河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2132- ドミトリー・マスレエフ、ピアノ・リサイタル、2016.6.10

2016-06-10 23:21:41 | リサイタル

2016年6月10日(金) 7:00pm 武蔵野スイングホール、武蔵境

バッハ パルティータ第1番変ロ長調BWV825  14′

シューマン ピアノ・ソナタ第2番ト短調Op22  17′

シューベルト/リスト 水に寄せて歌うS558/2  5′

リスト 超絶技巧練習曲集第8番ハ短調 狩  4′

Int

チャイコフスキー 18の小品 Op72 より
 第14番 悲しい歌  4′
 第16番 五拍子のワルツ  2′
 第15番 少しショパン風に  2′
 第18番 踊りの情景(トレパークへの誘い)  4′

メトネル 忘れられた調べ、第1集Op38より、
              第1番 追想のソナタ イ短調    12′

サン=サーンス/リスト&ホロヴィッツ 死の舞踏  8′

(encore)
ハイドン ソナタ ハ長調 Hob ⅩⅥ 48 第2楽章   3′
チャイコフスキー 子守歌Op72-2   4′
メンデルスゾーン/ラフマニノフ 真夏の夜の夢よりスケルツォ  4′

ピアノ、ドミトリー・マスレエフ


2015年のチャイコン・チャンピオンの演奏、ちょっと遠かったのですが出かけました。距離はあるが電車に乗ると案外すぐに着く感じ。
早めについて、駅近の天丼てんやでワンコイン天丼食べて、上島珈琲でブレンドのショートサイズを一杯。
マスレエフは今回が初めてではなくて、昨年2015.8.4にサントリーでゲルギエフ&PMFの伴奏でラフマニノフの2番コンチェルトを聴いていて、そのときと同じような印象を受けました。が、今日は180人規模の小ホールで、早い話、聴衆全員がサントリーのステージの上で聴いているような雰囲気でした。また、このホールは小さいのに後方に向けて上にきっちり傾斜しているので見晴らしがいい。聴衆全員がマスレエフの全体弾き姿を見られるのではないか。ということで、昨年観た時よりもより克明に眺めながら聴くことができました。

長身痩躯でブラウン系の金髪、1988年生まれの28歳らしく柔らかそうで少しロンゲ気味に。ナーバスな雰囲気はなくてひょうひょうとしている。一見すると淡白にも見えるが、気負いが無くて、各曲の前に比較的長めに時間を取って集中力を高めてから演奏に入る。
一つ一つの曲への打ち込み度が凄くて、今回は得意演目をたくさん並べた感がありますが、それぞれ、がらっと雰囲気が変わる。流されない。新しいアトモスフィアを次々に作っていく感じで、既に自己のスタイルが確立している。早熟というより変化の進行だと思いますので、聴く方としてはその時々で色々なことを期待できそうですね、これからも。

指全部見えました、なんだか自由自在過ぎて身体とは別に独立独歩みたいな感じ。身体はほとんど動かしませんし。自由に動く指はそれだけでなく、例えばデクレシェンドしてピアニシモで終わるような曲想では指を鍵盤の上で少しツイストする感じで、解放された最後の響きが微妙にビブラート気味になったりしていた。あれは凄いですね。空気が震える。
ですので、冒頭のバッハのようにチェンバロと違い強弱がでるピアノというのはありますが、それよりもなによりもマスレエフ自身での味付けがタップリ。といいつつも曲想の余計な動かしは無く、一心不乱。いきなり音楽へ突入。演奏の煩わしいものから解放されていますね、素晴らしいバッハでした。

次のシューマンはドップリロマンみたいな世界ですけれども、スタッカート気味な切れ味の素晴らしさとテヌート気味な鬱なモードの対比がよく出ている。なによりそれぞれへの移動が滑らかで自然。音楽が生きている。激しさの方が勝っているパフォーマンスでした。強烈なインパクトですね。

といったふうに、選曲一つ一つ別々の作曲家によるものを、目まぐるしくがらっと雰囲気を変えてくる。シューベルトとリストは一呼吸おいて集中力高めて続けて演奏。出入りしません。全く違う音楽な気がするのだが、この一呼吸が効果抜群ですね。
シューベルトのフラットな中からにじみ出る、流れるような呼吸の音楽、これは、次のリストの激しさとは別のマスレエフの心象風景のような気もします。

ここで15分の休憩をはさんで後半。
チャイコフスキーの4曲、珠玉のような小品4曲を連続演奏。身体動かしませんし肩に力が入っているふうもなくて珠玉の演奏、トレパークで締める。もしかしてとっておきのピックアップなのかもしれない。順序も含め。
メトネルは音のつながりを楽しむ感じで。前半のシューベルト思い出します。こうゆう曲も聴かせてくれますね。音に隙間の無いハイテンションで濃度の高い演奏でした。
最後の曲は、サン=サーンス+リスト+ホロヴィッツ、3者のハイブリッド作品みたいな感じで、もはや、ヴィルティオーゾ越えなワールド。ピアノピースの締め、圧巻。
メトネルとサン=サーンスは一服おいて連続演奏。出入りはしない。
メトネルからがらっと雰囲気変わるサン=サーンスなのですが、マスレエフは腕まくりして腕をぐるぐる回してといった雰囲気はありません。冷静な熱狂ですね。あらたなタイプの演奏家なのかもしれません。
充実のリサイタル、楽しめました。ありがとうございました。
おわり