恐山あれこれ日記

院代(住職代理)が書いてます。

片々問答

2018年02月10日 | 日記

「お前の言う、無常が無常とはどうことだ」

「『一切は無常である」という主張にも、無条件の根拠はない。この世にはすでに一神教があるからな。そのアイデアを頭から否定する根拠もない。『無常』『神』も所詮、認識だ。言葉で言えばね」

「無常が無常なら永遠になっちまう、という話ではないのか?」

「いくらぼくでも、そんな阿呆な言葉遊びをする趣味はない」


「死者が実在するとは?」

「君には過去があるだろ?」

「ある」

「そういうことだ」


「坐禅はしなければならないのか?」

「この世にしなければならないことなど、ない」

「じゃ、好きでしてるのか?」

「違う。する羽目になっただけだ」


「人生とは何だ?」

「それを考える意味はない」

「なぜ?」

「死ぬまでが『人生』なら、死ななければ考える対象にならない。生きている最中は、それを考えなくても生きていける」


「業と輪廻の違いは?」

「現実とお伽噺の違いだ」

「悟りと真理の違いは?」

「経験で錯覚するか、理屈で錯覚するかの違いだ」