東京宝塚劇場、2001年9月4日マチネ、9月11日マチネ。
ミュージカル・ロマン『大海賊~復讐のカリブ海』の舞台は17世紀後半のカリブ海。スペイン領サンタ・カタリーナ島総督の息子エミリオ(紫吹淳)は、イギリス海賊の首領エドガー(湖月わたる)の襲撃により両親を失い、街を焼き払われ、単身海に逃げ込む。奇跡的にトルツカ島に流れ着いたエミリオは、その島を根城とするラッカム船長率いる海賊船アドベンチャー号の仲間となり、エドガーへの復讐を誓う。ある日イギリス商船ロイヤル・パシフィック号を襲ったエミリオたちは、船尾に隠れていた貴族の娘エレーヌ(映美くらら)と出会うが… 作・演出 中村暁、作曲 南安雄。
新トップコンビお披露目公演。「わかりやすくておもしろい」という評判を聞いて楽しみにしていたのですが、わかりやすいというよりは、単純で話が浅いというか…「ああなってこうなりました」というだけの物語で、キャラクターがどうとかドラマがどうとかいうお芝居ではありませんでした。
だいたいやたらと多いチャンバラシーンがイヤ。
こういういわゆる「戦闘シーン」は、たとえば『ベルサイヨのばら』のバスティーユ攻略とか『風と共に去りぬ』の南北戦争のシーンとかのような、様式的なダンスシーンに置き換えた方がいいんじゃないでしょうか。真面目に刀を振り回してチャンチャンバラバラやられても、迫力があるというよりは危なっかしいし怖くて見ていられません。観客の大部分を占める女性のほとんどは平和主義者というか、暴力的なものを厭うものだと思うのですが。ただし女海賊アン(西條三恵)の二刀流はかっこよかった…って、単に私が娘役ひいきなだけ?
宝塚歌劇団公式ホームページの掲示板に、私がその書き込みをいつも楽しみにしているある方がいて、今回もこの作品の問題点や改善案を実に過不足なく書き込んでいて、リンクをはろうと思っていたくらいなのですが、なんと10日付で掲示板がなくなってしまいました。ショック。プリントアウトしておけばよかった…過去ログ復活を祈るのみです。
エミリオは復讐のために自らも海賊となるのですが、観ていて私がまず思ったことは
「海賊同士ってそんなに交戦するかなあ…」
ということでした。ラッカム自身はエドガーに含むところがあるのだけれど、海賊として敵対しているのかどうかよくわからなかったし。海賊の敵は普通に考えれば官憲側なんでしょうから。
エミリオが海賊になってからも、本人たちも認めているとおり海賊行為は所詮罪悪であり、「行き着く先は絞首台」な訳で、もちろんアンチヒーローというものもあるのだけれど、主人公としては何かちゃんとした理屈が欲しいような…というのが私はずっと気になりました。殺人はしないったって人様の物を略奪するんだからね。
「金持ちは法で貧乏人から絞り取るが、オレたちは度胸と知恵で金持ちからかっさらう」
というのをさらに進めて、義賊であるとか外国勢力への反乱軍みたいなものだとかの「正当性」がつけられればなあ。でないと敵のエドガーと一緒になってしまうので。
うまく理屈がつけれれば、「総督の息子が海賊になり、海賊が成り上がって総督になる」という構図も効いてきておもしろかったのになあ。「何ものにも縛られず、自由で、ありのままの自分でいられる」という利点?はその次のこと、なんだよね。
それからやっぱり、はたしてエレーヌは死ぬ必要があったのか、というのも問題です。どうも、「死んだ方が悲しくてドラマチックでしょ」という安易な発想だとしか思えません。
お披露目公演なんだし、ハッピーエンドにしてあげてもよかったんじゃないでしょうか。
たとえばエドガーはエレーヌにだけは優しくて彼女のためも思って縁組みしたのであり、でもエミリオとエドガーの対決は避けられず、エミリオはエドガーを討ち果たすもののエレーヌはそれがショックで一度は別れ、新たな船出のときにすべてを捨ててやっぱり戻ってくる、とかでも十分盛り上がったと思うのですが。でもそれだと、私がけっこう気に入っているプロローグがふっ飛んじゃうんですが…
期せずして、最もよく描けてしまったキャラクターは実はこのエレーヌだったのではないでしょうか。いつか訪れるであろう恋を夢見る少女、兄の蛮行に心痛める優しい乙女、貴族としての責務をわきまえた聡明な娘、自由にあこがれる勇気ある女…
「(復讐を果たしても失ったものを)取り戻すことなどできない!」
と言えるエレーヌ。「海に行きたい」と言って、背負おうとするエミリオに頼らずに歩き出そうとしたエレーヌ。
抜擢された下級生にとりあえず無難な可憐なお姫様役を当てたのでしょうが、どうしてなかなか芯のある、いいヒロインになっていたと思います。エミクラちゃんは手首の感じが「やわやわ」というより「くたくた」していて、その嫋々とした感じが最後の死に際にピタリとはまっていて美しかったです。歌もまず危なげなく、全然及第点でしょう。この先が楽しみです。
一回り下の相手役を得て、リカちゃん(紫吹淳)もまた新たな一面を引き出されたのではないでしょうか。色悪っぽい濃い役をやることが多かった人ですが、元貴族の若様の海賊が人質となった貴族の娘を優しく幾分シャイに気遣い慈しむ様は、計算された演技というよりも素に近い感じに見えました。逆説的に、この船上での語らいのシーン(第14場)と総督府の中庭のシーン(第17場B)が最もお芝居になっていたのではないでしょうか。慈しみ合うトップコンビはそれだけで美しい…
グランド・ショー『ジャズマニア』はジャズのスタンダード・ナンバー一杯のショー。作・演出 三木章雄、作曲 高橋城。
私はショーはごった煮タイプのものの方が好みなので、最初に観たときはやや単調に思えてしまいました。専科特出が多くて目移りするのも疲れるんですよね。ガイチ(初風緑)くんの歌がたくさん聴けたのはうれしかったんですけれど。次はもっとシオミくん(汐美真帆)やユーヒくん(大空祐飛)をちゃんとじっくり観たいです。
二度目に観たときはだいたい流れがわかっていたので細かいことにも目がやれるし、席が4列目とよかったこともあって、わりと楽しんでしまったのですが。
しかし今回、私はかなり本格的にキリヤン(霧矢大夢)に惚れてしまったかもしれません。聞き耳はもちろん、ピアニストもロケットボーイもすばらしかったし、ストーミー・ダンサーでも踊りが一番綺麗だったと思うんです。上背がないのがネックではあるんですが、頭は小さくてスタイルはいいんですよね。古典的な魅力ある大スターに化ける期待を抱いてしまいました。
それにしても、リカちゃんの喉が心配です。一度公演が始まってしまうと、喉を休めることなど叶わないからなあ。痛むところをかばって正しくない場所で声を響かせようとしてもいるようなので、これをあんまり続けると歌が下手になってしまいそうで…録音口パクでも仕方がないと思うんだけどなあ。残りの公演、がんばってしのいでほしいものです。
4日には次期星組娘役トップスター渚あきが、11日には先代月組トップスター真琴つばさが観劇にいらしていたのに遭遇しました。マミちゃんは拍手に迎えられても、新生月組に遠慮したのかサングラス姿で終始うつむいていましたが、終演後に退席するさいにはサングラスを取って会場に軽く手を振ってくれました。うれしかったです♪
ミュージカル・ロマン『大海賊~復讐のカリブ海』の舞台は17世紀後半のカリブ海。スペイン領サンタ・カタリーナ島総督の息子エミリオ(紫吹淳)は、イギリス海賊の首領エドガー(湖月わたる)の襲撃により両親を失い、街を焼き払われ、単身海に逃げ込む。奇跡的にトルツカ島に流れ着いたエミリオは、その島を根城とするラッカム船長率いる海賊船アドベンチャー号の仲間となり、エドガーへの復讐を誓う。ある日イギリス商船ロイヤル・パシフィック号を襲ったエミリオたちは、船尾に隠れていた貴族の娘エレーヌ(映美くらら)と出会うが… 作・演出 中村暁、作曲 南安雄。
新トップコンビお披露目公演。「わかりやすくておもしろい」という評判を聞いて楽しみにしていたのですが、わかりやすいというよりは、単純で話が浅いというか…「ああなってこうなりました」というだけの物語で、キャラクターがどうとかドラマがどうとかいうお芝居ではありませんでした。
だいたいやたらと多いチャンバラシーンがイヤ。
こういういわゆる「戦闘シーン」は、たとえば『ベルサイヨのばら』のバスティーユ攻略とか『風と共に去りぬ』の南北戦争のシーンとかのような、様式的なダンスシーンに置き換えた方がいいんじゃないでしょうか。真面目に刀を振り回してチャンチャンバラバラやられても、迫力があるというよりは危なっかしいし怖くて見ていられません。観客の大部分を占める女性のほとんどは平和主義者というか、暴力的なものを厭うものだと思うのですが。ただし女海賊アン(西條三恵)の二刀流はかっこよかった…って、単に私が娘役ひいきなだけ?
宝塚歌劇団公式ホームページの掲示板に、私がその書き込みをいつも楽しみにしているある方がいて、今回もこの作品の問題点や改善案を実に過不足なく書き込んでいて、リンクをはろうと思っていたくらいなのですが、なんと10日付で掲示板がなくなってしまいました。ショック。プリントアウトしておけばよかった…過去ログ復活を祈るのみです。
エミリオは復讐のために自らも海賊となるのですが、観ていて私がまず思ったことは
「海賊同士ってそんなに交戦するかなあ…」
ということでした。ラッカム自身はエドガーに含むところがあるのだけれど、海賊として敵対しているのかどうかよくわからなかったし。海賊の敵は普通に考えれば官憲側なんでしょうから。
エミリオが海賊になってからも、本人たちも認めているとおり海賊行為は所詮罪悪であり、「行き着く先は絞首台」な訳で、もちろんアンチヒーローというものもあるのだけれど、主人公としては何かちゃんとした理屈が欲しいような…というのが私はずっと気になりました。殺人はしないったって人様の物を略奪するんだからね。
「金持ちは法で貧乏人から絞り取るが、オレたちは度胸と知恵で金持ちからかっさらう」
というのをさらに進めて、義賊であるとか外国勢力への反乱軍みたいなものだとかの「正当性」がつけられればなあ。でないと敵のエドガーと一緒になってしまうので。
うまく理屈がつけれれば、「総督の息子が海賊になり、海賊が成り上がって総督になる」という構図も効いてきておもしろかったのになあ。「何ものにも縛られず、自由で、ありのままの自分でいられる」という利点?はその次のこと、なんだよね。
それからやっぱり、はたしてエレーヌは死ぬ必要があったのか、というのも問題です。どうも、「死んだ方が悲しくてドラマチックでしょ」という安易な発想だとしか思えません。
お披露目公演なんだし、ハッピーエンドにしてあげてもよかったんじゃないでしょうか。
たとえばエドガーはエレーヌにだけは優しくて彼女のためも思って縁組みしたのであり、でもエミリオとエドガーの対決は避けられず、エミリオはエドガーを討ち果たすもののエレーヌはそれがショックで一度は別れ、新たな船出のときにすべてを捨ててやっぱり戻ってくる、とかでも十分盛り上がったと思うのですが。でもそれだと、私がけっこう気に入っているプロローグがふっ飛んじゃうんですが…
期せずして、最もよく描けてしまったキャラクターは実はこのエレーヌだったのではないでしょうか。いつか訪れるであろう恋を夢見る少女、兄の蛮行に心痛める優しい乙女、貴族としての責務をわきまえた聡明な娘、自由にあこがれる勇気ある女…
「(復讐を果たしても失ったものを)取り戻すことなどできない!」
と言えるエレーヌ。「海に行きたい」と言って、背負おうとするエミリオに頼らずに歩き出そうとしたエレーヌ。
抜擢された下級生にとりあえず無難な可憐なお姫様役を当てたのでしょうが、どうしてなかなか芯のある、いいヒロインになっていたと思います。エミクラちゃんは手首の感じが「やわやわ」というより「くたくた」していて、その嫋々とした感じが最後の死に際にピタリとはまっていて美しかったです。歌もまず危なげなく、全然及第点でしょう。この先が楽しみです。
一回り下の相手役を得て、リカちゃん(紫吹淳)もまた新たな一面を引き出されたのではないでしょうか。色悪っぽい濃い役をやることが多かった人ですが、元貴族の若様の海賊が人質となった貴族の娘を優しく幾分シャイに気遣い慈しむ様は、計算された演技というよりも素に近い感じに見えました。逆説的に、この船上での語らいのシーン(第14場)と総督府の中庭のシーン(第17場B)が最もお芝居になっていたのではないでしょうか。慈しみ合うトップコンビはそれだけで美しい…
グランド・ショー『ジャズマニア』はジャズのスタンダード・ナンバー一杯のショー。作・演出 三木章雄、作曲 高橋城。
私はショーはごった煮タイプのものの方が好みなので、最初に観たときはやや単調に思えてしまいました。専科特出が多くて目移りするのも疲れるんですよね。ガイチ(初風緑)くんの歌がたくさん聴けたのはうれしかったんですけれど。次はもっとシオミくん(汐美真帆)やユーヒくん(大空祐飛)をちゃんとじっくり観たいです。
二度目に観たときはだいたい流れがわかっていたので細かいことにも目がやれるし、席が4列目とよかったこともあって、わりと楽しんでしまったのですが。
しかし今回、私はかなり本格的にキリヤン(霧矢大夢)に惚れてしまったかもしれません。聞き耳はもちろん、ピアニストもロケットボーイもすばらしかったし、ストーミー・ダンサーでも踊りが一番綺麗だったと思うんです。上背がないのがネックではあるんですが、頭は小さくてスタイルはいいんですよね。古典的な魅力ある大スターに化ける期待を抱いてしまいました。
それにしても、リカちゃんの喉が心配です。一度公演が始まってしまうと、喉を休めることなど叶わないからなあ。痛むところをかばって正しくない場所で声を響かせようとしてもいるようなので、これをあんまり続けると歌が下手になってしまいそうで…録音口パクでも仕方がないと思うんだけどなあ。残りの公演、がんばってしのいでほしいものです。
4日には次期星組娘役トップスター渚あきが、11日には先代月組トップスター真琴つばさが観劇にいらしていたのに遭遇しました。マミちゃんは拍手に迎えられても、新生月組に遠慮したのかサングラス姿で終始うつむいていましたが、終演後に退席するさいにはサングラスを取って会場に軽く手を振ってくれました。うれしかったです♪