くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ダリアの笑顔」椰月美智子

2010-08-29 13:58:35 | 文芸・エンターテイメント
「転校生」! これって、あれですよね。「おれがあいつであいつがおれで」。椰月さん、確信犯の気がする。男女の双子、性格は正反対。女の子で野球をやっているぶっきらぼうな里央と、どうやら性同一障害らしい礼央。
小学五年生の健介を視点に、リトルリーグに所属する仲間たちや小学校のクラスメイトたちを描きます。すごいおもしろいから、これで一冊書いてほしいー。
綾瀬さんも内藤くんも魅力的です。椰月さん、小学生の男の子を描くのがやっぱり上手いですよね。
椰月美智子「ダリアの笑顔」(光文社)。このところまた椰月さんがいいですね。綿貫一家の娘(真美「ダリアの笑顔」)、母(春子「いいんじゃないの、40代」)、息子(健介「転校生」)、父(明弘「オタ繊 綿貫係長」)、それぞれの視点によるそれぞれの物語。
真美は三月生まれの自分が好きになれず、劣等感に悩まされています。でも、母が生まれたばかりの自分のために書いてくれた日記を発見したことで、だんだん自信が出てくるようになる。保険外交の仕事に疲れて苛々していた母が、どうしても一戸だてを買うと言い、違う仕事に就いたらなんと中学のときの友達とばったり。しかも二人も。新しい家では犬を飼うことになる。父は繊維会社で経理の仕事をしていて、インラインスケートを始め、母は空手を始めることになる。
連作ですから、その物語の後の部分が、ほかのパートによってわかるわけですが、わたしは断トツで「転校生」がよかった。すじだてもそうですが、真美の成長ぶりが。
彼女が「ダリアの笑顔」と呼ぶのは、級友の早紀ちゃんと、外ならぬ弟の健介なのです。編み物を通じて早紀ちゃんとは仲良くなり、そして、この健介の視点で見ると、真美はとっても頼りになるお姉ちゃんなんですね。ああ、いいなって。
両親のパートは三人称、子供たちは一人称です。視点の近さが、対象の客観性を表しているように感じました。子供たちの部分のほうが、わたしは好きです。
年のころからいうと、椰月さんにいちばん近いのは春子のはずなのですが。
でも、「あの頃から日々はずっと続いていて、自分はなにも変わってないと思いながら、当然ながら、いろんなことが変わってしまっているのだ」というのが、本当によく伝ってきました。
猛烈にハーゲンダッツクリスピーサンドが食べたいです。(わたしも、よく子供に内緒でおやつ食べます)