くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「さよならドビュッシー」中山七里

2012-03-14 05:47:32 | ミステリ・サスペンス・ホラー
なるほどっ、こうつながるのですね。そして、見事に騙されました。おもしろかったー。
中山七里「さよならドビュッシー」(宝島社)。このミス大賞でのデビュー作品ですね。巻末には寸評も載っていて、こちらもおもしろく読みました。
中に、インドネシア育ちの女の子なのに、難しい語彙があるというような指摘がありましたよ。ふふふ。
香月遥は、不動産で多額の金を得た祖父がおり、なに不自由のない生活を送っていました。ピアノ科のある学校への進学も決まり、前途洋々。従姉妹の片桐ルシアと祖父の三人で留守番をしていた夜、火事に巻き込まれて全身にやけどを負います。
高度な医療技術で救出された彼女は、ピアノに向き合い、何とか力を試そうと、気鋭のピアニスト岬洋介の指導を受けることになるのですが。
声がつぶれ、松葉杖にすがっても生き抜く少女に対して、同級生は意地悪を言い、嫌がらせをします。さらには階段で転び、あわや大惨事となりそうな経験も。
遺産相続の多額さから、彼女をシンデレラと評する人も現れますが、命を狙われたすえに母親も死亡と、これでもかこれでもかの展開。でも、その合間に、紙の奥から聞こえるんですね、ピアノが。
わたしもピアノ小曲集のカセットを持っていたなーと懐かしく思い出したり。「月の光」「亜麻色の髪の乙女」「別れの曲」「英雄ポロネーズ」……。
岬先生の的確な指導でぐんぐん力がつきますが、超絶的な技巧に指がついていけるのは五分が限度。高校の代表としてコンクールに出場することになり、課題と自由曲を合わせると七分はかかる。時間を作り出そうと練習に励みます。しかし、その練習が熱を増し、曲調も完成してきたとき、みんなが心を打たれるのはその外見と松葉杖の悲劇性からだと言う人も出てきます。
まずは同級生三人娘。もともと遥をいじめのターゲットとしていた彼女たちの冷酷さは、夢にまで現れるほどの凶暴な威力をもっています。
さらには同じコンクールに出場する下諏訪美鈴。(すごい存在感。次は彼女のスピンオフを読みたいものです)
わたしは、歌が好きなんですが、楽器は全くできない。楽譜も読めません。娘にはピアノを習わせていますが、これももしかしてコンプレックスゆえかしら。
この前ピアノコンクールに参加してきましたので、ちょっとだけ(アットホームな大会だったので)この小説のラストに重ね合わせてみました。ピアニストの海鋒さんがいらして何曲か披露してくださったんですよー。