走らせる方法というのはとても不効率に感じてしまうのです。
そこでその違いを訊いてみたところ、実は世界中の地下鉄の中でもゴムタイヤ方式を採用している地下鉄はフランスに多いのだそう。おまけにかつてフランスの植民地だったところにもその影響は及んでいるのだとか。
そしてこれは今日の講師のOさんによると、「フランスはかつて優勢だった飛行機産業も斜陽になり、海外に輸出する技術が先細っているんだそうです。そこで大事なのが有力国内メーカーであるタイヤメーカーのミシュランでありまして、この会社を守るためにゴムタイヤ方式が使われているという陰謀めいた話も漏れ聞きますねえ(笑)」とのこと。
そういえば、札幌オリンピックのときにできた札幌市営地下鉄。札幌の前の冬季オリンピックはフランスのグルノーブル大会でした。この大会を視察した人たちが、その当時における「これからの地下鉄技術」をどう感じたのか、などと考えるとなかなか興味深い。
興味が湧いたのでWikipediaで「札幌地下鉄」をググって見たところ、面白い一節がありました。
---------- 【以下引用】 ----------
『札幌市営地下鉄』で検索
【開業前のエピソード】
1960年代、急速なモータリゼーションの進行によって、特に積雪期の交通渋滞に悩まされていた札幌市では、市内交通の中心だった市電とバスによる輸送が限界に近づいていた。さらに札幌オリンピックの開催が決定し、選手や観客を輸送するためには市電やバスの輸送力では到底対応しきれないことから、高速・大量輸送が可能な新しい軌道系交通機関建設への機運が高まっていった。
市は1964年に『札幌市における将来の都市交通計画』に関する調査書を民間に委託して作成させ、翌1965年から札苗実験場(現東区)でゴムタイヤ方式の試験車両による各種試験を開始した。なお、モノレール、鉄車輪とゴムタイヤを併用するパリ方式、あるいはブリュッセルのプレメトロを参考にした路面電車を都心部のみ地下に潜らせる「路下電車」なども検討された。
札幌市がゴムタイヤ方式に固執した理由は、高速電車と入れ替わりに廃止が予想される市電と同等の利便性を確保するため、高速電車の駅間隔を当初、電停並みの300メートル程度と想定していたことによる。走行実験の開始直後、除雪についての具体策もはっきりしない時期、札幌市の広報誌には、「短い駅間隔での高加減速運転には鉄輪は不向きで、ゴムタイヤこそが最適」との趣旨の記述がある。
---------- 【引用ここまで】 ----------
実は空気タイヤで走行していると言っても、パンクしたときに車体が下がらないように鉄輪も車体につけながら走っているのだそうで、その重量というのも結構なもの。
また、鉄輪は車輪に勾配がついていて、そのためカーブの際に車輪の円周の差で上手く曲がれます。ところがタイヤではそれが効かないので、実はカーブではこすれながら無理やり曲がっているのだそう。そこでタイヤが磨耗するのですが、磨耗の粉の量も実は馬鹿にならないんだそうですよ。
当時としては騒音対策や加速能力などの面でそれが最先端の技術だったのかもしれませんが、技術革新が進み、環境や省エネなどへの要請事項が変わりつつある現在、どういう技術が良いのでしょうか。
もっとも儲かっていない事業では、投資と回収可能性という経済性のほうが優先されるのでしょうけれど。
地下鉄が儲かるためには沿線駅周辺での人口が増えるようなまちづくりも欠かせません。これまた巨視的なまちづくりビジョンが必要なのです。
地下鉄は、1863年にロンドンで誕生しました。最初の路線はロンドン市内のメトロポリタン線6kmで、まだ電化される前だったために、蒸気機関車が客車を牽引しました。なかなか無茶ですね。
機関車はできるだけ煙の排出を少なくする装置が設置されたといいますが、あまり効果は得られず、社内や駅は煙が充満し評判が悪かったそうです。もっとも便利なことは便利だったので利用者は多かったのだとか。
地下鉄のドアは一部に1.5mのものが使われていますが、通常は幅1.3mのものが使われているそう。この幅は広ければ乗り降りがスムースに行われる反面、幅が広いと開閉に1~2秒余計に時間がかかるんだそう。
乗降のために20数秒を費やして、一駅での停車をほぼ1分でこなして出発をしているわけで、大量輸送機関としての地下鉄はまさに秒単位で時間を節約するすごいノウハウが満載なのでした。
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面白かったのは車輪の方式の話でした。東京の地下鉄はご存知の通りJRと同じ鉄輪ですが、札幌の地下鉄はゴムタイヤです。これって何が違うんでしょう?
私は一度さいたま市大宮の鉄道博物館に行ったことがありますが、そこに鉄道技術を学ぶ展示のコーナーがあって、そこでは同じ重さの運搬具を、5つの運び方で運んでその違いを体験することができる展示がありました。
実際に自分で押してみる事ができるのですが、やってみるとタイヤで運ぶよりも鉄軌で運ぶほうがはるかに少ない力で動かすことができることが実に良く分かります。
そういう観点からみると、鉄軌ではなくてゴムタイヤで走らせる方法というのはとても不効率に感じてしまうのです。
そこでその違いを訊いてみたところ、実は世界中の地下鉄の中でもゴムタイヤ方式を採用している地下鉄はフランスに多いのだそう。おまけにかつてフランスの植民地だったところにもその影響は及んでいるのだとか。
そしてこれは今日の講師のOさんによると、「フランスはかつて優勢だった飛行機産業も斜陽になり、海外に輸出する技術が先細っているんだそうです。そこで大事なのが有力国内メーカーであるタイヤメーカーのミシュランでありまして、この会社を守るためにゴムタイヤ方式が使われているという陰謀めいた話も漏れ聞きますねえ(笑)」とのこと。
そういえば、札幌オリンピックのときにできた札幌市営地下鉄。札幌の前の冬季オリンピックはフランスのグルノーブル大会でした。この大会を視察した人たちが、その当時における「これからの地下鉄技術」をどう感じたのか、などと考えるとなかなか興味深い。
興味が湧いたのでWikipediaで「札幌地下鉄」をググって見たところ、面白い一節がありました。
---------- 【以下引用】 ----------
『札幌市営地下鉄』で検索
【開業前のエピソード】
1960年代、急速なモータリゼーションの進行によって、特に積雪期の交通渋滞に悩まされていた札幌市では、市内交通の中心だった市電とバスによる輸送が限界に近づいていた。さらに札幌オリンピックの開催が決定し、選手や観客を輸送するためには市電やバスの輸送力では到底対応しきれないことから、高速・大量輸送が可能な新しい軌道系交通機関建設への機運が高まっていった。
市は1964年に『札幌市における将来の都市交通計画』に関する調査書を民間に委託して作成させ、翌1965年から札苗実験場(現東区)でゴムタイヤ方式の試験車両による各種試験を開始した。なお、モノレール、鉄車輪とゴムタイヤを併用するパリ方式、あるいはブリュッセルのプレメトロを参考にした路面電車を都心部のみ地下に潜らせる「路下電車」なども検討された。
札幌市がゴムタイヤ方式に固執した理由は、高速電車と入れ替わりに廃止が予想される市電と同等の利便性を確保するため、高速電車の駅間隔を当初、電停並みの300メートル程度と想定していたことによる。走行実験の開始直後、除雪についての具体策もはっきりしない時期、札幌市の広報誌には、「短い駅間隔での高加減速運転には鉄輪は不向きで、ゴムタイヤこそが最適」との趣旨の記述がある。
---------- 【引用ここまで】 ----------
実は空気タイヤで走行していると言っても、パンクしたときに車体が下がらないように鉄輪も車体につけながら走っているのだそうで、その重量というのも結構なもの。
また、鉄輪は車輪に勾配がついていて、そのためカーブの際に車輪の円周の差で上手く曲がれます。ところがタイヤではそれが効かないので、実はカーブではこすれながら無理やり曲がっているのだそう。そこでタイヤが磨耗するのですが、磨耗の粉の量も実は馬鹿にならないんだそうですよ。
当時としては騒音対策や加速能力などの面でそれが最先端の技術だったのかもしれませんが、技術革新が進み、環境や省エネなどへの要請事項が変わりつつある現在、どういう技術が良いのでしょうか。
もっとも儲かっていない事業では、投資と回収可能性という経済性のほうが優先されるのでしょうけれど。
地下鉄が儲かるためには沿線駅周辺での人口が増えるようなまちづくりも欠かせません。これまた巨視的なまちづくりビジョンが必要なのです。
