くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「風の生まれる場所」小瀬木麻美

2012-03-23 17:04:49 | YA・児童書
 小瀬木麻美「風の生まれる場所」(ポプラ文庫ピュアフル)。「ラブオールプレー」の続編です。とてもおもしろかった。主役はバドミントン界のスーパースター遊佐賢人です。結構「イイ性格」の彼ですから、どうなるのかと思っていましたが、前半は前作とのつながりがすごく多くて、あらすじ紹介のようでした。(細かいところで忘れている部分が多かったので、思い出すにはよかったのですが、続けて読むにはくどいかも)
 横川くんがやっぱりいい。ダブルスの芸術的なゲームメイクに感心しました。遊佐をシングルスで生かすために、自分がどう動くのかをきちんと考えている。
 バド部顧問だったことがあるので、動きがよく見えて楽しいです。試合のシーンがいいよね。ただ、技の名前がわからない人にはちょっときついかな。「ハイクリヤー」とか「ヘアピン」てどんなショットかとか。学連のシステムがわからない人には「五部」って言われてもイメージがわかないかも?
 今回わたしにとってほっとしたのは、輝くんの動きでした。コートに立たない主将だけれど、ゲーム分析やスコアの記録で貢献する。そんな彼が東大生として大会に出場している姿に、胸が熱くなりました。
 わたしは運動神経に自信がないので、どうアドバイスするかは考えたつもりです。コートのラインを紙に書いて、ショットの決まった場所に○をつける。攻撃パターンとかコースとか、結構癖が出るものなんですよね。他校ではどのようにミスをしたのかなどチェックしている人もいましたが、わたしはサーブのミスとネットだけ正の字で集計していました。データの生かし方、団体戦では重要だと思います。
 さて、今回もう一人あげるとすれば松田くんの行動もよかったと思うんです。もうバドはやめると言っていた彼が、自校のバドミントン部をどう活性化していくか、すごく楽しみ。やる気はあるのに今ひとつ上に上がる方策を知らないチームを、新入生が押し上げていく。好みです。
 チームの一人一人や雰囲気がすごくよくて、彼らのつながりが心地いい。欲をいうならばちょっとラブコメな部分(梓ちゃんとか)は説明じゃなくて描写してほしいところですが、そうなるとバドミントン小説から離れちゃう気もするのでこれでいいのかな。
 テーマになるはずの賢人の故障についてももうすこしほしかったような……。
 今度は岬省吾主人公で、水嶋との大学生活の様子希望(笑)