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駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇雪組『ベルサイユのばら』

2024年10月13日 | 観劇記/タイトルは行
 宝塚大劇場、2024年8月1日13時、18時(新公)。
 東京宝塚劇場、10月6日11時。

 1774年1月、華麗なロココ調の貴族文化が絢爛と咲き誇るパリ・オペラ座で、華やかな仮面舞踏会が開かれる中、留学生として彼の地を訪れていたスウェーデン貴族、ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン(彩風咲奈)は未だしきたりや習慣になじめず、貴族たちの嘲るような視線を浴びて戸惑っていた。そんな彼に優しく手を差し伸べる女性がいた。しかしその手を取ろうとするフェルゼンを、近衛連隊長付きの大尉、オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ(朝美絢)が遮る。手を差し伸べたその女性こそ、フランス王太子妃マリー・アントワネット(夢白あや)だったのだ…
 原作/池田理代子、脚本・演出/植田紳爾、演出/谷正純。1974年の初演以来、幾たびも上演を重ねてきた宝塚歌劇団最大のヒット作。トップスター彩風咲奈の退団公演。全2幕。

 直近のフェルゼン編だった2013年の雪組版の感想はこちら、14年宙組全ツ版の感想はこちら
 ピンクのポスターが出たときには、いよいよシン・ベルばら爆誕か!?と期待したのですが、蓋を開けたらえりあゆフェルゼン編よりさらに改悪されているという、まったくのしょんぼり案件でした。しかも、これは今回が初めての場面ではないので今さら気づいた私も私なんですが、あらすじにも書いた冒頭のこの場面のあと、フェルゼンはオスカルに謝りますが、本当に王太子妃に対して非礼を働いたと思ったならまず王太子妃自身に謝るべきなのでは…と思ってしまったんですよね。彼女自身は彼の行動を無礼だとは思っていなかったと思いますけれど。あと謝ろうにも女官長(俺の愛空みなみ)に退出させられちゃっててその場にいないってのはあるんだけれど…潔く謝るフェルゼンの態度にオスカルがよろめいちゃうのはいいんだけれど、それはそれとしてとにかくフェルゼンが当のアントワネットには頭を下げず男同士で和解して済ませている…ってのがもう植Gのミソジニー表象なんだなと思うと、もうのっけからうんざりしてしまったのでした。「~とはいいながら」の芸のない連発とかもさー…宝塚版ベルばらって未だに無限にダメ出しできるんだな、とホント絶望的な気持ちになりました。
 ピンク場面も、なーちゃん以来の踊るフェルゼン編にしようという意図とか、今回のフィナーレにデュエダンらしいデュエダンがないのでここでやっておこうという配慮とか、わからなくはないし私はまあ好きですが、でもやっていることは従来あった夜の庭園の小舟の場面と同じだと思うので、ならあれが観たかった、というファンも多いことでしょう…とか、国境で身につけてきたオーストリアの物をフランス製の物に全取っ替えされるのって、「戒律」じゃないと思うんですけど…「そんな心ないしきたりが…」とかさ、なんとでも言い換えられるじゃん…とかとか、なんでこんなんばっかしなの? つっこみながら観るのに疲れて途中から放棄するんですけど、ホントつらかったです…
 2幕冒頭の市民のダンス追加も、いいっちゃいいんですけど、どうしたどうした!?感がありますしね…これは今後の再演でも採用されていく場面なんでしょうか…?
 でも、韓国ミュージカル版を観てきたから言うわけではないのですが、もう宝塚版にお話の整合性とか原作漫画準拠とかを求めるのは、ここまで来たらもう無意味だな、と思いました。仮にも50年もやってきていてファンもすっかり飼い慣らされていて、例えば小舟の場面がなきゃ寂しいわけだし(原作にはない場面です)、アンドレは橋の上で死ななきゃダメだしフェルゼンは最後に牢獄を訪れなきゃダメだよね、ってなっちゃってるんだと思うんですよ、もう。なのでもうこれは、植田ベルばら歌舞伎として通し狂言として、5時間くらいの全名場面名曲てんこ盛りの一日一回の特別公演に仕立てるのがいいんじゃないですかね…興業としては全然成立するでしょう。役替わりして二か月のロングラン、とか一度ぶっ込んでみればいいのに…「♪シャンシャン鈴の音軽やかに~」のお輿入れから「さようならフランス!」まで、ジャンヌもポリニャックも黒い騎士も入れて、オスアンが剣の稽古で木の後ろに回ったら子役から本役になるのもやって、毒殺もジェローデルの銀行台詞も衛兵隊のアンドレ匍匐前進訓練も入れて…ね、そうしましょうよ。かつての私が完全版を考えてみてあげていることですし…(笑)
 来年には劇場用アニメが公開されるそうですし、韓国ミュージカル版も来日公演ないし外部で日本人キャストによる上演がなされるかもしれないし、原作準拠はもうそっちにお任せして、宝塚版はもうこのままでいいです。それくらい、私はもう見放しました。植Gマジでお元気なようだし、死ぬまで手放すつもりがないんだろうし、ならこっちが期待するのをやめるしかないです。原作漫画を離れて進化し積み上げてきてしまったものはあるし、それはそれで価値があるのですから、もうそっちを貫きましょう。名場面のつなぎ方に工夫だけしてくれればいいです。あと無意味なビンタをやめさせてくれればいいです。今回のジェローデル(諏訪さき)はオスカルに手を上げなかったけれど、オスカルはフェルゼンを平手打ちしています。ホントやめさせてほしい…確かに原作オスカルって宝塚版よりかなりバンカラというか(笑)ランボーなところがあるキャラクターなんだけれど、しかし理不尽な暴力を振るう人ではないのですよ…こういう誤ったキャラ解釈や女性蔑視、コンプラ違反は是正していきましょう。それだけです。
 あとは集英社に原作漫画の普及をがんばっていただきたいです。お若い人で未読の人が増えています、増えすぎています。紙のコミックスがほぼ流通していないのか、あっても文庫版とかなのか、漫画喫茶やレンタル書店にもないようで、さりとて電子書籍では読みづらい、と感じる層もまだ多いようなので…でもこんな世紀の傑作が読めなくなるなんて世界の損失です。復刻版でも特装版でもなんでもいいから、手を変え品を変え出し続けるべきだと思います。出版不況は重々承知していますが、これは人類の財産なので…

 というわけで以下、簡単に生徒の感想を。
 咲ちゃん、ご卒業おめでとうございます。ベルばらに憧れて受験した四国のお嬢さん、93期の主席、音校ポスターのひとり写り、まごうことなき雪組の御曹司…なのに結局トップ時代は作品に恵まれなかった気がしなくもないですが、「歌劇」10月号のサヨナラ特集にあるように、下級生時代とか3番手、2番手スターのころには印象的なお役がたくさんあったので、それで記憶に残るスターとして去るのもいいのではないかしらん…など思いつつ見送りました。
 なんかツヤッツヤのメイクで、眉の描き方とかがずいぶんと女性的に見えて、なんかもう仕上がってんなー、もう女優さんになる準備ができてるんだなー、とかは思ってしまいましたが、辛抱役である種しどころのないこのフェルゼンというお役を(本当はもっと魅力的に描くことがいくらでもできるキャラクターだと私は考えていて、現状のしょーもさはあくまで脚本のせいなのですが)ノーブルに、凜々しく美しく演じていて説得力を持たせていて、うんうんもう十分だよ…と思えました。フィナーレも、私としては薔薇タンとか小雨とか鼓笛隊みたいなロケットとかの伝統的なベルばらフィナーレが観たかった気もしますが、プレ・サヨナラショーみたいなのでいく、というならそれはそれでアリでしたし、滝汗も愛しかったのでもうそれでいいです。スタイル良すぎて外部では使いづらいのではなかろうか、など余計な心配もしますが、今後も良き人生を歩んでいってくださいませ…!
 夢白ちゃんは現代的なシャープさがニンの娘役さんだと思うので、こういう大芝居はつらかろうと案じていましたが、まあまあ健闘していたと思いました。もちろん初っ端が一番つらくて、後半になるにつれて良くなっていくんですけれどね。ところで断頭台の鬘はいつか誰かが不揃いザンギリにしてくれないものでしょうか、あんな綺麗なおかっぱじゃそれっぽくないと思うですよ…
 あーさとも似合いのトップコンビになるでしょうが、咲ちゃんともホント写りがよかったと思うし、おおらかで優しい咲ちゃんから学べたことも多々あったろうし、咲ちゃんをよりカッコよく見せてあげられていたと思うし(少なくともひらめが寄り添っているときとは違う味わいがあった、コンビチェンジってそういうのがいいよね…!)、ドレス姿の美しさは素晴らしいし、ここでこういう経験が積めたことはデカいと思うし、ホントいい巡り合わせだったと思います。これからもさらに大輪の花を咲かせてほしいです…!
 あーさオスカル、よかったですねー! 普段より薄めな舞台化粧?が、気なんか遣っていないんだけど素で綺麗なオスカルっぽくて素敵でした。出番や場面はかなり少ないし説明もないので、知らない人には男装の麗人って設定が伝わっていないらしいんですけど(そのあたりはさすがに常識かと思っていました…)、それでもオスカルらしい生真面目さ、りりしさ、けなげさがよく出ている演技だったと思います。次期トップスター、期待しています。作品に恵まれますように…!
 さらに出番が削られていたアンドレ(縣千)は秘めた恋心までフェルゼンに手紙でアウティングされるというサイテーな改悪までされていますが、やはり大健闘していたと思います。私はこの人は路線スターとしては小柄なのではないかと密かに案じているのですが(次期2番手、いずれはトップなんだろうし…)、そう見せないマジックが素晴らしかったですね。「星が綺麗だ…」であーさオスカルと並ぶとちゃんとデカく見えるのって、すごいよ…! 片目ないしほぼ両目がもう見えていない演技がまた的確でした。あさあがでフツーにオスアン編が観たい、というファンの要望もむべなるかな、です。歌はまだまだ力任せな気がするし、ダンサーだと思うのでショーでもっとバリバリ使われていくであろう今後にさらに期待しています。
 すわっち、はいちゃん、さんちゃんは完全に役不足。かせきょーはベルナール(華世京)でしたが、私はなんかあまり良くないなーと感じてしまいました。ひまりとのバランスの差か…? 紀城くんも今さら小公子(紀城ゆりや)じゃないと思うんだけど…俺のえんりこも探して観ていましたよ、あーさお披露目の新公主演なんかぼちぼちどーかな?
 娘役陣は、フランス勢の輪っかのドレスも新調されて意外に場面を多く作ってもらっていましたが、だからって、ねえ…って感じ。今回はジャンヌ(音彩唯)がいる!と配役時には沸いたものの、中途半端でしたしね…でもものすごい爪痕を残していたと思います、はばまいちゃん。これでご卒業のひまりはロザリー(野々花ひまり)、集大成でしたね。すでにベルナールの妻になっているらしいところからの出番なので、知らない人には誰このキャラ、なんでしょうけど…そう考えるとホントひどいホンだな…(><)あとはなんかもう、探せば可愛い子は可愛いから見つかるんだけど、という感じで…王子(星沢ありさ)、王女(音綺みあ)なんかはわかりやすいけど…俺のみなみんも女官長(愛空みなみ)って、使われてるんだかなんなんだか…せれーなのトゥのバラの精(瑞希せれな)とかねえぇ…新公すわんだしねえぇ……
 パレード、ダブルトリオが全員娘役で、咲ちゃんが降りてくるときには全員ハケていて、男役?それか輪っかのドレスじゃない人も?が客席登場で銀橋や舞台に戻って…というのはなかなか斬新でしたね。でも、咲あやの会釈のあとに咲あさ会釈としたのも、そのあとあーさに銀橋を下手まで渡らせたのも、私は反対です。パレード銀橋ラスト会釈はトップコンビがするもの、トップスター以外の生徒は銀橋を半分まで行って戻り、上手から下手まで渡りきるのはトップスターのみ…という「しきたり」を、私は尊いものだと考えているからです。たかがここ2、30年のものでしょ、イレギュラーもこれまでけっこうあったでしょ、と言われたとしても、今回それを崩すには理由が弱いと思いました。オスカルがそれだけのキャラだと考えているなら本編の扱いがひどすぎます。というかならそもそもフェルゼン編なんて無理矢理作らなきゃいいでしょ、って話です。この物語の主人公は一にアントワネット、二にオスカルなんですから…それにあーさは次の公演で銀橋を全部渡れるんじゃん。その価値を削いでいますよ…

 大劇場新公が観られたので、以下簡単に。
 思えば『CH』新公はいちゃんのところで誰あの美形メガネ!?となった蒼波黎也くん、ラスト新公で初主演おめでとう! あの登場、緊張したでしょうが全然そんなそぶりがなくて、私は2階1列どセンター席にいたのですがそのオペラグラスを射貫く勢いで見つめてきて、堂々と歌っていて…あの舞台度胸、声量、「私がフェルゼンですが何か?」なドヤ感、逸材…!と震えましたね。綺麗だったし、歌える踊れる芝居ができる、素晴らしかったです。宝塚版フェルゼにありがちな(オイ)女々しさ、しょーもさな、情けなさ、ふがいなさがまるでなかった…! 今後もガンガン使われてほしいです!!
 そして雪組は毎年のように主席を取っているのに全然使う気ないのかどーにかせーよ、と思っていた白綺華ちゃんのアントワネットも絶品でした。キタよ姫役者!感が素晴らしかったです。綺麗で花があり、知られてはいたけれどホント歌がいい。今後もガンガン以下同。
 そして新公主演経験者でもある紀城くんのオスカルがまた良かった…! 正直美貌が足りないのでは、とか心配していたんですよホントすみません。イヤちょっと地味じゃん…? でも綺麗だった可愛かった凜々しかったけなげだった、外見も演技も問題なかった、そして熱いバスティーユでホントよかった…! 新公担当演出は中村Dこと真央先生で、1幕にまとめるために場面順を時系列に戻していたのもとても良きでした。
 アンドレがかせきょーで、これも本公演よりニンなのか断然良かった! あがちんとはまた違う味わいがあり、こっちの方が好みのアンドレだ、と感じる人も多かったのではないかしらん…
 ジェローデルの律希奏くんが゛美形で仰天! すんごい下級生ですよね? 期待! 台詞もしっかりしていたと思いました。ロザリーはばまいちゃん、ホント上手いし手堅い。もうもっと外れた役をやらせた方がいいかもね…そのジャンヌはせれーな、これも良かった上手かったパンチありました! 期待のえんりこはベルナールでしたが、なんか地味に感じたなー…がんばれー!
 希翠那音くんのルイ16世がノーブルで優しそうで印象的でした。専科さんや上級生がやりがちなお役ですが、アントワネットよりひとつ年上なだけなんだし、あまりおじさんに作ってもらいたくないと常々思っているので、新公はいいですよね…! プロバンス伯の絢斗しおんくん、メルシー伯の霧乃あさとくんもとても良かったです。こういう渋さ、手堅さも大事。でもおっさんになりすぎず華があって美しいのも良かったです。
 華純ちゃんすわんたんの悶絶失神はさすが華やかきらびやかでとても良き。みちちゃん、紗あらちゃんの夫人たちも麗しかったです。紗あらちゃんはすわんがやっていた侍女もきゃわわでした。令嬢たちはみなみん、星沢ちゃんがそれカワイイ。星沢ちゃんはみなみんの女官長もやっていて、綺麗でしごデキそうでした。そのみなみんは国境の農民の女もやっていました。あとこのふたりの小公女ね! 可愛すぎて目が潰れるかと思いましたよね!!
 デュガゾンの水月胡蝶くんも胡散臭くて印象的でした。王子は清羽美伶ちゃん、王女は祈菜さあやちゃんでラブリーでした。このあたりが次代の美少女枠なんですね? 覚えます!
 フィナーレがないってのもありますが、二時間弱にまとめられるんじゃん、というのもありますし、やはりまだまだ改善の余地はあると思うんですけれどねぇ、宝塚ベルばら…
 でもまあ生徒は出たいんだろうし、いい経験になるのでしょう。「『ベルばら』なら観たい」という一般人は残念ながらもう減っているのではないか、とは思いますけれどね。不景気でみんなお金ないし、生徒がひとり亡くなっている事態もあいかわらず全然改善されないままで、密かにずっと影響与えていますからね…一禾くんがいたら何を、どんなお芝居をしてくれただろう…とは思わないではいられません。引き続き劇団の改善に期待したいし、きいちゃんのご冥福をお祈りしますし、ご遺族が少しでも心穏やかになられんことを願っています。咲ちゃんの精一杯のご挨拶は、しみましたからね…!
 それが人生だ、さらば…なんて、私は簡単には言いたくないのでした。






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