恐山あれこれ日記

院代(住職代理)が書いてます。

不運の味

2011年01月10日 | インポート

 遅ればせながら、新年明けましておめでとうございます。読者の皆様の1年のご多幸を祈念申し上げます。

 と、かく言う私は、新年早々、まったく面目ないことになってしまいました。3日午前、近隣寺院に年始廻りをした帰り道、凍結路面で転倒、肋骨を二本折ってしまったのです。びっくり。

 年始年末の雪と冷え込み。そこで外出には必ず長靴を履いて、路面にも注意していたのです。その日は久しぶりの晴れ。私は、陽光に照らされて乾いた部分を選んで歩いていました。

 ところが、自分の寺の参道付近、そこは日当たりであったものの、陽を浴びて時間が浅く、まだ氷が溶けきっていなかったのでした。

 参道入り口近くの家で、ちょうど玄関先の雪掻きをしていたご主人に、新年の挨拶をしながら通り過ぎようとしたその刹那、両足が地面からフワッと浮き、まるでプールに飛び込むが如く、ほぼ水平にアスファルトに落下してしまいました。

 私は虚弱で、運動神経も鈍かったものですから、ずいぶん病気もけがもしましたが、これまで骨折だけはしたことはありませんでした。この先の人生、骨折はせずに死ねるかなと思っていたのですが、甘かったです。

 路面に叩きつけられたときは、しばらく呼吸もできないほどの激痛でしたが、それが過ぎると、痛いことは無論痛いのですが、歩けるし、動けます。病院に行く途中のタクシーで、運転手さんが、

「住職、手首や足を折ることを考えれば、肋骨折ったんならタチのいいほうですよ」

と、妙な慰め方をしてくれました。休日救急の整形外科医も

「まあ、無理をしないようにして、くっつくの待つんですな」

と言うだけ。翌日、私は予定通りJRで福井から移動しました。

 以来今日まで一週間。何が辛かったか。

 まず、ベスト1はくしゃみです。これはフルスイングのバットで殴られたような激痛で、文字通り悶絶してしまいます。そこで情けなくも、猫のように暖かい部屋に引きこもり、温度差にさらされないよう自衛しています。

 2位と3位は僅差で咳とアクビ。咳は風邪を引かないように、喉を刺激しないように気をつけているせいか、いまのところ、あまり大きな被害はありません。

 以外に強烈なのはアクビ。これは要するにまったく油断しているときに出るものなので、防ぎようがないところが辛い。

 ところが、痛みでは上位三つにやや及びませんが、いま私が一番苦しんでいるのは、何をかくそう笑いです。実は、私には笑い上戸の傾向があるのです。

 正月は何気なくテレビをつけても演芸番組があふれている上に、世間もおめでたムードで、どこに笑いの爆弾がかくれているかわかりません。うっかり地雷を踏むと、とんでもない災難になります。まさに泣き笑い。

 今や楽しいことがそのまま苦痛になるという、まるで人生の矛盾を身にしみて体感するような毎日です。

 泣き笑いとは、案外、人生の味なのかしれないなどと、胸をさすりつつ考えています。