恐山あれこれ日記

院代(住職代理)が書いてます。

作者の困惑

2007年02月15日 | インポート

「私だけ・・・」という女性お笑い芸人のギャグがありますが、こんなことは私だけなんでしょうか。

 私はすでに何冊か本を出しているのですが、出すたびに、しばしば「ご本、読みました!」とニコニコしながら言ってくださる方と、出会うことになります。このとき、私はいっぺんに血が逆流するように、恥ずかしくなるのです。本当に背中に汗が出てきたりします。そして、一刻もはやく話題を変えようとするので、おそらく相手には不審な感じさえ、与えているかもしれません。

 自分でも理由がわかりません。読んでほしくて出版しているわけで、読んでもらえることは嬉しいに決まっているのに、なぜ、面と向かって「読みました」と言われると、これほど恥ずかしいのか。

 尾篭な話で恐縮ですが、あの恥ずかしさは、喩えるならば、自分の排泄物について話をされている感じに近いのです。

 まあ、普通に考えれば、作品の欠陥と未熟は自分なりによく知っているわけで、けっこう痛い反省と後悔とともに、すでに過去のこととして一段落つけようとしている当の物を、思わぬときに真っ向から持ち出されて、いまさらながら困惑しているのかもしれません。それにしても、汗がでることはないでしょうに。

 文章での感想や批評では起こりません。直接対面しているときに限るのです。本当に不思議です。他にもそういう方はいるのでしょうか。また、どうしてこんなに恥ずかしいのでしょうか?