くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「アルビノを生きる」川名紀美

2013-10-09 05:27:17 | エッセイ・ルポルタージュ
 三浦哲郎文学にどっぷり浸っていたわたしの卒論テーマは「白」をモチーフにしたものでした。指導者からは「ありきたり」だと言われましたが。
 今回、その根底であるアルビノを扱った書籍を読み、しみじみと読書ってつながっていくのだと思ったのです。
 「アルビノを生きる」(河出書房新社)。筆者は元朝日新聞記者の川名紀美さん。
 三浦さんの作品で、アルビノに生まれた姉たちの姿をまっこうから描いた「白夜を旅する人々」について、ごく始めの方で触れています。
 さらに、仙台在住の天野和公さんの旦那さんに取材をしている。和公さんの本は二冊ほど読みました。また、ユニークフェイスの活動にも触れています。こちらも、「じろじろ見ないで!」や「顔面漂流記」など読んできました。それにしても、どうして代表者名が紹介されないのか不思議です。「石井」という名字が多いから、煩雑になるのを防ぐため?
 はい、「石井さん」は二人登場します。ミーティングの中心的役割を担う石井更幸さんと、お医者さんの石井拓磨さん。
 更幸さんは、ラジオ番組に出演したり、ホームページを開設したり、アルビノの人に会いに行ったり、ヘルマンスキー・パドラック症候群の患者会に出席したり、とても活発な方のようです。アルビノの人に会ったことがなかったので、かなり長いこと悩んでいたそう。
 わたしも、三浦さんの本でそのような立場の人の苦しみを知り、気にかけていたのですが、実際にお目にかかることはありませんでした。妹の友達が生まれつき髪が茶色だったとか、理科の先生が「高校の先輩にいた」と言ったことが記憶に残っているくらいです。
 アルビノにも個人差があるのだそうです。そして、弱視のために、社会生活を送るにも苦労がある。盲学校に行く人も多い、と。
 そうやって考えると、実は地方の公立中学って、思った以上に制限されているような気がしてきました。
 水泳の川本明里さんや、ドーナツの会の藪本舞さん、正子さんと利子さん姉妹、など、細やかな取材で構築されており、読み応え充分です。
 「じろじろ見ないで!」は、自分ではどうにもならない外見(あざとかやけどとか)に悩む方々が取り上げられていました。そうです。アルビノはそれ以上に、無遠慮に見られてしまう可能性がありました。
 もう不可能なんですが、三浦さんがたった一人残ったアルビノの姉について書こうとしていた小説、読みたいですよね。