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北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

災害防御の裏方~ダム管理

2009-07-24 23:15:56 | Weblog
 仕事で国土交通省の関東地方整備局を訪ねました。地方自治体の方を対象にまちづくり関係の情報提供をする機会があって公園事業についての説明をしてきたのです。

 一仕事した後で関係者の懇親会が行われましたが、私の近くに座った方は元々河川屋さんで、ダムの管理にもいたとのこと。

「山口では大雨で被害が出ていますが、こういうときはダム管理も大変でしょうね」
「そうなんです。木を植えればダムが要らないなんて方もいますが、短期に出てくる洪水調節と長期にわたって出てくる水利用の区別がついていません」

「そういえば、明治の始めに日本に治水技術を教えに来たオランダのデ・レーケという方が日本の川を見て『日本には川はない、これは滝だ』と言ったとか…」
「ヨーロッパ大陸はなだらかですからどこでヨーロッパ大陸のどこか雨が降っても全体としてみればゆったりと流れていられるんですが、日本は急峻な山から水が駆け落ちてくるのでこれはヨーロッパの人から見れば滝に見えたんでしょうね」

「ダムで水を管理しているなんて案外みんな知らないんじゃないかと…。」
「そうですね。私もダム管理をしていましたが、大雨が降って毎秒500トンの水がダムに流入してきたのを押さえて、下流には100トンしか流さないんです。当然ダムの水位がぐんぐん上がってくるんです。怖いですよ~」

「大抵はダムが一杯になる前に雨が収まるんでしょう?」
「はい、水位の上昇が収まれば後でゆっくりと放流しますから、そこで下流は何事もなかったように思うでしょう。しかし相手は自然ですから、何十年に一度の確率で想定以上の雨が降るわけです。最初は同じようにこらえていますが、もうこれ以上貯めるとダムの堤体が壊れるというところまでいくと、ダム崩壊を防ぐために全量放水に切り替わります。もう調節出来ない限界があるんです」

「全量放水となると下流にも大量の水が流れていって洪水になることもあるのでしょう」
「はい、そうするとそう言う時に限って『なぜ守れなかったのか』という批判が沸き起こります。我々とすれば、物理的な限界ですし、ダムがなければもっと早く洪水になったいたのが何時間かでも避難したり備えたりする時間稼ぎにをしているわけです。そういうことも分かって欲しいのですが…」

 
 関東は一時、梅雨明け宣言が出された後に戻り梅雨となってしまいました。

 台風シーズンも近づいてきて、身近なハザードマップを見てみるなど防災自助努力の点検をお勧めします。

    ※    ※    ※    ※

 ある県では、知事が替わって計画中のダムを作らないという方針が出されそうなのだとか。国の担当者が『なぜダムが必要なのか』を説明に行ったところ、『これは政治決着だから作らないものは作らない』と言われてしまったのだそう。

 河川工学は科学的なデータに基づいて被害を防ごうとする人間の営みなわけですが、何が何でも作らないという政治的意志があるとすればその前にはきっと無力なことでしょう。
 

【参考】 「新潟洪水 白石川に想定外の雨が降ったら」 ダムの機能と限界が分かりやすく載っています。

http://www.thr.mlit.go.jp/shichika/21kouzui/H1-3%20new.html
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