駒子の備忘録

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宝塚歌劇雪組『君を愛してる/ミロワール』

2010年02月18日 | 観劇記/タイトルか行
 東京宝塚劇場、2008年3月4日ソワレ、6日マチネ。

 20世紀のパリ。大富豪ドシャレット伯爵の遺言が発表され、後継者として長男のジョルジュ(水夏希)が指名される。ただし、半年以内に貴族か上流階級の女性と結婚することを条件として。親友のフィラント(音月桂)は恋と結婚は別物なのだから気楽にしろと助言する。父の遺言にあった「困ったら教会へ行け」という言葉に、ジョルジュはレオン神父(未来優希)の教会へ行き、サーカスの空中ブランコ乗りマルキーズ(白羽ゆり)と出会うが…作・演出/木村信司、作曲・編曲/長谷川雅大。

 これまで必ず原作を取ってきたこの演出家の、初めてのオリジナル・ミュージカル。純粋なラブ・ロマンスを作りたい、というシンプルなところから、役者に当て書きしてキャラクターを作っていったということですが、これがなかなかにおしゃれで楽しくていいミュージカルになっていました。
 どうしても宝塚歌劇って、トップと二番手とトップ娘役の三角関係にドラマが集中しがちで、他には役らしい役がなかったり、ときどきお愛想のように歌や踊りが入る他は意外としゃべっているだけの舞台になったりしがちなのですが、こんなにきちんと「ミュージカル」と言っていい(ただしくくりは「ラブ・ロマンス」なのですが)楽しい舞台って意外とないものなんですよ。
 まあ、スターのファンには物足りなく思えたりするのかもしれませんが、私は久しぶりに観る組でたくさんのスターの顔が見られて、楽しみました。

 悪役に回った彩吹真央のアルガンは、最後には主人公たちの恋を認める度量の大きさを見せていい感じだし、ジョルジュの親友で、でも彼のフィアンセと目されているセリメーヌ(大月さゆ)に恋していて、でも告白できない気弱なアルセスト(凰稀かなめ)もよかった。サーカスの団員シャルル(彩那音)、リュシール(山科愛)、ジョルジュの弟クレアント(緒月遠麻)やその妻アンジェリック(晴華みどり)、アルガンの秘書レイチェル(美穂圭子)にも光が当てられていました。
 話はシンプルで、だからこそできたことなのですけれどね。

 ただ、セリフはもう少し足したかったなー。
 ジョルジュが、いつか一生愛し合える誰かと結婚することを夢見ていたこと、は説明されているのですが、だから遺産を継ぐためだけに急に貴族の誰かなんて条件で恋なんてできないし、打算的な政略結婚なんて嫌だよ、というところはあまり出ていません。
 フィラントが男は独身でいるより妻帯者になった方がモテる、というのも、気楽な恋においては、の話であり、打算的な踊り子相手なら、ということなので、これも言葉が足りない。
 セリメーヌのことは親同士の付き合いから知ってはいたし好意もあるけど、妹みたいなもんなんだよね、というのも上手く説明されていない。
 セリメーヌの両親が不仲な日本の夫婦を揶揄して歌う皮肉も今ひとつ効いていない(ちなみにこの歌詞はわかりにくいことはもちろん、若干露悪的すぎで、歌われている「日本の冷めた夫婦」の片割れである確率が多い女性観客を不愉快にさせる恐れがあると思う。日本の、というところはカットしてもよかったのではなかろうか)。
 マルキーズがジョルジュに「あなたが私と結婚してくれるっていうの?」と詰め寄るセリフは、「結婚して、団員全員を雇ってくれるとでもいうの?」まで付け足さないとわからない。結婚するだけならジョルジュはできるんです。ただそうなると遺産は継げないから、サーカスに財政的な援助ができなくなる、ということが問題なのだから。アルガンはマルキーズと結婚し、団員も雇うと言ってプロポーズしているのだから。
 ジョルジュが神父に「僕がマルキーズのためにできることは、結婚して遺産を継ぐことです」というのも、「セリメーヌと結婚して遺産を継ぎ、サーカスを援助することです」としないと伝わりません。これはもったいなかったなあ。ドラマのキモでしたからね。

 ミズはもっとクールでスタイリッシュなタイプなのかと思っていましたが、こういうほにゃららしたただの好青年も演じられる柔らかさがあるのだなと知りました。ちょっとは何かかる甘い声が余計に合うのでしょうね。
 白羽ゆりは美人そうでいいなあと思っていましたが、声がよくないんだなー。
 音月桂はヤバイ。もともと素顔は好きでしたが、メイク、笑顔の作り方が、往年のミキちゃんやマミのような濃さ、アイドルスター性を感じさせます。ハマったらどうしよう(^^)。

 ショー・ファンタジー『ミロワール』は作・演出/中村暁。普通によくできていました。
 やはり大階段での黒燕尾の男役の群舞はいいものです。
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