くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「みちのく忠臣蔵」梶よう子

2012-03-12 08:39:26 | 時代小説
で、いちばん熱が高いときに読んだのがこれ。梶よう子「みちのく忠臣蔵」(文藝春秋)。
読みはじめたのが病院の待合室というせいか、やっぱり熱があったせいか、なんだか漠然としたところが多いように思います。
小説としてのサービスが足りないというか。相馬大作という人物が魅力的に描けているからこそ、彼の「仇討ち」の視野の狭さが気になってしまう。
それはもともとの「忠臣蔵」でも言われていたことですよね。でも、相馬という人物がその他のことについても同様かというとそうでもない。
梶さんにしては、ぎこちないところが多くて。
最も顕著なのは、恋愛描写。江戸の武士社会でそういうことは史実的にはないんだろうと思うんですが、なんだか光一郎と女子を絡めよう絡めようとして失敗している感じが……。
まずは、親友重吾の妹、咲。「咲ちゃん」と呼ばれていますが、旗本の嫡男がこうは言わないように感じました。
見合いの場面もなんのために挟み込まれているのかわからない。お父さんが一目惚れしたことが本筋と関わりあるとは思えないし。
露姫の、将来は光一郎と結婚する発言も奇妙ですよ。しかも芭蕉を読んだりしている。四歳、だそうです。数えだから今の感覚なら三歳と捉えられると思うのですが……。
もう一人、料理屋の女将の美和さんも魅力的だとは思うんですが、亡くなった旦那さんのエピソードは必要なのかと考えると疑問です。
南部と津軽の仲の悪さについては、三浦哲郎さんのエッセイでよく目にしていました。さらに、青森出身の知人に、「八戸出身の三浦哲郎さんが好き」といったら、
「悪いけど、わたしにとって八戸は青森じゃない」といわれたこともあります。
確執、陰謀、義理と情、隠される真相。おもしろいのですが、ちょっとだけ物足りないように感じるのは、わたしのわがままなんでしょうね。