くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「わが父魯迅」周海嬰

2013-10-04 21:31:43 | 外国文学
 ものすごくおもしろいんです。
 でも! よみおわらない……。
 五百ページ近い単行本。一気に半分読んだところで力尽きてしまい、このまま返してしまうことが予想されます。忘れないうちに、覚え書きをしないと!
 「わが父魯迅」(集英社)。十年ほど前に翻訳されたようです。なんと、岸田登美子、瀬川千秋、樋口裕子と、三人もの翻訳者が分担したんですって。
 さらに日本の読者に対するメッセージを、筆者である周海嬰氏のお嬢さん・周寧さんが訳している。出版当時いろいろと物議を醸したようなんですが……。まあ、魯迅といえば近代最大のビッグネーム。海嬰氏は名づけを誇って改名しませんでしたし(子ども向けの名前なので、大人になったら改めて名前をつけるように言われていたそうです。ちなみに、上海で生まれた子という意味なんだとか)、お子さんの誕生に際しても魯迅の孫にあたる血筋はできるだけ多い方がよいと言われたそうです。
 海嬰氏のお母さんは許公平。よく図録に魯迅と彼女と、幼い子どもの写真が載っていますよね。あの子どもさんです。北京大学で物理を学び、この当時は電影電視総局の副部長級。テレビ局ってことですか?(違うかな?)
 わたしが読んだ範囲には「藤野先生」については触れていましたが、「故郷」はないですね。海嬰氏は親日家で、魯迅展の折などに来られることもあるそうです。
 何しろ、幼い頃に亡くなっているので、魯迅の交友や親戚関係を語るも、海嬰氏自身の当時の年齢は非常に幼い。しかも許公平さんは逮捕されてしまう。混沌とした中、なかなか中国の方の名前が覚えられないわたし。
 でも、前から気になっていた周作人と羽太信子夫妻の件が詳しく書いてあって、はらはらしながら読みました。時期としては、紹興を引き払って北京に移った頃でしょうか。弟の作人とともに魯迅一家が暮らすことになります。しかし、引っ越しの最中に夫妻は日本に遊びに行ったまま。細々としたことはみんな魯迅にのしかかります。
 魯迅には形だけの妻朱安がいるのですが、読み書きができないために一家を切り盛りすることはできません。そこでかわりに信子がやることになったのですが、予算を湯水のように使ってしまい、魯迅とは険悪に。しかも、その下の弟健人に自分の妹を嫁がせながら、彼の赴任先に同行させないなど、非道のかぎりをつくすような書かれっぷりに目が離せません。
 信子サイドからみるとどうなのかと気になるのですが、ネットで検索すると中国版しか出てきません。後年、海嬰氏がこの地を訪ねると、住んでいるおばあさんにこっぴどく怒られる。これが羽太信子だそうですから、ずっと中国社会で生きていたのかもしれません。
 あぁ、あとは何を書いておけばいいでしょうね。いろいろ気になるのですが。