書店で面陳してありました。ずっと気になっていたので、読めてよかった。宇田川敬介「震災後の不思議な話」(飛鳥新社)。
三陸でいつの間に話されるようになった怪談や、実際に見たという人に聞いた奇妙なエピソード。自分が死んだ自覚のないらしい悲しい話が集められています。
著者は以前マイカルにお勤めだったそうで、出張で東北に来たときに知りあった方々から聞いた話が多かった。
これは釜石だろうとか、気仙沼だろうなと思う場所も、なんかぼかして書いてあるのは、自分の住む町に怪異があると伝えられるのは嫌だからという人に配慮したからだそうです。
母親が、死んでからもなお子どものことを心配している話が印象的でした。
瓦礫の下にある車に取り残された子どものことを探している姿が、幾度も目撃されたのだそうです。余りにも一瞬で死んだ自覚がないらしいながらも、一心に探し続ける姿は、怖さを感じさせるものではなかったといいます。
以前テレビドラマで、自分が拷問を受けても仲間が殺されても、決して口を割らなかった女性刑事が、娘が狙われると我慢ならなかったという場面を見たことがあります。
わかる、と思いました。
子どもには、未来を生きてもらいたい。
もう、それが叶わなくても、探さざるをえない逼迫しものが、概念としてあるのです。
わたしたちはあの震災で、多くを失いました。
失ってしまったものには、取り戻せないものもあります。
どこかで、誰かの耳に伝わる悲しい怪異、本来ならば広範囲には広まらないはずの物語が、こうやって読まれていくことは、やはり大切だと思いました。
三陸でいつの間に話されるようになった怪談や、実際に見たという人に聞いた奇妙なエピソード。自分が死んだ自覚のないらしい悲しい話が集められています。
著者は以前マイカルにお勤めだったそうで、出張で東北に来たときに知りあった方々から聞いた話が多かった。
これは釜石だろうとか、気仙沼だろうなと思う場所も、なんかぼかして書いてあるのは、自分の住む町に怪異があると伝えられるのは嫌だからという人に配慮したからだそうです。
母親が、死んでからもなお子どものことを心配している話が印象的でした。
瓦礫の下にある車に取り残された子どものことを探している姿が、幾度も目撃されたのだそうです。余りにも一瞬で死んだ自覚がないらしいながらも、一心に探し続ける姿は、怖さを感じさせるものではなかったといいます。
以前テレビドラマで、自分が拷問を受けても仲間が殺されても、決して口を割らなかった女性刑事が、娘が狙われると我慢ならなかったという場面を見たことがあります。
わかる、と思いました。
子どもには、未来を生きてもらいたい。
もう、それが叶わなくても、探さざるをえない逼迫しものが、概念としてあるのです。
わたしたちはあの震災で、多くを失いました。
失ってしまったものには、取り戻せないものもあります。
どこかで、誰かの耳に伝わる悲しい怪異、本来ならば広範囲には広まらないはずの物語が、こうやって読まれていくことは、やはり大切だと思いました。