河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2279- 浜野与志男 ピアノ・リサイタル、2017.2.21

2017-02-21 23:44:22 | リサイタル

2017年2月21日(火) 7:00pm リサイタルホール、オペラシティ

J.S.バッハ フランス風序曲BWV831 21′

ペルト アリーナのために (1976) 3′
+ (連続演奏)
スカルラッティ ソナタロ短調K27  3′

シチェドリン/プレトニョフ編 バレエ音楽≪アンナ・カレーニナ≫ (1971) から
  プロローグ  4′
  競馬場experts  3′

Int

網守将平  M7ATION/Ver.13   9′

シルヴェストロフ ピアノ・ソナタ第3番 (1979)  14′

グバイドゥーリナ  シャコンヌ (1965)  9′

(encore)
エリッキ=スヴェン・トゥール  ピアノ・ソナタより第3楽章 5′

ピアノ、浜野与志男


浜野さんは以前一度聴いてます。2014年にラザレフ&日フィルの伴奏で弾いたスクリャービンのピアノコンチェルト。あれは見事な演奏でした。

1606- スクリャービンPC、浜野与志男、レニングラード、ラザレフ、日フィル2014.3.15

聴くのは今回2度目、今日はリサイタル。このリサイタルホールの企画もの。B2Cの一環。バッハからコンテンポラリーということで、バッハと現代曲が入っています。
プログラムは7作曲家7作品で、うち存命する作曲家の作品が5つとなっています。

1曲目は長いバッハの曲。長いと言いつつ軽快に20分ほどであっという間の出来事。
きれいな音です。鍵盤のよく見える席。指を強く押し込んでいるようには見えない。少し浅めに見える。これで均質なサウンドを作り上げていくには一様なバランスが要ると思う。
きれいな音ではずんでいく。歯切れがよくて締まっている。音に芯がありキリッとした音で、バッハが滔々と流れていく。
それと序曲の前半後半、それに各組曲、メリハリよくスッキリさわやか。最後のエコーはダイナミックなプレイで、ここで楽器ピアノの実感。

次のペルトの作品は後期のもの。極端にスローなオルゴールみたいな感じで、隙間が音楽のようで音は少ない。緩やかなスロープのよう。
3曲目はスカルラッティ。ペルトの曲からの連続演奏。曲の表情はガラッと変わるが、最初は同じ作曲家による切り替えのように聴こえてくる。両手の動きが見事なさばき、バッハとはまたちがった音楽を楽しめた。

4曲目はシチェドリン。プロローグと2幕の競馬場からの抜粋。短いピースが二つ。プロローグは重い曲。次が激しい競馬場の音楽。
ペルトよりも表情が濃い音楽で、研ぎ澄まされた感性が全開。日本刀のような凄味。

休憩のあとの1曲目は網守の曲。タイトルの意味が分かりません。
ひところあったアヴァンギャルドな雰囲気満載。指定された音のみ開放状態にして響きを連ねていく。プログラムノートにあるクラスター風味の音は聴こえてきません。もっとひとつひとつがリアルな響きかと思います。

次のシルヴェストロフ。
プレリュード、フーガ、ポストリュードから成りアタッカで続くとあるが、曲の表情が3楽章ともにあまり変わらないので境目がわからない。
点の響きが特徴的。浜野さんのピアノは各音が研ぎ澄まされていてる。あまり美しい作品とはいえないけれども、網守の盛りだくさんの音とは別の音の響き、両方ともに自分のものとしているプレイヤーで凄味がありますね。

最後はグッバイドゥリーナ、ならぬグバイドゥーリナ。彼女の曲は比較的多く聴いている。今日の作品は1965年の作で随分と経つ。
分かりやすいシャコンヌ。スキル誇示的な部分とちょっと瞑想的なところ、音楽はダイナミックに進む。最初に演奏されたバッハの呼吸が戻ってきたような気分になる。

アンコールはスヴェン・トゥールの1985年の作品。これでももう30年以上経つわけですね。音をまぶしたような趣きで、今となってみればすでに存在していたものという感じなのだが、そんなこと言ったら作品はみんなそうなわけだから、その中にどれだけ強い自己主張やインスピレーションが内包されているかといったあたりがポイントで、一度聴いただけではなかなかわかりませんけれども、これも浜野さんの際立ったタッチの美しさにかなり助けられているようでもある。
みずみずしくて全部聴きたくなるというのはありますね。

全体的な印象としてはやっぱりバッハが1枚も2枚も100枚もうわてだなと。
このリサイタル、ホール全体が最後までキーンと張りつめていて、その具合が浜野さんの弾くピアノのサウンドと同質のものを感じさせる、いい空気感を味わえた。すばらしいリサイタルでした。
ありがとうございました。
おわり