小学館プチコミックス萩尾望都選集Ⅱ8
表題作は、言わずと知れた名作『トーマの心臓』の外伝。ラストシーンの光差す中庭が美しくて胸が締めつけられます。本編より幼いユーリがまた素敵。
この、狩人を訪れる神様の話は本当にあるのでしょうか。創作だとしてもそうじゃなかったとしても、この作家の海外の文化に対するセンスには驚かされます。
つまり、名前がカタカナなだけでメンタリティは日本人丸出しみたいな外国の漫画とかを描いたりしないところをすごいとずっと思っていたのです。教会に真面目に通う人がずいぶんと少なくなった現代でも、こんなふうに神様の話が日常に根づいている感じとかを自然に汲み取って描いてしまえるところがすごいです。
冒頭の飼い犬のエピソードもそうです。外国小説をたくさん読んでいると、欧米ではペットは個人が飼うもので、日本の、家族がみんなで家族の一員にしているというのとはニュアンスが違うことに気づくと思います。「うちの犬」ではなくて「父の犬」「私の猫」なんですね。そんなところもちゃんと出ています。
外国をきちんと舞台にした、外国風の考え方をする、外国人の物語を、きちんと描いているのです。そのすごさと、この作品の良さとはそう直截には関係していませんが、一応書いておきます。