くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「13歳のシーズン」あさのあつこ

2011-03-22 04:18:58 | YA・児童書
ああ、これはいいです。中学生に読んでほしい本に巡り会うとなんだかうれしいですね。
あさのあつこでタイトルが「13歳のシーズン」(光文社)ときたら、そのど真ん中にストレート、という感じがしますが、わたし、どちらかというとあさの作品、苦手なのです。
でも、これはよかった。中学生に寄り添い、勇気づける作品だと思います。
中学一年の茉里、深雪、真吾、千博の四人が、とあるきっかけから親しくなっていく過程を描きます。
罰ゲームの告白。割れた手鏡。夏休みの課題の年表。
長編としても読めますが、一編一編が完成度の高い短編で、これを少しずつ連載で読んでいくのは楽しいだろうと思わされます。
連載は、進研ゼミ中学講座。ほー、と思いながら掲載記録を見てびっくり。2001年、2007年、2008年、2009年という実に息の長い連載だったのです。
ということははじめの四編が初期のものなのでしょうか。ここだけ一人称で気になってはいたのです。
でも、書き下ろしも含めて一冊になったことで、奥行きのある素敵な作品人称なったように思います。自分も四人と同じ空間を共有しているような。
それぞれタイプの違う四人です。茉里はおっとりとして優しい子。押し付けがましいところがなく、ふわっとしています。深雪はボーイッシュで、はっきりした美人。真吾は典型的な「陽」で、箱根駅伝出場を目指すスポーツマン。千博はそつのない秀才ですが、胸に苦痛を抱えています。
彼らは家族のことや恋の悩みがありますが、それを打ち明けて深刻になるということはありません。
ただ、いい距離で付き合うことができる。男子とか女子とか超えたところにある、気の合う友人としての関わりが、うらやましいくらいです。
四人でピクニックに行って、真吾が作ってくれたお弁当を食べるシーンが好きですね。
「これがサンドイッチ、こっちが握り飯、で、これがから揚げにローストビーフ、エビのホイル焼き、卵焼きにブリの照り焼き……」
というメニューに、中一の男の子らしからぬものを感じますが、すごく楽しそうで、ほほえましい。
是非学校図書館に一冊。おすすめします。

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2 コメント

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Unknown (はすみ)
2011-07-10 11:17:28
中学講座の2008年分を取っていた者です。
2001~ずっと新作・・・ではなく、少し改訂を加えて何度か同じ作品を連載していたみたいです。
でも「バッテリー」で国民的に知れ渡る前からですから、それだけ人気があったってことですね。
自分も少しずつ進行していくストーリーが大好きで、講座の内容よりもそっちばっかり気にしてました(笑)
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こんばんは (いつか)
2011-07-10 21:44:45
はすみさんありがとうございます。なるほどねー、そういう連載方法ですか。たしかに同じ連載でも影響なさそうですね(笑)。違う学年のテキストって兄弟でもいないとわからないだろうし。
あさのさんの作品は、わたしにとって当たりハズレが結構大きいので、なかなか自分では買わないですませてしまうのですよー。でも、この本なら自信をもってオススメ。来年度の教科書掲載の作品よりも、こっちの方が好きです。
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