駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇雪組『Lilacの夢路/ジュエル・ド・パリ!!』

2023年07月02日 | 観劇記/タイトルや・ら・わ行
 宝塚大劇場、4月28日13時、5月11日18時(新公)。
 東京宝塚劇場、6月20日18時、29日18時半(新公)。

 イギリス産業革命の影響を受けて目まぐるしく変化する19世紀初頭のドイツ。プロイセン王国のユンカーであるドロイゼン家の広大な領地には、ポーランドから移り住んだ祖先が好んで植えたライラックの花が春になると咲き乱れる。ドロイゼン家の紋章にも描かれているライラックは「誇り」を表し、ドロイゼン家には今も騎士道の精神が受け継がれている。長兄のハインドリヒ・フォン・ドロイゼン(彩風咲奈)は兄弟五人が一丸となって、新しい産業である鉄道業を発展させることを夢見ていた。そんなある日、ハインドリヒは末弟ヨーゼフ(華世京)から音楽家志望のエリーゼ(夢白あや)を紹介されるが…
 作・演出・振付/謝珠栄、作曲・編曲/玉麻尚一、斉藤恒芳、小澤時史。

 例の、みりお担で最近ではそらが一押しの親友を同伴した際に、「ライラックの風が吹いていたね…」と言われたのですが、私はむしろ以後の駄作(トンチキとすら言いたくない)を「夢路ってる」と言っていきたいと考えています。それくらい私はダメでした…
 私は謝先生は演出、振付の方が上手いとは思っているけれど、『眩耀』がわりと好きだったこともあり(しかしこれも世評はあまり良くない作品なのは承知してはいるのですが…)、脚本も書けないことはないと考えているので、今回もそれなりに期待していたんですけれど…ホントどうした!?レベルの支離滅裂さだったと思います。というか盛り込みすぎ? そして交通整理できてなさすぎ?? よく景子先生がそのとき感化されたり勉強したものをそのまま書いちゃいました!みたいな脚本にしてくることがあるけれど、まさかその上、イヤ下?をいく脚本を拝むことになろうとは(イヤ「ル・サンク」を買ったわけじゃないので脚本として読んではいないのですが)…ホント長く宝塚歌劇ファンをやっていると、思いもかけないことに出会うものよのぉヨボヨボ…と年寄りの振りもついしたくなろうというものです。
 というわけで『邪馬台国』にはあれだけねちねち書きましたが、今回はそんな気も起きません。てか『ネモ』に近い電波みすら感じました…どーしてこーいうのを通すの劇団? 事前にチェックしないの? おかしいと思わないの? 一生懸命芝居に仕立てようとしている生徒が本当に気の毒です。そして咲ちゃんはホント、『ボニクラ』はよかったけど本公演の作品の恵まれなさがひどすぎると思う…ホントなんとかしてあげて……
「『プロジェクトX』を見るようなつもりで観るとおもしろいんだよ」みたいな説もあるようですが、イヤこれは宝塚歌劇なので、というか少なくともエンタメの物語であるべきなので、ドキュメンタリーのおもしろさみたいなものがあるとしてもだから何?なのでは…てかこれたかだか一年くらいのスパンのお話だと思うんだけど、鉄道業って十数年とか下手したら数十年かかるものなのでは? 突端にたどりついただけのお話なのだとしても、事業ってなんか、こういうものじゃなくない? あと私はユンカーについてほぼ何も知りませんが、庶子の存在ってそんなに稀有なの? あとヒロインは自力でやれさえすればヴァイオリンでもジュエリーデザインでもなんでもいいってことなの?
 …イヤいかん、いちいちつっこむのはやめよう、そういう論評に値しない代物だと私は判断することにしたのでしたいかんいかん。なので、ほとんどトートツに差し挟まれるクリスマス?のショーアップ場面の構成なんかが美しかったなーとか、セットや衣装は素晴らしかったんだけどなー、ということは言い置いて、もう終えたいと思います。

 新公もご縁あって東西とも観たのですが、少なくとも東京公演は誰かお友達に譲ればよかったな、と思いました。キャストのもの珍しさや、持ち味の差ゆえか役作りも多少違うように見えて、大劇場新公は新鮮に、けっこうおもしろく観たんですよね。でも東京ではもう、それでは脚本の粗は私には耐えられない…と思ってしまったので……3回くらい時計見ちゃったもんなー、すみません。
 主演は紀城ゆりやくん。開演アナウンスの声があみちゃんそっくり…とか思ったのは私だけでしょうか。それはともかく、非常におちついていて手堅く、台詞も歌もダンスもよかったと思いました。こんな支離滅裂な台詞を覚えてしゃべることができるだけですごい、とは思うものの(^^;)、キラッキラしたスターオーラで強引に引っ張る、というタイプではないだけに実直な長兄像に見えて、好感を持ちました。
 ヒロインは安心安定の音彩唯、それこそあえてのヒロイン力全開で強引に場面を埋め説得力を持たせ話を展開させているようにすら見えました。素晴らしい…場数十分ですし、もう月組とかに組替えして次期トップ娘役にしちゃえばいいんじゃないかな、と個人的には思ったりしていますすみません。
 次男フランツ(朝美絢)はかせきょー、こちらも華やかかつ手堅くてよかったです。しかしずっと観てくると何をやってもかせきょー、にやや感じなくもないかな…まあでもまだまだ下級生だし本人比では断然上手くなっているし、いろいろ変化してくるのはこれからなのかな。期待の大器ですし、先が楽しみです。
 三男ゲオルグ(和希そら)は長の長だった聖海由侑くん。台詞の声や言い回し、声音がホントそらそっくりでしたね。もともとそうなの? あえてなの?? それはともかく、兄弟の要としてまた新公の長として、がっちり締めてくれているように見えました。頼もしい…そして綺麗だし、1回くらい主演があってもよかったのでは、と今さらながらに思いますが、雪組もたいがい御曹司ひとりっ子政策をとるからな…
 実は弟だった!なアントン(縣千)のところはエンリコくん、苑利香輝くんでこれがよかった! 本公演でも踊れる工員として目を惹き、ショーの縣ナインとのころではかせきょーとシンメの「あの最上手にいるキラッキラの若手スター、誰っ!?」状態でしたが、ぱーんとしたオーラと華のある新人キター!感がすごかったです。てか前回の『蒼穹』新公であすくんのところやって「誰あの上手い、名前知らない子!?」ってなった生徒さんですよね、おそるべし…ちょっとまぁさまに似たお顔で、身体や立ち方、見せ方のスッキリさせ形はまだまだこれからでしょうが、私はもうすっかり識別できるようになってしまいました。若さって怖い…
 あとは、貴婦人連にいた華純沙那ちゃんや麻花すわんちゃんが綺麗で楽しかったのが印象的でした。てかすわんはもっと真ん中っぽい役もやらせてみてくれよー! そしてしっかり新公参加の夢白ちゃんが、ぐっとしっとり大人な作りででもやはり華やかで目立っていて、素晴らしかったです。
 あとは夢人の愛空みなみちゃんばっかガン見してましたかね…すっかり識別できるようになって、お気に入り。夢人は歌はあるとはいえしどころがない役ですが、本公演も新公も美人娘役ちゃん勢揃いチームとなっていて楽しかったです。
 ひまりが好きすぎて完コピっぷりにちょっとオヨヨとなったディートリンデ(野々花ひまり)は愛陽みちちゃん、お上手でしたよね。しかしよくわからない、しかし謎の魅力があるキャラクターだ…
 

 ファシネイト・レビューは作・演出/藤井大介。
 まあ宝石でパリで、と鉄板のショーで、毎度のダイスケショーとしてはフツーなんでしょうが、手堅く楽しかったです。
 というか夢白・ザ・クイーン・お披露目ショー!みたいな素晴らしい扱いの良さで、こんなの退団のときにだってなかなかやってもらえないよ!?というてんこ盛り感でした。それにきっちり応える夢白ちゃんのプロっぷりよ…! ひらめちゃんの相手役にやわやわと合わせ包み込む芸も素晴らしかったですが、気負うことなくまた三歩も十歩も下がることなくばーんと並び立ってかつちゃんと添える夢白ちゃんの、トップ娘役としてのポテンシャルの高さに感服しました。これまたドーリーな体型でお衣装もなんでも似合うし! いいぞいいぞバンバン行けー!と思っていたら終わりました。
 逆に、あーさとの二番手カップル場面があったひまり、卒業ソロがあった有栖ちゃん、エトワールのはばまいちゃん以外は娘役フィーチャーがあまりなく、もっといろいろ起用してよダイスケ…とは思いましたかね。
 そらのクレオパトラはそりゃ白眉なんだけれど、あとはあーさもあがちんも、ちょっとなんか既視感あったかな…黒白場面なんかも、もう5億回観た気がしましたしね。
 でもフィナーレは、まあ選曲が卑怯ってのはあったけれど、よかったかな…
 こちらもどうぞ千秋楽までご安全に。





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 英国ロイヤル・バレエ団『ロ... | トップ | 劇団四季『オペラ座の怪人』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

観劇記/タイトルや・ら・わ行」カテゴリの最新記事