くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「人生オークション」原田ひ香

2014-02-26 20:05:27 | 文芸・エンターテイメント
 同時収録の「あめよび」が良かった。何回か読み直してしまいました。
 ラジオのハガキ職人「サンシャイン・ゴリラ」こと平山輝男と付き合っている美子は彼との結婚をイメージしていました。ところが、彼は誰とも結婚する気はないといいます。
 えっ、どうして? と思った瞬間、娘が呼びに来て寝ることになり、それが気になって気になって、夜中まで眠れませんでした……。
 美子は眼鏡屋の販売員で、丁寧な接客ぶりが好評です。輝男はアルバイトをしながら投稿を続けていますが、放送作家見習いのようなことに誘われて、ナイターが雨で中止になったときに放映する番組を作ります。でも、それは彼にとってはかなり屈辱的なことだったというのです。
 美子は何故彼が結婚を拒否するのか納得できず、会う度に彼を責めます。
 ある雪の夜、輝男は「諱」について語ります。自分の郷里には、他の人には伝えない真実の名がある。もちろん、美子はそんなことを聞いたことはありません。
 結婚できないなら、唯一の人にだけ教える諱を知りたい。そう思い込む美子は、子どもの頃に読んだ童話を思い出します。願いを叶えてくれたこびとに、自分の名を当てろと言われた娘が答えるのは「ルンペルシュティルツヒェン」。美子はこの名を、なかなか覚えられません。しかし、輝男はいつの間にか調べている。調べているのに、美子にそれを伝えないのです。
 この不条理なほどの悔しさ。哀切を感じさせるような描写が原田さんの魅力だと感じました。
 ところで、輝男の諱はなんでしょうね。雪の日を彷彿とさせるから、「雪比古」「由紀広」とかそんな感じ?
 眼鏡屋の腕利き検眼員権藤さんが素敵です。ダンスするように測定するんですって。
 ちょうど夫の眼鏡屋に付き合った日でした。出来上がった眼鏡を見て、娘は「それ、お年よりめがね?」と訊いていました。
 

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