恐山あれこれ日記

院代(住職代理)が書いてます。

大祭点描

2009年08月21日 | インポート

 ずいぶんと時期はずれになってしまいましたが、先月の例大祭の様子を写した木村さんの写真が手に入りましたので、ご披露します。

 この夏は、下北半島も天候不順で、期間中まともに晴れたのは1日しかありませんでした。ところが、例のETC効果のせいか、ありがたいことに、昨年より多いご参拝をいただきました。目立ったのは四国からのお参り。話に聞くと、1000円で走れる最長距離が四国ー青森間らしいです。

Cimg1569  右の写真は、大祭中に行われる大掛かりな法要の一つ、「大般若祈祷会(だいはんにゃきとうえ)」です。お坊さん仲間では「転読大般若(てんどくだいはんにゃ」と略称されます。「転読」とは、仏教経典の中でも最大、全600巻ある「大般若経」を、限られた時間内にそのまま読誦するわけにはいかないので、お坊さんが「大般若経」に説かれる「空」の教義を要約した文句を唱えつつ、経典を扇のようにひろげ、滝の流れ落ちるがごとく展開することで全巻を読んだこととし、その功徳でご祈祷を行うという儀式です。大乗仏教の時代に入り、教えを説いた経典自体に信仰があつまり、講義のみならず、読誦、書写、所持にまで功徳があると考えられるようになって、こうした儀礼も生まれてきたのでしょう。

 次のものは、「賽の河原」を読経しながら廻り、万霊を供養する山主と各地よりご参集の僧侶の方々の列。この期間、下北半島を中心にCimg1578 青森県内、さらに隣県からもお手伝いをいただいています。

Cimg1584  その「賽の河原」の一角に、お地蔵様などが立ち並ぶところがあり、篤信者の方がお供えや供養をしていきます。これらは、どうしても恐山に仏像などを納めたいと希望される方がいた場合、事情によっては、この場所でよろしければということで、安置していただいたものです。ただし、基本的に、恐山は仏像、墓標などの受け入れはしておりませんので、ご承知おきください。Cimg1583

 最後に、今年も出現した手ぬぐいの林。あの世と恐山を往来する人々の旅路を思いやって供養されるのです。50年前はほとんど無かったはずだ、土地の古老が言っていました。これも恐山を訪れる参拝者から自然に生まれ、人々にひろまった信仰です。