駒子の備忘録

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宝塚歌劇雪組『ALL BY MYSELF』

2024年04月25日 | 観劇記/タイトルあ行
 相模女子大学グリーンホール、2024年4月20日11時。

 半年後に卒業を控えた雪組トップスター彩風咲奈がこれまで作り上げてきた作品の名場面を中心に構成した、ストーリー仕立てのドラマチック・リサイタル。作・演出/野口幸作。全2幕。

 東西ともけっこう公演期間が短いんですね、なので中日くらいに観た感覚かもしれません。いい、いいという評判を聞いていましたが、本当によかったです! 私は特に咲ちゃんファンでも雪担でもありませんが、ひととおり観てきていて十分ワクテカでしたし、これはファンならなおさら…と思うといっそう感動しました。
 主演スターを架空?のスターに見立てて、その回顧の形でそのスターの来し方を見せる…というのはよくある手法だと思います。でもそれだけにならない愛、情熱、アイディアがありました。そして主演スターだけでなく、比較的少人数だったこともあって組子の起用もバランス良く、素晴らしかったと思いました。野口先生と咲ちゃんは一期違いの入団になるそうですが、そういう出会い、歴史がここに結実したんだと思います。素敵なリサイタルを作ってもらえてよかったねえぇ咲ちゃん、としみじみ思いました。音校ポスターから始まって、ドのつく雪組の御曹司としてここまできたのに、結局代表作や当たり役がないまま去らせるんだね劇団…とか私は考えていたからです。イヤ斎藤一とか冴羽遼とかよかったよ? でもそれでいいのか?ってのがあるじゃないですか。あとはポスターが新感覚で素敵だった退団公演のフェルゼンが、脚本の改善は期待できないにしても、役者の力で芝居が、キャラが良くなっていて「さすが…!」となることを祈るしかありません。今の咲ちゃんなら、可能性はあると信じていますけれどね…
 れいちゃんなんかも、早くから「ああ、花組のこの世代はこの子なのね、ハイハイ」って感じに周知させる抜擢起用がありましたが、なんせ花男は多士済々なので、あまり一本被りの御曹司育ちって感じじゃありませんでした。咲ちゃんみたいなひとりっ子政策はチエちゃんくらいまで遡らないとないのでは…まこっちゃんでもこんな感じではなかったように思うからです。『ビシャイ』は素晴らしいプレ・サヨナラ・コンサート・ショーだったなと思っていますが、単独退団のリサイタルだと、今回の構成が本当に素晴らしい、と思いました。

 ブルーム、という役名は『ODYSSEY』のものでしたっけ? でもそもそも「花が咲く」という意味の動詞でしたっけ? なので咲ちゃん、ってことですね。これが、これから旅に出るスターとして引退公演?を行っている。マスコミやファンが詰めかける。そこに、彼の本を書きたいという記者カイル(華世京)が訪れる…かせきょーは雪組新進気鋭の若手スターですし、実際に咲ちゃんのファンだったのかな? よくある構造ですが、実にハマっていて良きでした。
 その引退公演のとある日のフィナーレから始まる構成で、エトワール(音彩唯)はばまいちゃん。パレードの形で出演者を全員見せて、バックステージ、楽屋となってインタビューが始まり、思い出の旅が始まる…上手い。客席係ルイ(眞ノ宮るい)ははいちゃん。てかここでブルームの影(苑莉香輝)というか若いころのイメージみたいなのを踊るエンリコの素晴らしさよ! こんなに踊れるんですね!? そしてスタイルの良さよ! 股下5メートルと言われる咲ちゃんの影をやって遜色のない脚の長さ、顔の小ささよ…! 私はこれまで華とオーラと愛嬌に惹かれていて、この間のショーの雪の華の花心みたいなのをやっていたときにもスタイルについてはそこまで感じなかったのですが、今回は刮目しましたね…! かせきょーとはまた違う大物感を感じているので、本当に楽しみなスターさんです。
 さて、まずは初舞台ロケットの再現から。場面のテーマはオレンジ。この夜光衣装、印象的でしたものね。ここでもエンリコの腰の高さ、脚の長さに私は目がテンでした。『シクハン』の名曲「Eres mi amour」を歌うのもいい。さらに『君愛』『カラマーゾフ』…そう、咲ちゃんは水しぇんの直系だったんですよね…
 続いて抜擢続きで苦しかった、というようなブルーのターンへ。ここでも若き日のブルームはエンリコ。『ソルフェリーノ』の新公主演、当時そこまで歌が下手だった印象はないけれど…それにこのくらいの学年で一度新公主演が来るってのはそんなにレアではなかったと思うので、当時の咲ちゃんがそんなにハカハカしていたとは知らなかったよ…と思いました。無難な作品でまずやらせておこう、ってことかな、とか考えていたので。『ロジェ』で、やはりハリーのスーツものをトップになってからやっておきたかったよねえぇ、などと思うなど。『ロミジュリ』の「世界の王」は問答無用に盛り上がりますね。さらに『』。結局、新公主演って何度やったんでしたっけ? 5回? それはやはりちょっと多かったかもしれませんよね、そらプレッシャー感じるよね…
 ゴールドのターンはジパング編ということで、衣裳係ヴァイオレット(愛すみれ)の「お祭りマンボ」から。上手い! そして祭りの女の美影くららちゃんがいい! てかときどきカガリリに見えました。『夢介』『幕末太陽傳』と来て、愛陽みちセンターの『さくら』がまたよかった! 愛すみれないしはばまいちゃんをヒロイン格に据えるのかな?とか思っていたのですが、よほどの下級生以外は全員ピンで使う!みたいな意志を感じてとても良きでした。みちちゃんは可愛いんだけど私の好みからするとちょっとお姉さん顔っぽすぎるというか、くらげちゃんを華やかに可愛くした顔みたいにしか見えないのですが(全方位に謝りますが)、とにかく目を惹きますよね。新公ヒロイン、待ってます!
 パープルのターンは別箱主演シリーズで、下級生が順に当時の咲ちゃんの役に扮していくので、これは下級生たちも嬉しいだろうと勉強になるだろうし、いいですよね。作品群の微妙さを覆って余りあります(オイ)。ネモ船長(月瀬陽)の月瀬くんがお衣装に着られて見えたのも愛しい…着こなしも場数です、がんばれー!
 そして突然花道から躍り出たすわっちセンターで「ミュレボ」。男役もかせきょーだけでなくすわっち、はいちゃん大活躍で塩梅が上手いと思いました。
 からの、今の咲ちゃんが扮する斎藤一キター! パンツの線の細さがたまらない…原作漫画になんの思い入れもない私でもたぎりました。
 1幕ラストは黄色のターン、名作「海の見える街」完全再現です。ひらめのところははばまいちゃん。イヤよかった、この場面だけどもごちそうさまでした…!
 2幕のインタビュー、かせきょーのポーズがそのまま『CITY HUNTER』原作イラストのポーズに重なって、トップ時代編に突入! これも上手い。イメージカラーはグリーンで、ゲワイや『ライラック~』『Fire Fever!』まで。さらに咲ちゃんとすわっちで『愛短』の「アンフェア」! これはファンも嬉しかったことでしょう。
 そして愛すみれさまが「愛の宝石」を熱唱するターンで咲ちゃんと白綺華ちゃんのデュエット・ダンス…! 最近やっと歌手起用されてきたけど、雪組は毎年毎年主席の娘役をもらっていてあまり使わないのはなんなの!?とこっそり憤っていただけに嬉しかったです。てか踊りもいいじゃんねえぇ!
 最下から3カップルの「フロホリ」もフレッシュで良き。次いで大道具係ウィング(天月翼)がブルームの運転技術を褒め、そのまま『ボニクラ』の車を転がしてブルームが登場! ヒュー!! 幼きボニーを演じていたみちちやんが夢白ちゃんのところに入って「踊らないの?」…たまらん!!! そのあとの天月くんと愛すみれさまのデュエット・ソングも素晴らしかったです。天月くんも本公演ではなかなか歌が回ってこないけど、上手いんですよねえぇ…!
 日替わりコーナーは「リベルタンゴ」でした。咲ちゃん、すわっち、かせきょーに眞ノ宮るいこちゃんと有栖妃華ちゃん、はばまいちゃんのトリプル・デュエダン。はいちゃんの女役、しなやかでとても素敵でした。
 その次がみちちゃんセンターのヨジャドルみたいな場面で、これもよかった! めっちゃアガりました。野口先生といえばアイドル場面ですが、娘役にも作ってくれるんだ!と飛び上がりたいくらいでしたね。
 ラテンの女で有栖ちゃんフィーチャーがあり、「カリビアン・ナイト」は咲ちゃんがサエちゃんのファンだったから無理矢理、ってことだったんでしょうがこれもよかったです。みんな、誰かを夢に描いて憧れて、その人がまた誰かの夢になって…と続いてきた、続いていくのでしょうからね…
 一度日程が飛んだ『ODYSSEY』で、おそらくそのまま上演していたらすわっちが歌ったのだろう大商人の歌をここで歌わせてあげる…というのもニクい。からの金の奴隷と囚われの王妃のターン、かせきょーの女装感が増していて成長を感じました。テティスははばまいちゃん、そしてここでセレネとして踊る瑞季せれなよ…! てか上手い!! 本公演でももっと使ってー!!!
 再び楽屋でのインタビューに戻り、ファンやマスコミが集まる中、ブルームがひとり歌い、去っていく…美しい構成でした。振りの参加は私はしなかったけれど、主題かもとてもよかったと思いました。満足!
 プログラムもとても豪華な作りで、写真も手がかけられていてとてもよかったです。白のファーコートは同期の愛ちゃんが『不滅の棘』で着たものなのかもしれませんね…それもまた良き。愛されているスターの愛すべきリサイタル、素晴らしかったです。GW後半の大阪公演も盛り上がりますよう、お祈りしています。









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