くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「柏葉幸子が選ぶファンタジー集」

2010-08-27 20:11:13 | ファンタジー
昼休みはずっと図書室で過ごすのですが、ただぼんやりしているのもなんなので、ちょっと手に取ってみました。「中学生のためのショート・ストーリーズ④ 柏葉幸子が選ぶファンタジー集」(学研)。
中学生むきのアンソロジーなのですが、これがおもしろくて。柏葉さんの好みの世界も覗き込めるような、すてきなラインナップでした。
半分以上既読だったのですが、読み返してみるとまた印象が違う。
というのも、もともと絵本だった「はれときどきたこ」が文章メインに構成し直されていて。中の図版や一部挿絵を残して、文字が主体になっているのです。解説によると、この作品はそれまでのこどもむけシリーズとはちょっと違い、「ことば」についての警鐘を鳴らしているとのこと。言われてみれば、息子はこのシリーズの大ファンなのに、これは借り直してきませんねぇ……。
それから「しゃばけ」シリーズの白眉「仁吉の思い人」。挿絵が柴田ゆうさんじゃないんですぅー。
でも、この話、シリーズでいちばん好きなので楽しかった。もう内容をすっかり忘れてました……。
大好きな安房直子作品「だれも知らない時間」。展開も結末も全部わかっているのに、やっぱり美しいのです。柏葉さん作の「桃の花が咲く」もすばらしいです。
小泉八雲「梅津忠兵衛」。奥田裕子訳。基本的には「産女」がもとになっているようですが、やっぱり八雲は英語の国の人なんだと感じさせられました。
氏神から預けられた赤ん坊が、重くなってくる。その描写が、「四十キロ! 七十キロ! 百キロ!」って、単位は「貫」じゃないのね、と驚いてしまいました。
柏葉さんは円朝の「死神」がお好きだそうです。ファンタジーに近い面があるかも知れませんね。子供のころに好きだった本に関するエッセイもあり、ファンには贅沢な作品集になっています。「柏葉幸子」をファインダーにして読む小説には、また違う味わいがあるのです。
このアンソロジー、テーマ別にあと数冊あります。林家木久蔵とかパックンマックンとかムツゴロウさんとか菊池仁とか。
それにしても、この夏の図書室は暑くてなりません……。