くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「よるの美容院」市川朔久子

2016-07-03 19:56:08 | YA・児童書
 課題図書の「ABC!」がおもしろかったので、市川さんのデビュー作を借りてきました。「よるの美容院」(講談社)です。
 幼なじみの事故を目の前で見てしまったまゆ子。そのショックと、学校や家でのもろもろのことが原因か、声が出なくなってしまいます。
 一つひとつは小さなことですが、タイミングとか重なりがよくなかったのでしょう。血のつながりはあるらしいけれども、どういう親戚なのかよくわからないナナコおばさんの家に預けられることになります。
 ナナコおばさんは「ひるま美容院」の先生で、シャンプーが素晴らしく上手い。まゆ子と助手のサワちゃんは「天使の手」と呼んでいるほどです。
 そのナナコおばさんに、月曜の夜シャンプーをしてもらうとき、まゆ子はわずかに声を出して頷くことができるのです。

 そんなまゆ子が、サワちゃんの弟の颯太とケンカするときだけは普通に話せるようになります。
 その後もいろいろあるのですが、失意のなかから次第に落ち着いていくまゆ子と周囲の人々の温かさにやさしい気持ちになれますよ。
 特に商店街のお肉屋さんのコロッケと、和菓子屋和三堂さんの限定大福がすごいおいしそうなんです! みかんが丸ごと入った大福もあるらしい! うちの近くのおいしい大福屋さんが店をやめてしまったので、もう食べたい欲求が強いです……。
 箪笥にしまわれていた紬とか、どうも出戻ったようだとか、ふと垣間見えるナナコおばさんのかなしみも、まゆ子と出会ったことで少し和らいだのではないかとも思いました。

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