くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「レイン・レインボウ」加納朋子

2012-03-01 22:08:12 | ミステリ・サスペンス・ホラー
加納さん三連発です。「レイン・レインボウ」(集英社)。
高校時代、九人きっちりしかいなかったソフトボール部員たち。体が弱かった知津子(チーズ)が亡くなったとの連絡で、再会することになったのですが……。
部長の陶子(今はOL)、副部長の陽子(編集者)、ライトの美久(カンちゃん・専業主婦)、知津子の親友里穂(会社員)、保母をしている善福佳寿美、看護婦の緑、栄養士の由美子(ミュータン)、仕事が見つからない「りえ」。
彼女たちの「現在」を描きながら、浮き上がる知津子の人生が、なんとも苦しいのです。
生れつき心臓が悪く、二十歳まで生きることは難しいといわれていた知津子。
彼女が死んだのは、会社の労働条件が悪いからだと決めつける兄。
親友だといってべったりくっついていた里穂と現在疎遠になっているという話も聞こえ、不安が募ります。しかも里穂が葬式に来ない。やがては会社を休むようになり、行方不明に。
さらに知津子の幽霊を見たと言い出す人もいて。
短編としてもおもしろいし、時間軸にそれぞれ差があるのでほかの人のその後のこともわかる。多面的といいますか。「虹」がテーマなので、自分の色をもちながらも重なり合ってより深まるような作品集だと思います。
「雨上がりの藍の色」がすごくおもしろかった。主人公は由美子です。第一話ではもう結婚しているといっていたなーと思いながら読んだのですが。
栄養士として派遣されることになった社食は、問題が山積していて次々に前任者が辞めていく。「山本さん」という女性調理師が三人もいて扱いにくいし予算も少ない。
持ち前の暢気さで次第になじんでいく由美子ですが、なんと人件費削減のためか社食が閉鎖されるかもという話が!
で、一念発起するんですが、これがすばらしい。残りものを徹底的に再利用して、キンピラや浅漬けにしたり、シチューをグラタンにしたり、海老の殻でだしをとってスープにしてからかき揚げにする等々、手間と工夫で夕方の時間帯にも人気の食堂にしてしまうんです。食券も手に入れにくいらしいよ。
さらにいえば、こういうコミカルなストーリーのおまけみたいに「恋」が入って来るのも、読者としては楽しいものです。(佳寿美の回もそれらしい感じでいいよね)
あとは緑のパートも、しんみりとしたやさしさがある。
高校時代の友達って、やっぱり特別かもしれませんね。わたしは文芸部に同級生がいなかったのですが、先輩とお会いしたいなー。みなさんどうされているのかしら。