駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇星組『花の業平/サザンクロス・レビューⅡ』

2009年11月10日 | 観劇記/タイトルは行
 東京宝塚劇場、2001年12月4日マチネ。
 香寿たつき・渚あきの新生トップコンビお披露目公演。ただし王朝ロマン『花の業平』は年頭に前トップコンビ稔幸・星奈優里で上演されたもの、ダンシング・ファンタジー『サザンクロス・レビューⅡ』は97年に花組で上演されたショー『サザンクロス・レビュー』をアレンジ・再演したもの。
 『花の業平』の舞台は平安初期。祖父は平城天皇、父母も皇族の出でありながら藤原氏優勢の世で官位に恵まれない公達・在原業平(香寿たつき)は、歌才に優れ、雅び男として数々の浮き名を流す当代一の貴公子だった。一方、太政大臣藤原良房は養女・高子(渚あき)を今上帝に入内させ、自身の勢力を拡大しようと画策していた。それを嫌った高子は、父の腹心である兄・基経(汐風幸)の圧力をもふりきろうとするが…作/柴田侑宏、演出・振付/尾上菊之丞、作曲/吉田優子。
 うーん、やっぱりもとがノルさん・ユリちゃんのニンに合わせて当て書きされた脚本だから、ちょっとちがうかなー、という感じがぬぐえませんでした。前バージョンは私、テレビで劇場中継を観ただけだったんですけれどね。
 そのときタータン(香寿たつき)が敵役である基経をすごくいい感じで憎々しく冷酷に演じていたから、余計にね。
 アキちゃんも、誇り高く意志が強く情熱的でかつ朧たけた姫君・高子にしては、私にはややキツいだけに見えました。これまたユリちゃんが声が艶っぽくてよかったからでしょうか。役替わり公演というのは難しいものです。
 でも今回の基経もよかった。雪組をずっと観ていないのでご無沙汰だったコウちゃんでしたが、渋い声を出すようになってて感心しました。
 ストーリーは、業平の親友・清行(初風緑)や梅若(彩輝直)の存在がまだまだ中途半端に見えましたが、業平と高子を巡る本筋はいいんですよね。ともあれ久々の日本もの、綺麗なお衣装だけでも堪能しました。あと、町民のしびを演じたにしき愛に惚れました。
 『サザンクロス・レビューⅡ』の作・演出は草野旦。
 いやー、よかったです。デーハーで、楽しくって。毎年12月公演はこのショーにしてもらってもいいとさえ思ってしまいました。
 あふれる色彩、サンバのリズム、赤と緑のお衣装でのクリスマスソング・メドレー、これでもかという総踊り、サイレント映画のようなウエストサイド・ストーリー。
 大階段がパレードにしか使われなかったことだけがちょっとだけ残念だったかな。
 ツボだったのがアマゾンの歌手たちと、マンボNo.1、2、3。席が最上手かなり前だったので、ほとんど目の前に三人が登場したときにはつい「…かっこえ~」とうめいてしまいました、私。
 今回は宝塚歌劇初体験という仕事関係の知人(女性)を連れて行きました。堪能してくれたようです。
「観てみるもんですねえ、おもしろかったです! お姫様抱っこされた~い! 頭領に惚れたかもしれません、私」
 とのこと。ううむ、おそるべしサエコちゃん。
 でもこの組にはトウコちゃんやネッタン、ナルミン、カヨコちゃん、マトブンと若手スターが多士済々なんですねえ。これで若手娘役にごひいきができればかなり通ってしまいそう。でもソンちゃんもチカちゃんもちょっとピンとこないんだよなあ、私。さびしい…
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ミュージカル『ジキル&ハイド』

2009年11月10日 | 観劇記/タイトルさ行
 日生劇場、2001年11月13日ソワレ。
 19世紀末のロンドン。医者のヘンリー・ジキル(鹿賀丈史)は病院の最高理事会に臨んでいた。長年研究を続けてきた「人間の善と悪を分離する薬」の人体実験の許可を得るためである。婚約者エマ(茂森あゆみ)の父ダンヴァース卿や友人のアターソン(段田安則)が危惧したとおり、理事会でジキルの要求は却下され…原作 R・L・スティーヴンソン、台本・作詞 レスリー・ブリッカス、作曲フランク・ワイルドホーン、訳詞 高平哲郎、演出 山田和也。
 ミュージカルというよりはオペレッタに近い構成でしたね。セリフがほとんど歌になっていて、逆にダンスシーンはほとんどありません。
 しかし難しい歌が多かったなー。不安定なのは歌い手の力量なのかそういう曲なのか、とにかく聴いていてあまり気持ちよくなかったです。あゆみお姉さんも『三文オペラ』の方がよかった。
 一番よかったのは娼婦ルーシー・ハリス役のマルシア。これが初舞台とは思えない、パンチのある歌声を聴かせてくれました。やや力任せではありましたけれどね。逆にミュージカル初挑戦の段田さんの歌にはひやひやさせられちゃいました。
 お芝居としても残念なことにあまりおもしろく思えませんでした…原作も読んだことないんですけれど。まあ舞台用オリジナルストーリーのようなものらしいのですが。
 ジキル博士があまりチャーミングに見えなくて、感情移入できなかったせいでしょうか?
 たとえば、私だったら…そうだなあ、ジキルをもっと生真面目で神経質で理想家肌の、好青年なんだけれど危なっかしいところがある、とかいうふうにしたかもしれない。
 気がふれてしまった父親を治すために研究をしているのだけれど、本当は自分にも父の狂気が遺伝しているかもしれないと恐れている訳。もっといって、人間の悪の面とか狂おしい面とかを認められない訳。エマに対しても天使のように崇めていて、エマはそんなジキルの愛をちょっと重く感じていたりもする。残り少ない独身時代の夜を楽しもうとアターソンに連れられていったパブで娼婦ルーシーに会うと、彼女は人間なんて誰でも醜い悪の面を持っているものよ、とか言う。実験が許可されなかったので自分で薬を飲んでみることにしたジキルは、ハイドに変身(?)してしまい、ジキルを馬鹿にした病院理事たちを次々と殺して歩く。殺人に興奮したハイドはその足でルーシーのところへも向かうが、彼女はむやみと露悪的になっているハイドの瞳に、ジキルを見出す。結局のところジキルは聖ばかりでありたがり、ハイドは邪ばかりであろうとしているが、もともと人間とは両面合わせ持つものなのだ。エマはジキルを想い気遣い、ルーシーはハイドを想い気遣う。だがついに人間のそうした本性が認められなかったジキルは、結婚式の夜…!
 という感じでしょうか。これなら納得できるんでけどなあ。勝手に演出しちゃダメですね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宝塚歌劇月組『血と砂』

2009年11月10日 | 観劇記/タイトルた行
 日本青年館、2001年11月8日(千秋楽)。
 19世紀末のスペイン、セビーリャ。フアン(汐美真帆)、プルミタス(大空祐飛)兄弟はスペインの男の子ならば誰でもそうであるように、マタドールにあこがれていた。ある日ふたりは、親友のチリーパ(紫城るい)とプルミタスのガールフレンド・ルシア(音姫すなお)と共に、夢を叶えるべくビルバオへ向かう。フアンは幼なじみのカルメン(椎名葵)に、マタドールになったら必ず迎えに帰ってくると約束した。ビルバオの闘牛興行は明日のスターを目指す若者であふれていたが…原作はブラスコ・イバニェス、監修 柴田侑宏、脚本・演出 斎藤吉正、作曲 高橋城。
 バウ・ライブアパシオナードと銘打たれた小公演の上京版だったのですが、いやあ、やはりバウ公演はいいですね。総勢29名の役者すべてにきちんとした役がつき、なんらかのセリフをしゃべっています。こうでなくてはね。
 主役は共にバウ初主演のケロちゃん(汐美真帆)とユウヒくん(大空祐飛)。『大海賊』では特出の専科生に大きな役を持っていかれてしまっていましたが、それでも光っていたので、きちんとお芝居をしたところを見てみたいものだと思っていました。まさにタイムリーな「待ちわびた」企画。ふたりの魅力を生かしたキャラクターがそれぞれきちんと当て書きされ、絡むキャラクターもドラマも濃く、観ていて本当に気持ちの良い公演でした。
 フアン。生真面目で誠実、でも優等生ぶりの陰にもろいところも併せ持つ長男タイプのこのキャラクターは、ケロちゃんのニンにぴったりでした。スペインの国民的スター「エル・マタドール」として大人気を集めるようになっても、おごらず飾らず、故郷に帰って幼なじみのカルメンと結婚し、母親孝行をする、純朴なところがある青年。社交的なつきあいが苦手なのに、どうしてもと請われて会った闘牛ブローカーの姪ドンニャ・ソル(西條三恵)の妖艶さに惹かれてしまい、転落への道を辿る…
 喉が疲れていたのかやや声量のない歌でしたが、そのかすれるような甘い声でカルメンに語りかけたセリフなど、優しさにじんわりきてしまいました。
 片やプルミタスはやんちゃでまっすぐで正義感に篤く情熱的。ルシアを馬車で轢き殺したモライマ侯爵(大樹槙)に復讐すべく、義賊エル・アルコンとなる黒い役所。兄を裏切り者と恨み、兄嫁を誘惑するところなんか、よかったです。カルメンがちょっと通り一遍といった感じの演技に見えたのが珠に瑕でしたが。アクションシーンもフェンシング風の剣さばきでかっこよかったです。最後に兄弟ふたりで酒を飲み交わすシーン、よかったなあ。
 そしてこれが退団公演となってしまったミエちゃんのドンニャ・ソル。音楽家目指してウィーン留学までしたのに、マタドールと恋に落ちて結婚し、若くして死なれた未亡人。パトロネスとして新進マタドールたちを応援するようになるが、それが愛ゆえか憎しみゆえなのか自分でもわからない。「輝いている殿方に興味があるの」と言い捨て、スキャンダルで離婚し闘牛で大怪我をしたフアンからブエノスアイレス出身の若手スターに乗り換える…いい役でしたねええええ。クライマックスでトロとして出てきたのも素敵でした。
 ただ、私としては、ミエちゃんはどこまでこの役を理解してやっているんだろうか…とちょいと思ってしまったんですが。
 ふっきりすぎているというか、「ファム・ファタールってこんな感じ」というような、おんなじ感じの揺らぎ方のしゃべり方だったので。幼い感性のままでは演じきれない役だったと思うのだけれど、やっとこういう役もできる女役さんになりかけてきたところだったのではないでしょうか。早すぎる卒業が残念です。
 ラストの「アディオス」にはでも、泣きました、私。本公演で卒業するのならタカラジェンヌの制服である袴姿で大階段を降りる儀式ができたのだけれど、この公演のフィナーレでマタドールの衣装で踊ったのが、「男役の制服」とも言われる黒燕尾にも似ていて、餞になったのかもしれません。
 儲け役だったのはガラベエトオ(楠恵華)。フアンより一足先にデビューした先輩マタドールだったのが、怪我をしてフアンの付き人になったという設定なのですが、フアンへの愛憎なかばする感じがものすごくよかったです。復帰戦に赴くフアンを抱きしめるところ、よかったなああああ。
 兄弟の親友チリーパと、フアンを追い落とす若手スター・フユエンテスの二役を演じたのは紫城るい。本公演のショーでは女役をやらされることが多い人ですが、明るい輝きがあってよかったです。フユエンテスの方はちょっと作りすぎな感じもしましたが、これからこれから。
 気になったのはモライマ侯爵の悪者ぶりが弱かったことと、プルミタスに想いを寄せているフランチェスカ(美鳳あや)があんまりよく見えなかったこと。もっといじらしくやれればこれまた儲け役だったのに、どうも平板に見えました。ビルバオでのトロSのダンスはよかったのになあ。
 あとは、予算の問題なのかもしれませんが、ドンニャとカルメンにはもう一着ずつドレスが欲しかったです。違うシーンで前見た服が出てくるのはちょっと悲しかった…それとカルメンが後半修道院に入ってからですが、あんないかにも尼さんってな服しかなかったんでしょうか。星組『剣と恋と虹と』のときにアヤカが着ていたような黒い喪服のドレスとかでは駄目なんでしょうかね。あまりに地味でもったいなかったです。
 個人的には、エル・アルコンを追う刑事グァルディオラ役のエリちゃん(嘉月絵理)のファンなので、パンフレット写真が力入っててよかったのと、フィナーレでガンガン踊ってくれたことがうれしかったです。
 楽日なので、退団者の挨拶やカーテンコールがありました。
 素でしゃべっているところを見ると、ケロちゃんの方が本当はわりとやんちゃで、ユウヒくんの方が気ぃ遣いなのかもしれませんね。でも仲良さそうで、充実感にあふれていて、微笑ましかったです。ああ、いいものを観た。
 この日お誕生日のガイチさん(初風緑)がご観劇。着席のときに客席から拍手が上がっていました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする