駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇月組東京特別公演『SLAPSTICK』

2009年11月27日 | 観劇記/タイトルさ行
 日本青年館、2002年7月5日マチネ。
 時はハリウッド草創期。ケベック生まれのミコール・シノット(霧矢大夢)はオペラ歌手を夢見てニューヨークへやってきた。マック・セネットと改名してバーレスクの端役として働くうちに、コメディ映画の魅力に取り付かれ、バイオグラフ社に押しかけて映画制作を学び始める。そこへ、モデルをクビになったおてんば娘のメイベル・ノーマンド(紫城るい)がコメディ映画女優になりたいと志願してくる。当時、コメディ映画はヨーロッパが主流で、アメリカでは下品なものとされていたが、セネットはアクション満載のドタバタ喜劇、スラップスティック・コメディをアメリカで撮りたいと夢見るようになり…作・演出/小柳奈穂子、作曲/吉田優子、振付/御織ゆみ乃。
 …新人のデビュー作・演出とはいえ、久しぶりに痩せてスカスカで何もない舞台を観てしまいました。
 一幕は「ああしてこうなりました」的なお話があるだけでキャラクターもドラマもナイ。
 二幕に入ると一転してシリアスというか深刻ぶった展開になって、全然ついていけません。馬鹿馬鹿しくておもしろおかしい映画が作られる一方で、愛も憎しみも戦争も犯罪もある人生があって…というようなことがやりたかったんだとしたら、あまりにも力不足なのでは?
 逆に出演者は完全に役不足。あの脚本ではどうにもならないでしょう。お疲れさまなことです。
 マック・セネットという人は20世紀初頭の実在の映画監督だそうですが、作者はこの人の人生の何にどういうヒントを得たのでしょうね。史実をそのままやるんだったら伝記を読んだ方がよっぽどおもしろい訳で、舞台で、しかも宝塚歌劇でやるからには、もっと何かちゃんとした焦点が必要なはずなんですが。その焦点に絞って、題材だけはもらって、架空のキャラクターたちをきちんと作ってあげた方がよっぽどいいんじゃないでしょうか…『JFK』ですらなかなかにツラい、と思った私なので、厳しすぎる意見なのかもしれませんが…
 青年の理想、奮闘、青春、成功、そして失恋、転落…みたいなものを描きたかったのなら、それに焦点を絞って、まずはちゃんとラブコメディをやらせるべきでした。結ばれずに終わる、でも戦友、みたいな男女関係を描きたかったのだとしたら、それはなかなかおもしろい視点だと個人的には思いますが、もっといろいろ整理・肉付けしないとね。
 史実をそのまま丸投げしても誰も感動しません。台詞で説明しようとしていますが説明になっていないし、そこをこそドラマで見せてくれないと感動なんかできないよ、というくだりを説明台詞で流してしまっていると思います。セネットがどう成功したのかよくわからないし、セネットとメイベルが恋愛しているのかもよくわからないし、誰がどう悪者なのかとかよくわからないし、メイベルがゴールドウィンのところへ移籍する理由もよくわからないし、メイベルとテイラーとの関係もなんなんだか全然わからないし、ドラッグがどうとかも全然わからないし、そもそもモデルをクビになる経緯もよくわからない。この「わからない」は、「判然としない/意味が理解できない/共感できない」、全部です。
 キリヤンはホント危なげがないなあとか、娘役に転向したヒロインは健闘していたなあとか、月船さららちゃんってタモさん(花組先々代トップスター愛華みれ)にそっくりに見えるときがあるなあとか、城咲あいちゃんがかわいかったなあとか、いろいろ思いましたけれど…とにかくまず、いい物語が観たかったです。
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牧阿佐美バレエ団『白鳥の湖』

2009年11月27日 | 観劇記/タイトルは行
 ゆうぽうと簡易保険ホール、2002年6月21日ソワレ。
 晩夏の午後、城の庭。今日は王子ジーグフリード(ベン・ヒューズ)の21歳の誕生日。友人たちや村の者たちがお祝いに集う中、王子の母である王妃は、花嫁となる女性を選ぶよう王子に告げる。だが王子はまだ友人たちと戯れる方が楽しいようで、白鳥狩りをしようと夜の森に出かけていく。湖のほとりでひとりになった王子は、一羽の白鳥が美しい娘に姿を変えるのを見て驚く。彼女はオデット姫(草刈民代)と名乗った…演出・振付/テリー・ウエストモーランド(プティパ・イワノフ版による)、作曲/P・I・チャイコフスキー、芸術監督/三谷恭三、管弦楽/ロイヤルメトロポリタン管弦楽団。
 私が幼稚園から中学一年までずっと同じクラスだった男の子で、何やら高名な音楽家の遠戚にあたり、自身も音楽一家に育ってピアノかなんか習っていた子がいたのですが、何故だか理由は覚えていないのですが小学校一、二年生のころにその彼から『白鳥の湖』のレコードをもらって、それが私が最初に持ったレコードのうちの一枚だったということがありました。チャイコフスキーの音楽のハイライト版に、物語のあらすじのナレーションがかぶさるという、子供向けのお話レコードでした。それ以来、私はずっとこの音楽を愛してきて、今でも一番好きなバレエの演目なのです。私はミーハー・バレエファンなので、有名海外バレエ団の来日公演にばかりいそいそと出かけているようなていたらくで、今回初めて日本のバレエ団の公演を観ました。
 おそらくは振付がよくできているのでしょうが、第一幕、王子の友人たちや村娘たちが音楽によく乗って踊る美しいパにみとれて大満足だったのですが、そこへ登場した外国人ダンサーによる王子は…王子に見えませんでした。日本人とは明らかにちがうプロポーションがおっさんのようで…おでこも後退していて御髪も薄かったし…とても成人したばかりの若者とは…ごにょごにょ。
 第二幕、湖のほとりで踊る白鳥たちはなかなか揃っていて美しく感じましたが、やはりまだまだ足が短い…チュチュの位置が見慣れたところよりだいぶ低い感じがしました。踊りは端整で良かったんですけれどね。
 映画『Shall Weダンス?』でしか私は知らないヒロインは、黒鳥オディールの方が生き生きしていてよかった気がしました。もっと、本当に白鳥のようにしか見えないはかなげなオデットを見たことがあるので…でも、ロットバルト男爵が翻す黒いマントの陰からオディールがパッと現れたところは、本当にかっこよかったなあ。
 第三幕の民族舞踊はどれも大好き! 良かったです。私は音楽がどうしても頭に入ってしまっているので、バリエーションやコーダなどパート分けされて間にレヴェランスが入って音楽が中断されるのがどうにも好きじゃないのですが、黒鳥のパ・ド・ドゥはわりとおっかぶせ気味にほぼ続けてやってくれたのでうれしかったです。その方があそこは盛り上がると思うし。
 第四幕は、わかっていても感動してしまうのですが…あのスワンボートはどうだろう…ヘンじゃない…?
 ともあれ、大満足した三時間でした。
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遊◎機械/全自動シアター『ピッチフォーク・ディズニー』

2009年11月27日 | 観劇記/タイトルは行
 シアタートラム、2002年6月11日ソワレ。
 28歳の青年プレスリー・ストレイ(萩原聖人)はある日、両親亡き後の10年間を双子の妹ヘイリー(宝生舞)と暮らしてきた部屋に、体の具合の悪そうなコスモ・ディズニー(山本耕史)を招き入れる。コスモはをやがて仕事仲間のピッチフォーク・カバリエ(吉田メタル)を連れてくるが…作/フィリップ・リドリー、演出/白井晃、舞台美術/松井るみ、訳/小宮山智鶴子。1991年ロンドン初演。
 えーと…すみません、よくわかりませんでした。
 つまるところおそらくは、自分の持つ小宇宙以外の外の世界を、限りなく恐れている子供の恐怖、を描いているのだと思うのですけれど…筋も結論もないような舞台なので。セットは印象的でした。
 ちなみにタイトルは、プレスリーが恐れている、連続児童殺害犯のあだ名、とでもいうのかな。その男は悪魔が持つような大きな三つ又のフォークで子供を刺し殺し、死体のそばにおもちゃの人形を捧げて去っていくのだそうです。
 パンフレットのデザインが美しい。あと、こじんまりしたいい劇場でした。椅子は固かったけど。
 ところで、遊◎機械/全自動シアターは秋の公演が最終公演となるそうな。残念です。
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