河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2281- 武満、弦レク、マーラー6番、パーヴォ・ヤルヴィ、N響、2017.2.23

2017-02-23 23:43:44 | コンサート

2017年2月23日(木) 3:00pm みなとみらいホール

武満徹  弦楽のためのレクイエム 8′

マーラー  交響曲第6番イ短調  23′14′14+30′

パーヴォ・ヤルヴィ 指揮 NHK交響楽団


2月末から3月にかけて行うヨーロッパツアーのメインプログラムの予行練習。もう一つのショスタコーヴィッチ10番は定期で済んでいる。ちょっと関係ないがN響はNHKホールなんかでやるよりも今日のみなとみらいのほうが実にいいサウンド具合。こっちに本拠地移したらどうかしら。早く専用ホールを作って、今のNHKホールは全日本吹コン用に献上すればいいと思う。

マーラーの6番はパーフェクトなソナタ形式を実感させる手応え十分なもの。圧倒的な完成度のフォルムとハイレヴェルの技量連中による高濃度な圧巻の演奏。
第1楽章は短い序奏と続く激しい提示部、リピートありの演奏。ロングな提示部なのだが全体バランスを俯瞰するとリピートは妥当。何しろ30分かかる終楽章、序奏だけで5分、こんな具合だから全体のバランスのことを頭の中にいれつつ進行。
流れるようなウィンドのハーモニーがバランスしていて美しい。そして冴えるブラスセクション。各パートのプリンシパル、脇も堅い。横に広がった怒涛のようなラッパ陣、その圧力を押しとどめる弦はやや硬めで明るい。このホールの特色が出ているのかもしれない。クリスタルのような響きがホールに鳴り渡る。
コーダで明るく転じたパッセージはエンディング寸前、パーヴォはテンポをグッと落とし終楽章のモットーを強調。散らばるウィンド、ブラスがモットーを明瞭に響かせつつフィニッシュ。結局パーヴォがテンポを緩めたのは明らかに、ここだけ。この意味は深いと感じた。ソナタの表現と伝播は全般におよぶと、この1楽章で早々と納得のお見事な棒となりました。

この疾風怒濤のエネルギッシュな第1楽章を押しとどめることが出来るのは、アンダンテ・モデラートではなくてスケルツォ。押しとどめるというよりあのアレグロの波に耐えるのはスケルツォでしかない。逆にしてしまうとエネルギーを吸収して鎮めるには力不足となる。生の実感は何度聴いても変わらない。
このスケルツォ、トリオを聴くと形式はもはや古典に舞い戻る。3回あるスケルツォ、演奏が濃い。表現の変化が面白いようにきまるし、トリオの小規模アンサンブルの美しさ。スペシャルな技量の演奏、シャープで雲一つない明晰なプレイで、スケルツォ楽章の面白みを十分に味わう。結構な長さの楽章。
次のアンダンテ・モデラートはホルンのソロに見られる妙に不安定で線が美しい色々とハイブリットした内容の旋律が恐いほど良くきまる。秀逸なプリンシパルのプレイ。
作曲家、ちょっと斜めに構えた楽章だと思う。安定の形式感、妙に不安定な旋律。古典と試みのようなものが綯い交ぜになっている。美しさの限界を求めているわけではないので、スケルツォ楽章と同じ時間配分は、正しいものと強く実感。ヤルヴィの感性が光りますね。

そのまま終楽章へ。前楽章の香りを残しつつ、音が上下に跳ぶ弦、ハープのグリサンド、ブラスによる同一旋律の咆哮。そして低音ブラスを中心としたコラール風味満載の味わい深い吹奏。長い序奏です。主部へ入るとウィンド+ホルンによるベルアップが細やかに頻発。音圧と色合いが都度変わる。
各主題の進行は、パーヴォ、冷静です。古典の極致を味わい尽くす。サウンドは強大なり。N響の圧倒的なスキルが支配するなか、ハンマー。そしてパーカスがモットーを叩き、ブラスの散らばるハーモニーが、1楽章にかすかに聴こえたよねと全体フレームを感じさせる。パーヴォさんお見事ソナタフォルムの表現。力感と全体俯瞰がオケの技でさらに光りました。
3回盛り上がり。途中、序奏の回帰のところ、音がここでも上下に跳びますがホルンをはじめとするブラスセクションの吹奏が見事でした。こういったあたりのことを間に挟みつつ3度のエスカレーションまでの束タイムロングがほぼ同じ。きっちりとソナタしています。構造に光をあて完全な形式把握、ほれぼれするし、唖然。ヤルヴィマジック炸裂ですな。
まぁ、ここまで構造を締めてくれると言葉が出ない。絞り切ったタオルっていう感じ。
パーフェクトソナタエクスプレッション、前日の大阪フィルに続き、今日もヘトヘトになりました。
圧倒的な力感、技量、表現。構成感。全部パーフェクト。ありがとうございました。ヨーロッパツアー撃破の連続でしょう。

前半の弦レク。1957年の作だから60年も経つのか。内容も古典、もはやクラシックなものですね。どのくらい演奏されてきたことか。
パーヴォの棒はここでは持って無かったですので腕は、マーラー6番とまるで違うもの。意識されたものと思います。
テンポの出し入れがかなり濃厚、ゆれるゆれる。何階層もありそうな弦の多層な響きと流れが艶めかしい。このストリームはほぼシェーンベルク状態で、ハイスキル集団の弦グループが魅せるキラキラとそして深く切り込める色あいの音の束、確かにこのレベルでないと出せないサウンドですな。ヨーロッパ的なオーケストラの響きと断言出来ますね。
シェーンベルクが息を吹き返したような作品、演奏共々うなるしかない。うーむ、凄いもんだ。

ということで、休憩無し正解のド演奏会。満足満足。
ありがとうございました。
おわり