四季劇場・秋、5月15日マチネ。
みっつの小さな物語を描くダンス・アクト。1999年オフ・ブロードウェイで初演、2000年トニー賞ベストミュージカル。演出・振付/スーザン・ストローマン、脚本/ジョン・ワイドマン。音楽はすべて既成曲。
PARTⅠSWINGINGは、1767年のフランスあたりの森の中。ピンクのドレスの若い貴婦人(井田安寿)が、恋人らしき男性(菊池正)とピクニック。ブランコを揺らすのは召し使い(松浦勇治)…
PARTⅡDID YOU MOVE?は、1954年のニューヨーク、クイーンズのイタリアン・レストラン。マフィアのボスらしき横暴な男性(明戸信吾)と、ブルーのドレスを着た内気なその妻(林下友美)が訪れる。有能なウェイター長(吉元和彦)が迎えるが…
PARTⅢCONTACTは1999年、現代のニューヨーク。地位も名誉も手に入れた広告代理店の若き重役マイケル・ワイリー(加藤敬二)の前に、黄色いドレスの女(高久舞)が現れ…
四季劇場には初めて来ました。「秋」の方はストレート・プレイ用なのでしょうか、オケピットがありませんでしたね。こじんまりしていていい劇場でした。
さてまず、最も短いPARTⅠ。いやー、下品でした、私的には。
音楽に乗った振付ではないからでしょうか? もちろんこの猥雑さ・エロティックさこそが、もとになったフラゴナールの絵画「ぶらんこ(原題は「THE SWING」)」の神髄なのでしょうけれど。
オチにはニヤリとさせられました。好きだな。しかしブランコなんて自分の足で漕ぐものなのに、わざわざ人に揺らせるたあ、この時代の貴族って本当になんにもしなかったんだねえ…
逆に、「日本人にとってはまだ他人事ではない」(パンフレットの香山リカのコラムより)PARTⅡは、私は「オチてないじゃん!」と思いました。
ワイドマンのインタビューによればPARTⅢとの対比を考えた上でのことのようですが、横暴な夫の心情まで理解しようとしてしまう日本人的感性からすると、たとえば妻が差し出した一輪の花を夫が背広のボタンホールに指して、でもにこりともせずに食べ続ける…なんてくらいにはしてもいいのでは、と思わないでもないのです。カーテンコールでブルードレスの女性が晴れやかに踊っていたのを見ても、私にはそれがこのシーンの妻の未来の幸福だとは思えなかったものですから。あとでパンフレットを読んでその意図に気づかされたので…
そして圧巻のPARTⅢ。
いやー、ダンスっていい!!の一言です。汗が飛び散って美しかったこと! そして、こちらは全然いやらしく感じませんでした。カップルがどんなに腰をこすり合わせて踊ろうと、黄色いドレスの女をダンスに誘う男たちが彼女の靴に自分の股間を押し付けようと、いたって「ポエティック」に見えました。何故だろう?
キー・マンとなるバーテン役がPARTⅡの夫役と同じ役者だなんて、最後の方になるまで気づきませんでした、ワタシ。PARTⅠで貴婦人を演じた女性がアンサンブルに入っていて、こちらはすぐわかりましたが。かわいいので(笑)。
黄色いドレスの女役に抜擢された高久舞は92年のローザンヌ国際バレエコンクールでエスポワール賞を受賞したというバレリーナで、さすがのスタイルと存在感。自身はパンフレットで
「マイケルを誘ったり、たぶらかすところをもっと大人っぽく表現したい」
と語っていますが、今のままの、あまり生っぽい感情のない、無機質なマネキンのようなただひたすら美しい女、という方がいいのではないかしらん。この女がマイケルの幻想の中にしかいない女なのか、本当にこういう事実があったのかどうかはぼかされているのですが(ワイズマンはインタビューで「これは夢だった」と言っていますが、パンフレットの場面解説では過去に実際にあった出来事としています。私はファンタジー説を取りますが)、マイケルが必要としていたもの、欲していたものとは、何か色っぽかったり艶っぽかったりするものではなくて、もっと単純で純粋でシンプルなものなのではないかしらん、と思うからです。
オチは読めてはいましたが、セットがハケて、幕がゆっくり下り出すまでのひとときは、本当に夢のようでした。美しかった。心から拍手してしまいましたよ。カーテンコールもすばらしかったです。速攻で買ったオリジナルサントラCDにはこのカーテンコールの曲「Moondance」だけが未収録でした。残念。
以下、やや余談。井田さんはユウコちゃん(元宝塚歌劇団月組娘役トップスター風花舞)に、高久さんはユリちゃん(同元星組星奈優里)にちょっと似て見えました。それから考えると、PARTⅡの林下さんは正直言って決して美人ではなかったので、宝塚歌劇の公演に比べて美人を見る楽しみには欠けるなあ、などと思ってしまいました。アンサンブルの婚約中のカップルの女性も、若く見えなかったもんなあ…おっさん臭い感想ですみません。
みっつの小さな物語を描くダンス・アクト。1999年オフ・ブロードウェイで初演、2000年トニー賞ベストミュージカル。演出・振付/スーザン・ストローマン、脚本/ジョン・ワイドマン。音楽はすべて既成曲。
PARTⅠSWINGINGは、1767年のフランスあたりの森の中。ピンクのドレスの若い貴婦人(井田安寿)が、恋人らしき男性(菊池正)とピクニック。ブランコを揺らすのは召し使い(松浦勇治)…
PARTⅡDID YOU MOVE?は、1954年のニューヨーク、クイーンズのイタリアン・レストラン。マフィアのボスらしき横暴な男性(明戸信吾)と、ブルーのドレスを着た内気なその妻(林下友美)が訪れる。有能なウェイター長(吉元和彦)が迎えるが…
PARTⅢCONTACTは1999年、現代のニューヨーク。地位も名誉も手に入れた広告代理店の若き重役マイケル・ワイリー(加藤敬二)の前に、黄色いドレスの女(高久舞)が現れ…
四季劇場には初めて来ました。「秋」の方はストレート・プレイ用なのでしょうか、オケピットがありませんでしたね。こじんまりしていていい劇場でした。
さてまず、最も短いPARTⅠ。いやー、下品でした、私的には。
音楽に乗った振付ではないからでしょうか? もちろんこの猥雑さ・エロティックさこそが、もとになったフラゴナールの絵画「ぶらんこ(原題は「THE SWING」)」の神髄なのでしょうけれど。
オチにはニヤリとさせられました。好きだな。しかしブランコなんて自分の足で漕ぐものなのに、わざわざ人に揺らせるたあ、この時代の貴族って本当になんにもしなかったんだねえ…
逆に、「日本人にとってはまだ他人事ではない」(パンフレットの香山リカのコラムより)PARTⅡは、私は「オチてないじゃん!」と思いました。
ワイドマンのインタビューによればPARTⅢとの対比を考えた上でのことのようですが、横暴な夫の心情まで理解しようとしてしまう日本人的感性からすると、たとえば妻が差し出した一輪の花を夫が背広のボタンホールに指して、でもにこりともせずに食べ続ける…なんてくらいにはしてもいいのでは、と思わないでもないのです。カーテンコールでブルードレスの女性が晴れやかに踊っていたのを見ても、私にはそれがこのシーンの妻の未来の幸福だとは思えなかったものですから。あとでパンフレットを読んでその意図に気づかされたので…
そして圧巻のPARTⅢ。
いやー、ダンスっていい!!の一言です。汗が飛び散って美しかったこと! そして、こちらは全然いやらしく感じませんでした。カップルがどんなに腰をこすり合わせて踊ろうと、黄色いドレスの女をダンスに誘う男たちが彼女の靴に自分の股間を押し付けようと、いたって「ポエティック」に見えました。何故だろう?
キー・マンとなるバーテン役がPARTⅡの夫役と同じ役者だなんて、最後の方になるまで気づきませんでした、ワタシ。PARTⅠで貴婦人を演じた女性がアンサンブルに入っていて、こちらはすぐわかりましたが。かわいいので(笑)。
黄色いドレスの女役に抜擢された高久舞は92年のローザンヌ国際バレエコンクールでエスポワール賞を受賞したというバレリーナで、さすがのスタイルと存在感。自身はパンフレットで
「マイケルを誘ったり、たぶらかすところをもっと大人っぽく表現したい」
と語っていますが、今のままの、あまり生っぽい感情のない、無機質なマネキンのようなただひたすら美しい女、という方がいいのではないかしらん。この女がマイケルの幻想の中にしかいない女なのか、本当にこういう事実があったのかどうかはぼかされているのですが(ワイズマンはインタビューで「これは夢だった」と言っていますが、パンフレットの場面解説では過去に実際にあった出来事としています。私はファンタジー説を取りますが)、マイケルが必要としていたもの、欲していたものとは、何か色っぽかったり艶っぽかったりするものではなくて、もっと単純で純粋でシンプルなものなのではないかしらん、と思うからです。
オチは読めてはいましたが、セットがハケて、幕がゆっくり下り出すまでのひとときは、本当に夢のようでした。美しかった。心から拍手してしまいましたよ。カーテンコールもすばらしかったです。速攻で買ったオリジナルサントラCDにはこのカーテンコールの曲「Moondance」だけが未収録でした。残念。
以下、やや余談。井田さんはユウコちゃん(元宝塚歌劇団月組娘役トップスター風花舞)に、高久さんはユリちゃん(同元星組星奈優里)にちょっと似て見えました。それから考えると、PARTⅡの林下さんは正直言って決して美人ではなかったので、宝塚歌劇の公演に比べて美人を見る楽しみには欠けるなあ、などと思ってしまいました。アンサンブルの婚約中のカップルの女性も、若く見えなかったもんなあ…おっさん臭い感想ですみません。