東京宝塚劇場、2011年2月22日ソワレ、3月1日ソワレ、3月4日マチネ、3月18日マチネ。
イタリアのヴェローナに古くから続くふたつの名門モンタギュー家とキャピュレット家は、何代にもわたって争いを繰り返していた。キャピュレット家では娘のジュリエット(舞羽美海と夢華あみのダブルキャスト)とヴェローナ随一の富豪・パリス伯爵(彩那音)の縁談が持ち上がっていた。キャピュレット卿の甥ティボルト(緒月遠麻)は反対するが、キャピュレット卿は一蹴し、仮面舞踏会でふたりを結びつけようとする。一方、モンタギュー卿の息子ロミオは、親友のベンヴォーリオ(未涼亜希)とマーキューシオ(早霧せいな)にそそのかされ、キャピュレット家の仮面舞踏会に忍び込むが…
原作/ウィリアム・シェイクスピア、作/ジェラール・プレスギュルヴィック、潤色・演出/小池修一郎。2001年にフランスで初演、2010年星組で日本初演した作品の再演版。
私は全組そしてなるべく全公演を観ますが、これまで何故か雪組と星組には強烈な贔屓がいたことがなく、疎遠ではありました。今回のまっつの雪組への組替えはなかなか衝撃的ではありましたが、それでやっとひとつ縁ができたくらいで。
星組版は梅田で二回観たきり、DVDも一度観たきり。
雪組版の大劇場での好評も聞いていて、それはそれは楽しみに観に行ったのですが。
…が、自分でもびっくりするほど、星組版と比べてしまって、全然楽しめなかったのです、初回は。
なんでなんだろう…星組のコアなファンじゃないしものすごく熱心なリピーターって訳でもなかったのに…愛聴して記憶しているのはむしろウィーン版CDなのに、とにかくずっと
「あれ? え?」
って思いながら観てしまったのです。
期待しすぎていたせいなのか、歌がそんなにうまくは思えなかった、というのも大きかったのかも。
そして初回はアミエットだったのですが、歌はともかく芝居ができていなくて、ジュリエットが愛らしく思えなかったのが大きかったのかもしれません。
続く二回の観劇は、この部分が手堅いミミエットだったし、心の準備や慣れもでてきて、
「うん、これはこれでいいな」
と思えるようになったのですが…
マイ楽は東北関東大震災後のことであり、前夜の公演が大規模停電予測のために中止になった直後の公演だったため、また特殊な状況下で後述…
ともあれ、そんな不思議な観劇体験でした。
総じて、キラキラと輝いて繊細だった星組版に比べて、雪組版はマットというか瀬戸物のようなというか落ち着いているというか…な印象でした私には。
それは主にキムのニンによるものなのかもしれない…
キムは童顔で笑顔がいいタイプのスターだと私は思います。だからロミオには合うだろうと思っていた。
しかし意外にキムロミオはまっとうでまっすぐで健全で健康的で優等生的で、暴走してしまいそうな危うさとか、壊れてしまいそうな繊細さとか神経質さとかには無縁に見えました。
「僕は怖い」の歌がなんと空々しく響いたことか!
私は星組版マイ初日には、一幕ラストの「エメ」でダダ泣きしました。ふたりが本当にキラキラと愛に輝いていて、幸せにおびえつつもより幸せな未来を信じていて、でもこんなふたりがその後たどることになる運命を私たちは知っていて、そのギャップの悲しさに泣きました。
でも雪組版では泣けなかった…あまりに欠けることのない、高慢とは言わないまでもほとんど傲慢に見えかねないこのお坊っちゃまには、少しくらい何かを失う経験も大事なんじゃないの?とか意地悪にも思ってしまったからかもしれません。なんでなんだろう…ううーむ…
逆に、そんなキムロミオだからこそ、マーキューシオを殺されてティボルトに刃を向けてしまうあたりは納得しやすかったんですけれどね。
ううーむ…
というわけで各キャストですが、ジュリエットについてはふれたとおり。
とにかく娘役芸としてはミミちゃんに一日の長が絶対的にあります。タカラジェンヌはもちろん素の状態でも普通の女の子よりかわいい美人さん揃いですが、舞台でかわいく美しくあるためにはやはり芸が必要で、それは才能やセンスの問題もあるでしょうが一番はなんと言っても経験でしょう。
私はミミちゃんの歌にもそんなには不足を感じなかったし(今は他の組でもトップ娘役に歌姫タイプがいないせいもあり、慣らされているということもある)、とにかく台詞や演技がかわいい、背が低くて痩せているのでキムロミオと並ぶと映りがいい、そういうことが本当に大切だと思うのです。
アミちゃんはたとえば『はじ愛』なんかすばらしかった。しかしそもそもこういうタイプのヒロイン役者ではないし、バウ公演の通し役と本公演のヒロインでは大変さが違います。歌は確かにうまいが台詞がひどすぎる、キムの相手役としては背が高いしスタイルとしてもまだ丸い。まだまだ無理があったと思います。結果的に長期休演を余儀なくされました。劇団は生徒の育て方をもっともっと考えてほしいです。
チギは…歌、がんばろうよね。フィナーレの銀橋、みんながみんな緊張して手に汗握って観ていたと思うよ…それはダメだよね…
まっつは歌はとにかく上手いんですけれど、ベンヴォーリオとしてはトヨコのゲイキャラクター(オイ)がホントにハマっていたからなあ…
キムロミオが意外にしっかりしていそうなもので、ベンヴォーリオが世話してついて回る必要性が感じられず、むしろホントに飼い犬のようにくっついて回るやや情けない年下キャラっぽくも見えるのですが、完全にそういう役作りでもないようで、むむむ…という感じでした。
しかしフィナーレのダンスは本当にすばらしい。さすが生粋の花男。ぜひ雪組の下級生もいいところを学んで盗んでほしいです。
キタさんは大柄なのを生かしていじめっ子感が出ていてよかったと思います。それはテルが持ち味の色気を使ってキャラクターを作ったのと同じことですからね。
ヒロミも楽しそうにKYっぷりを演じていてよかった。
個人的にキャラクターとして好きなキャピュレット夫人(晴華みどり)ですが、かおりに合っていてとてもとてもよかったなあ。
そして乳母(沙央くらま)のコマ、がんばっていました。歌はそりゃ高音がつらいんだけれど、これまたお芝居がよかったです。
しかしフィナーレは…てかやっぱデュエットダンスがないのは宝塚歌劇として変だって、寂しいって! コマもせしるもフィナーレくらい男役やりたかったんじゃないのかな? てか女子に囲まれまくるロミオってやっぱ変じゃん!!
ヴェローナ大公(大凪真生)の歌にもうひとつパンチが欲しかったこと、サキちゃんの死にもうひとつシャープさが欲しかったこと…は、今後の役者としての課題かな。
あくまで組ファンでない者の一感想ですが…すみません。
地震に関しては…怖いだろうに、よくがんばってくれました。
安全が真に保障されることなど、この地球上に生きている限りありえないし、節電には配慮するにしても、不必要な娯楽だとかなんだとかいう理由で公演を中止することはないと思うので。
空席が目立ったのは悲しかったですが、こんなときだからこそひとときの夢が見たいという観客も多いでしょう。
次の花組公演もがんばってほしいし、雪組さんの全ツやバウ公演の東上も応援したいです。
イタリアのヴェローナに古くから続くふたつの名門モンタギュー家とキャピュレット家は、何代にもわたって争いを繰り返していた。キャピュレット家では娘のジュリエット(舞羽美海と夢華あみのダブルキャスト)とヴェローナ随一の富豪・パリス伯爵(彩那音)の縁談が持ち上がっていた。キャピュレット卿の甥ティボルト(緒月遠麻)は反対するが、キャピュレット卿は一蹴し、仮面舞踏会でふたりを結びつけようとする。一方、モンタギュー卿の息子ロミオは、親友のベンヴォーリオ(未涼亜希)とマーキューシオ(早霧せいな)にそそのかされ、キャピュレット家の仮面舞踏会に忍び込むが…
原作/ウィリアム・シェイクスピア、作/ジェラール・プレスギュルヴィック、潤色・演出/小池修一郎。2001年にフランスで初演、2010年星組で日本初演した作品の再演版。
私は全組そしてなるべく全公演を観ますが、これまで何故か雪組と星組には強烈な贔屓がいたことがなく、疎遠ではありました。今回のまっつの雪組への組替えはなかなか衝撃的ではありましたが、それでやっとひとつ縁ができたくらいで。
星組版は梅田で二回観たきり、DVDも一度観たきり。
雪組版の大劇場での好評も聞いていて、それはそれは楽しみに観に行ったのですが。
…が、自分でもびっくりするほど、星組版と比べてしまって、全然楽しめなかったのです、初回は。
なんでなんだろう…星組のコアなファンじゃないしものすごく熱心なリピーターって訳でもなかったのに…愛聴して記憶しているのはむしろウィーン版CDなのに、とにかくずっと
「あれ? え?」
って思いながら観てしまったのです。
期待しすぎていたせいなのか、歌がそんなにうまくは思えなかった、というのも大きかったのかも。
そして初回はアミエットだったのですが、歌はともかく芝居ができていなくて、ジュリエットが愛らしく思えなかったのが大きかったのかもしれません。
続く二回の観劇は、この部分が手堅いミミエットだったし、心の準備や慣れもでてきて、
「うん、これはこれでいいな」
と思えるようになったのですが…
マイ楽は東北関東大震災後のことであり、前夜の公演が大規模停電予測のために中止になった直後の公演だったため、また特殊な状況下で後述…
ともあれ、そんな不思議な観劇体験でした。
総じて、キラキラと輝いて繊細だった星組版に比べて、雪組版はマットというか瀬戸物のようなというか落ち着いているというか…な印象でした私には。
それは主にキムのニンによるものなのかもしれない…
キムは童顔で笑顔がいいタイプのスターだと私は思います。だからロミオには合うだろうと思っていた。
しかし意外にキムロミオはまっとうでまっすぐで健全で健康的で優等生的で、暴走してしまいそうな危うさとか、壊れてしまいそうな繊細さとか神経質さとかには無縁に見えました。
「僕は怖い」の歌がなんと空々しく響いたことか!
私は星組版マイ初日には、一幕ラストの「エメ」でダダ泣きしました。ふたりが本当にキラキラと愛に輝いていて、幸せにおびえつつもより幸せな未来を信じていて、でもこんなふたりがその後たどることになる運命を私たちは知っていて、そのギャップの悲しさに泣きました。
でも雪組版では泣けなかった…あまりに欠けることのない、高慢とは言わないまでもほとんど傲慢に見えかねないこのお坊っちゃまには、少しくらい何かを失う経験も大事なんじゃないの?とか意地悪にも思ってしまったからかもしれません。なんでなんだろう…ううーむ…
逆に、そんなキムロミオだからこそ、マーキューシオを殺されてティボルトに刃を向けてしまうあたりは納得しやすかったんですけれどね。
ううーむ…
というわけで各キャストですが、ジュリエットについてはふれたとおり。
とにかく娘役芸としてはミミちゃんに一日の長が絶対的にあります。タカラジェンヌはもちろん素の状態でも普通の女の子よりかわいい美人さん揃いですが、舞台でかわいく美しくあるためにはやはり芸が必要で、それは才能やセンスの問題もあるでしょうが一番はなんと言っても経験でしょう。
私はミミちゃんの歌にもそんなには不足を感じなかったし(今は他の組でもトップ娘役に歌姫タイプがいないせいもあり、慣らされているということもある)、とにかく台詞や演技がかわいい、背が低くて痩せているのでキムロミオと並ぶと映りがいい、そういうことが本当に大切だと思うのです。
アミちゃんはたとえば『はじ愛』なんかすばらしかった。しかしそもそもこういうタイプのヒロイン役者ではないし、バウ公演の通し役と本公演のヒロインでは大変さが違います。歌は確かにうまいが台詞がひどすぎる、キムの相手役としては背が高いしスタイルとしてもまだ丸い。まだまだ無理があったと思います。結果的に長期休演を余儀なくされました。劇団は生徒の育て方をもっともっと考えてほしいです。
チギは…歌、がんばろうよね。フィナーレの銀橋、みんながみんな緊張して手に汗握って観ていたと思うよ…それはダメだよね…
まっつは歌はとにかく上手いんですけれど、ベンヴォーリオとしてはトヨコのゲイキャラクター(オイ)がホントにハマっていたからなあ…
キムロミオが意外にしっかりしていそうなもので、ベンヴォーリオが世話してついて回る必要性が感じられず、むしろホントに飼い犬のようにくっついて回るやや情けない年下キャラっぽくも見えるのですが、完全にそういう役作りでもないようで、むむむ…という感じでした。
しかしフィナーレのダンスは本当にすばらしい。さすが生粋の花男。ぜひ雪組の下級生もいいところを学んで盗んでほしいです。
キタさんは大柄なのを生かしていじめっ子感が出ていてよかったと思います。それはテルが持ち味の色気を使ってキャラクターを作ったのと同じことですからね。
ヒロミも楽しそうにKYっぷりを演じていてよかった。
個人的にキャラクターとして好きなキャピュレット夫人(晴華みどり)ですが、かおりに合っていてとてもとてもよかったなあ。
そして乳母(沙央くらま)のコマ、がんばっていました。歌はそりゃ高音がつらいんだけれど、これまたお芝居がよかったです。
しかしフィナーレは…てかやっぱデュエットダンスがないのは宝塚歌劇として変だって、寂しいって! コマもせしるもフィナーレくらい男役やりたかったんじゃないのかな? てか女子に囲まれまくるロミオってやっぱ変じゃん!!
ヴェローナ大公(大凪真生)の歌にもうひとつパンチが欲しかったこと、サキちゃんの死にもうひとつシャープさが欲しかったこと…は、今後の役者としての課題かな。
あくまで組ファンでない者の一感想ですが…すみません。
地震に関しては…怖いだろうに、よくがんばってくれました。
安全が真に保障されることなど、この地球上に生きている限りありえないし、節電には配慮するにしても、不必要な娯楽だとかなんだとかいう理由で公演を中止することはないと思うので。
空席が目立ったのは悲しかったですが、こんなときだからこそひとときの夢が見たいという観客も多いでしょう。
次の花組公演もがんばってほしいし、雪組さんの全ツやバウ公演の東上も応援したいです。
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