ポポロ通信舎

(旧・ポポロの広場)姿勢は低く、理想は高く。真理は常に少数から・・

三洋OBの力作を読む

2009年11月21日 | 研究・書籍
『洋友』平成21年秋号で紹介された「老大学院生体験談」の記事で
本書『マルクスの株式会社論と未来社会』を知り、手にとって読んで
みました。


最初に、パラパラと目を通した時は「アソシアシオン」「擬制資本の
マジックスキーム」などの用語が止まり、とても難解そうに見えた。
しかし、じっくり向かい合うと、著者と同じようにわたしも長く株式
会社のなかで従事してきたものとして、株式資本が行き届く形態の
役どころとしての積極面などは、何とか理解することができた。
『資本論』原典からの引用も多く、久しぶりにホコリにかぶった
『資本論』を取り出し座右に置き読解を進めた。

著者は退職後、学生(和歌山大)時代から疑問だった未解決課題を
京都大学大学院で学び、見事に検証しなおした。
指導教授が「序文」で述べているように著者、中野嘉彦氏は
「まれにみる好学の士」という形容は当たっていると思う。
これまで多くの学者達が、氏が展開するような「通過点」的な核心論議を
活発にして来なかったのはむしろ不思議。それは株式会社のもつ社会化の
意義を不必要に過小評価していたのと、崩壊した20世紀モデルへの傾倒が
そうさせていたようにも思える。ここに大胆に切り込むことができたのは
やはり株式会社員生活を十分経た著者ならではのことだったのであろう。

ルイス・ケルツ(米)の考案したESOP(従業員参加の持株制度)は、単なる
安定株目的だけでなく公平分配をもめざしたもので、日本では三洋電機が
初めて参画したということだが、このへんはさらに詳しく知りたいところ。

それにしても、実社会経験を持つOB研究生ならではの力作です



マルクスの株式会社論と未来社会
中野 嘉彦
ナカニシヤ出版

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