くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「教室の祭り」草野たき

2010-11-05 05:31:43 | YA・児童書
選択とは、選ばなかったものを諦めること。
澄子の母親の言葉が、わたしにはよくわかります。もう児童書を読むのも親の視点なんですかね。
草野たき「教室の祭り」(岩崎書店)。ずっと探していた本と巡り逢えるのはうれしいものです。何が「祭り」なのか。澄子と直子の二人の少女の思いを、丹念に掬い上げる物語です。
澄子は母にすすめられて数々の習い事をしてきましたが、どれも続かず、中途半端な状態で投げ出していました。今回は塾に入ることになり、そこで哲子と香胡に出会います。
塾では二人と、教室では直子と親しくしていた澄子ですが、ディズニーランドに遊びに行ったことから直子と計画していたカステラ作りを断ってしまう。心では直子といたいのに、つい二人に流されてしまうのです。
そのうちに直子は学校を休みはじめ、全く来なくなって、澄子は自分が裏切ったせいだと悩みます。「親友」と言われた哲子たちに自分の苦しみを訴えますが、事態は澄子が思っていなかった方向に向かい……。
最終的には、哲子たちから離れる決意をした澄子が、教室から浮いていく展開になるのですが、もう逃げないと決めた澄子はめげないのでした。
いじめられたままで幕を閉じる児童小説、珍しいですよね。(解決はありますが)
この物語でいいなーと思うのは、間島さんの存在です。教室の中で一人でいても気にしない、成績優秀な女の子。直子との関係をクールに見つめる彼女に、澄子は辛辣な言葉を聞かされたこともありました。でも、トイレの掃除用具入れに閉じ込められたとき救いにきてくれる。
友達であるって、どういうことでしょう。ただ話が合うとか一緒に行動するとか、それだけではないのです。
直子の家に押しかけたとき、「うちのクラスって、まとまりあるよね」と言った子には、澄子の思いも直子の思いもわからない。
哲子や香胡にも嫌な感じはありますが、わたしがこのクラスでいちばん友達になれないだろうと思うのは、佳織です。直子の部屋に憧れ、おばあさんが止めるのも聞かずに上がり込む。ひどい。
今まで「直子」というイメージを見ていたことに気づくシーンが好きです。実は澄子の思っていたような理由で休んでいたのではない、ということが明らかにされるあたり。
それにしても、この物語は徹底して「男性」を廃除していますね。澄子がそういう性格だからでしょうけど、澄子の家でも直子の家でも父親の影が表面に出てきません。しかも、澄子はクラスの男の子を余り好ましいと思っていない。そして、小林先生(塾の女子大生講師)の恋愛観がマイナスのイメージで披瀝される。
流行もの(芸能人含む)を取り入れすぎかな、という気もしますが、おもしろく読みました。

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