くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「烏は主を選ばない」阿部智里

2013-10-20 19:12:22 | ファンタジー
 細かいところを忘れていますが、おもしろかった。阿部智里「烏は主を選ばない」(文藝春秋)。
 もちろん、「烏に単は似合わない」の姉妹編です。桜花宮に飛び込んできた若宮お付きの少年、雪哉が主人公で、陰謀渦巻く宮中の様子を描きます。兄長束を主上にと画策する一派から命を狙われる若宮。味方と呼べる人は非常に少なく、警備も澄尾という男が一人だけ。若宮の要求はかなりハイレベルで、雪哉はへとへとなんですが、段々と彼の人柄に惹かれていきます。
 賭博のかたに売り飛ばされたり、桜花宮に同行したことが発覚しそうになって一人だけ取り残されたり、それでも若宮の考えの根底がわかっている雪哉は対応します。
 今回も周到に隠されたある事実に、しっかり騙されました。それは、雪哉の素性に関することです。どうりで人物紹介に名前が書いてないはずだよ。敦房に関しても。あ、信頼できる情報源が誰かは予測していましたよ。 
 思うに、長束と自分の兄とが、無意識のうちに雪哉の中で重ね合わされているのではないかと。血筋とか命運によって選ばれることへの憤りとでもいいますか。雪哉がぼんくら次男坊を演じているのは、もう冒頭からわかっているし、若宮自身も同じような立場です。だから、若宮にも即位してほしくなかったのではないでしょうか。うがちすぎですか?
 こうなると、若宮が浜木綿たちとどういう政治を行っていくのか、気になりますね。
 今回は澄尾がすごく格好よかったので、続編での活躍も期待しています。