小学館スピリッツとりあたまコミックス全3巻。
ぼくのすんでいるところは山と海しかないしずかな町で、はしに行くとどんどん貧乏になる、そのいちばんはしっこがぼくの家だ…今は亡き文芸春秋漫画賞受賞。
2003年春の映画化に伴い全一冊になったコミックスも出たのですが、一色に落ちていたので、やはりもともとの三巻本を買いました。
「絵本のような」この色彩の美しさは、そのほとんどがアシスタントと装丁家の手になるものだとしても、やはりこの作品の大きな魅力だと思うからです。
最初に読んだときも衝撃を受けましたが、買って、読み返してみて、やっぱり言葉になりません。でもとにかくずっとずっと読んでいきたい作品です。
好きはねえ、毎日ゆうとかんとかんじんな時に出てこんなるから。つらいけど、人はね、神様がゆるしてくれるまで、何があっても生きなくちゃいけない。そのうちええ天気で空が高うて、風がように通る、死ぬのにちょうどええ日がくる。それまでしんどい。誰か知らないだろうか、一番大好きな人をなぐさめる方法を。あんたが笑てくれたらワシ一生シアワセ。
ぼくのすんでいるところは、山と海しかないしずかな町で、はしに行くとどんどん貧乏になる。そのいちばんはしっこがぼくの家だ…「ビッグコミックスピリッツ」の巻末に毎週1話2ページで連載された傑作。
珠玉の、という言葉は…あたらないんだろうなあ。なんと評していいかわからない、言葉を失ってしまう名作です。
ある人の言葉によれば、この作品は雑誌掲載時の、あの当時のあの雑誌であの位置に載ってるのを毎週読んでいた時空間の中でこそ真の輝きを見せた、ということですが、薄くて愛らしい寸法で天地や小口がきれいな色のグラデーションになった美しい造本のこのコミックスもまた、愛しくすばらしいと思います。
やや露悪的というか、ブラックジョークというかギャグというかなのは最初の4話だけで、あとはもう…すみません、やっぱり言葉になりません。
女性作家の手になるものらしく非常に美しい女性礼賛(これは母性礼賛とだけは言えないでしょう)があふれている作品ですが、1巻の後ろの方の鉄じいの台詞に、私は自分の父親をあらためて尊敬しましたよ。
「新聞が読めて、/九九ができればええ。」。
私の父は私を大学まで出してくれましたが、その教育哲学は
「新聞が読めておつりの計算ができればいい」
でした。掛け算ですらなかったんだよ、引き算で十分だったんだよ…
いくぶんかは装丁家の手によるものなのかもしれませんが、非常に着彩のセンスが優れています。これも作家の故郷の海と山が育てたものなのでしょうね。各巻の口絵の、わんこの家族が増えていくのがすごく好き。真ん丸の目とギザギザの歯なの。でも表情がちゃんとある。すごい。
ぼくの町が見えなくなって…二太、そんな笑顔で笑っちゃダメなのに。でも、これは笑うときなのだ。そんな中にも幸せはあるのかしら。でも神様が許してくれるまで、生きなくちゃいけないから。誰かに抱きしめてもらったことがあり、抱きしめてくれた誰かがいて、いつか誰かを抱きしめることがあるかもしれないから…アフリカのサバンナじゃなくても、ニューヨークのハーレムじゃなくても、砂漠の紛争地帯じゃなくても、生きていくことはきっと幸せで、しんどい。
ぼくのすんでいるところは山と海しかないしずかな町で、はしに行くとどんどん貧乏になる、そのいちばんはしっこがぼくの家だ…今は亡き文芸春秋漫画賞受賞。
2003年春の映画化に伴い全一冊になったコミックスも出たのですが、一色に落ちていたので、やはりもともとの三巻本を買いました。
「絵本のような」この色彩の美しさは、そのほとんどがアシスタントと装丁家の手になるものだとしても、やはりこの作品の大きな魅力だと思うからです。
最初に読んだときも衝撃を受けましたが、買って、読み返してみて、やっぱり言葉になりません。でもとにかくずっとずっと読んでいきたい作品です。
好きはねえ、毎日ゆうとかんとかんじんな時に出てこんなるから。つらいけど、人はね、神様がゆるしてくれるまで、何があっても生きなくちゃいけない。そのうちええ天気で空が高うて、風がように通る、死ぬのにちょうどええ日がくる。それまでしんどい。誰か知らないだろうか、一番大好きな人をなぐさめる方法を。あんたが笑てくれたらワシ一生シアワセ。
ぼくのすんでいるところは、山と海しかないしずかな町で、はしに行くとどんどん貧乏になる。そのいちばんはしっこがぼくの家だ…「ビッグコミックスピリッツ」の巻末に毎週1話2ページで連載された傑作。
珠玉の、という言葉は…あたらないんだろうなあ。なんと評していいかわからない、言葉を失ってしまう名作です。
ある人の言葉によれば、この作品は雑誌掲載時の、あの当時のあの雑誌であの位置に載ってるのを毎週読んでいた時空間の中でこそ真の輝きを見せた、ということですが、薄くて愛らしい寸法で天地や小口がきれいな色のグラデーションになった美しい造本のこのコミックスもまた、愛しくすばらしいと思います。
やや露悪的というか、ブラックジョークというかギャグというかなのは最初の4話だけで、あとはもう…すみません、やっぱり言葉になりません。
女性作家の手になるものらしく非常に美しい女性礼賛(これは母性礼賛とだけは言えないでしょう)があふれている作品ですが、1巻の後ろの方の鉄じいの台詞に、私は自分の父親をあらためて尊敬しましたよ。
「新聞が読めて、/九九ができればええ。」。
私の父は私を大学まで出してくれましたが、その教育哲学は
「新聞が読めておつりの計算ができればいい」
でした。掛け算ですらなかったんだよ、引き算で十分だったんだよ…
いくぶんかは装丁家の手によるものなのかもしれませんが、非常に着彩のセンスが優れています。これも作家の故郷の海と山が育てたものなのでしょうね。各巻の口絵の、わんこの家族が増えていくのがすごく好き。真ん丸の目とギザギザの歯なの。でも表情がちゃんとある。すごい。
ぼくの町が見えなくなって…二太、そんな笑顔で笑っちゃダメなのに。でも、これは笑うときなのだ。そんな中にも幸せはあるのかしら。でも神様が許してくれるまで、生きなくちゃいけないから。誰かに抱きしめてもらったことがあり、抱きしめてくれた誰かがいて、いつか誰かを抱きしめることがあるかもしれないから…アフリカのサバンナじゃなくても、ニューヨークのハーレムじゃなくても、砂漠の紛争地帯じゃなくても、生きていくことはきっと幸せで、しんどい。