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「駿河安蘇備 上」を読む 129

静居寺の名残りのボタン(シャクヤクか)

静居寺説夢堂(輪蔵)
説夢堂(本堂裏手)から見た静居寺本堂

ゴールデンウイークも終り雨も上がったので、人出を避けていたが、近くの静居寺にボタンを見に行こうと出かけた。見頃が五月上旬とあったので、危惧していたが、見事にボタンの花は終わっていた。

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「駿河安蘇備」の上巻の解読を続ける。

光行紀行 少し打ち登るようなる奥より、大井川を見渡し
たれば、遥々と広き河原の内に、一筋ならず流れ
別れたる河瀬ども、面白く覚ゆれば、かの紅葉乱れて
流れけん、龍田川ならねども、しばし安らわる。
  日数ふる 旅のあわれは 大井河
    渡らぬ水も 深き色かな

丙辰紀行 大堰河は駿河と遠江との堺なり。明日香川
※ 丙辰紀行(へいしんきこう)➜ 林道春(羅山)著。元和二年(1616)の紀行。
ならねど、霖雨
(ながあめ)降れば、渕瀬変わること度々なれば、東の
山の岸を流れて、島田の駅、河原の中尓にあることもあり。
西の方に流れて、金谷の山に添う事もあり。また一筋
の大河となりて、大木、沙石を流す事もあり。数多の枝流れ
となりて、一里ばかりが間に分かるもあり。されば古
(いにし)えより、
徒杠
(とこう)輿梁(よりょう)も成り難き故に尓、往来の人馬、河の瀬を知ら
※ 徒杠(とこう)➜ 徒歩でわたる橋。
※ 輿梁(よりょう)➜ 車の通る橋。

ざれば、金谷に待つもあり、島田に留まるもあり、渉りかゝりて
溺るゝもあり。辛
(かろ)うじて向いの岸に至るもあり。島田金谷の
民、己が家は漂い流るれども、旅客の嚢
(ふくろ)をむさぼる故に、
洪水を喜ぶ。売炭翁が単衣にして、年の寒きを待つが
※ 売炭翁(ばいたんおう)➜ 唐の白居易の詩の題名。炭焼きのおじいさんは、少しでも多くの炭が売れることを願って、もっと寒くなれと祈る。
ごとし。河水の家を流し、田を損なう故に、防鴨河使
葛野河使
を置れし昔のことも、只今思い出しざらんや。
※ 防鴨河使(ぼうかし)➜ 平安初期に設置された令外の官で、京都の浸水を防ぐため、鴨川の堤防修築の事をつかさどった官司。
※ 防葛野河使(ぼうかどのがわし)➜ 令外の官で、京都の葛野河(桂川)の管理をつかさどった。

  尋常、掲厲(けいれい)にして、心、腰を過ぐ
  馬を叱し、奴(やっこ)を呼びて、魂、鎖(つなが)んと欲す
  来徃就中
(なかんずく)何処が苦しき
  舟無く、筏無くして、復た橋無し
  海道奔流、第一の川
  籃輿(らんよ)(か)き載(の)担夫(たんふ)の肩
  洛西の大井、同根といえども
  これは桴(いかだ)を看(み)ず、かれは船有り
※ 掲厲(けいれい)➜(「掲」も「厲」も着物をたくしあげて川を渡るの意)川を歩いて渡ること。
※ 来徃(らいおう)➜ 行ったり来たりすること。
※ 就中(なかんずく)➜ その中でも。とりわけ。
※ 籃輿(らんよ)➜ 簡単な竹作りの 駕籠 かご。
※ 担夫(たんふ)➜ 荷物をになう人夫のこと。
(つづく)
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