衆院北海道5区補選の結果について、レイバーネット管理部よりコメントを求められたので、以下の通り書き送った。以下、当ブログにも掲載しておきたいと思う。
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野党共闘の今後を占う選挙として注目を集めた衆院北海道5区補選は、野党統一候補、池田まき候補(民進、共産、社民、生活推薦)が惜しくも敗れた。選管最終確定結果はまだ出ていないが、この選挙を分析すると、野党共闘の今後の希望も見えてくる。
そもそも今回の選挙は、自民北海道連の「ドン」であった町村信孝・前衆院議長の死去によるものであった。選挙が行われることはその時点でわかっていたし、自民が町村の娘婿である和田よしあき候補(自民公認、公明、新党大地推薦)を擁立することも初めからわかっていた。
これに対し、昨年9月の戦争法(安保法)強行成立以降、野党共闘への気運が急速に盛り上がりながらも、実際の共闘態勢はなかなか確立しなかった。野党共闘の枠組みができたのは今年に入ってから、池田候補の擁立決定は2月になってからで、明らかに出遅れていた。
それにもかかわらず、和田、池田両候補の得票は、率にして10%程度(24日午後11時現在)。昨年4月に行われた北海道知事選の得票は、勝った現職、高橋はるみ知事(自民、公明推薦)が1,496,915票、敗れた佐藤のりゆき候補(民主、社民、大地推薦、共産支援)が1,146,573票。率にして24%という大幅な差があった。
この知事選は与党対全野党という構図になっていた。地域政党、新党大地が野党から与党サイドに移ったことを除けば今回の補選と極めて似た枠組みで行われており、比較の対象になると思う。そこで、新党大地の「裏切り」、池田候補の擁立の出遅れというマイナス要因があったにもかかわらず、これだけの僅差に持ち込んだことは、敗れたとはいえ、野党共闘の今後に多くの希望をつなぐものといえる。
投票率は、補選では50%を切ることも珍しくないが、今回は異例の54.99%(午後8時現在)を記録した。昨年の知事選の投票率が59%だったことと比べると、有権者の関心は高かったといえる。現在、様々な投票率アップのための施策が行われているが、「魅力ある候補者がいれば投票率は上がる」ことが証明された形となった。
今回、選挙が行われた5区のうち千歳、恵庭の両市は航空自衛隊千歳基地などを抱え、住民の3割が自衛隊関係者といわれる厚い保守地盤である。注目すべきは、その千歳市で期日前投票が前回を下回ったことだ。最近の選挙では、期日前投票は本投票の「先行指標」の傾向が強いが、厚い保守地盤があり、かつ基地の町である千歳市で期日前投票率が下がったことは、戦争法成立以降、基地の町で不安が広がっていることを裏付けるものだ。
加えて、昨年の知事選より5%近く投票率が下がり、かつ保守政党である新党大地が自民支援に「寝返った」にもかかわらず、池田候補が和田候補との得票率の差を半分以下に縮めたことは、前回と比べて保守層、与党支持層の多くが棄権に回った一方、過去数回の選挙ですっかり政治をあきらめていたリベラル層の投票率が前回より上がったことを示唆する結果である。共産党との共闘にアレルギーを示す民進党内の保守勢力がしばしば口にする「共産党との共闘は、得る票より逃げる票の方が多い」という言説が完全に間違っていることを示した。実際には、民進党には逃げるほどの保守票は初めからなく、むしろ同党がリベラル勢力によって支えられていることが明らかになったのである。
私は、今年3月に発表したレイバーコラム第25回「いま改めて考える打倒自民の可能性」で次のように指摘した。すなわち、「NHK放送文化研究所年報」2015年版に掲載された同研究所世論調査部の河野啓氏による論考「2度の政権交代をもたらした有権者の政治意識」の中で、「日本の政党のあり方」に関する調査結果を見ると、「政策が近い2大政党」「政策に差がある2大政党」のうち、前者が33%(2012年)→29%(2013年)と減少しているのに対し、後者が28%(2010年)→32%(2012年)→34%(2013年)と、緩やかながら着実に増加していることがわかる。2013年にはついに両者が逆転し、「政策に差がある2大政党」を求める有権者のほうが多くなっている。
こうした調査結果、また今回の補選に現れた民意の細かい分析の結果は、有権者が安倍自民政治に代わる新たなオルタナティブを切実に、かつはっきりと求めていることを示している。今回の池田候補の善戦は、民主党政権崩壊以降、行き場を失ったまま漂流を続けてきたリベラル勢力、安倍政権に強い不満を抱きながらも、どこに投票すべきかわからず、投票所から遠のいてきたリベラル勢力の受け皿として、野党共闘が有力な回答であることを見せつけた。安倍自民は、何とか勝つには勝ったが、この結果にはまったく満足していないだろう。
野党各党は、今回の選挙結果に一喜一憂することなく、野党共闘を今後とも進めていくことが必要である。今後、十分な準備期間が与えられれば、安倍自民1強を掘り崩す大きな力として、野党共闘は間違いなく機能する。安倍首相の長年の野望であった憲法改悪を阻止し、安倍政権を打倒する可能性が、北の大地から見えてきた。池田候補はあと一歩及ばず敗れたが、私たちに改憲阻止への希望を与える選挙結果だったと言っていい。
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野党共闘の今後を占う選挙として注目を集めた衆院北海道5区補選は、野党統一候補、池田まき候補(民進、共産、社民、生活推薦)が惜しくも敗れた。選管最終確定結果はまだ出ていないが、この選挙を分析すると、野党共闘の今後の希望も見えてくる。
そもそも今回の選挙は、自民北海道連の「ドン」であった町村信孝・前衆院議長の死去によるものであった。選挙が行われることはその時点でわかっていたし、自民が町村の娘婿である和田よしあき候補(自民公認、公明、新党大地推薦)を擁立することも初めからわかっていた。
これに対し、昨年9月の戦争法(安保法)強行成立以降、野党共闘への気運が急速に盛り上がりながらも、実際の共闘態勢はなかなか確立しなかった。野党共闘の枠組みができたのは今年に入ってから、池田候補の擁立決定は2月になってからで、明らかに出遅れていた。
それにもかかわらず、和田、池田両候補の得票は、率にして10%程度(24日午後11時現在)。昨年4月に行われた北海道知事選の得票は、勝った現職、高橋はるみ知事(自民、公明推薦)が1,496,915票、敗れた佐藤のりゆき候補(民主、社民、大地推薦、共産支援)が1,146,573票。率にして24%という大幅な差があった。
この知事選は与党対全野党という構図になっていた。地域政党、新党大地が野党から与党サイドに移ったことを除けば今回の補選と極めて似た枠組みで行われており、比較の対象になると思う。そこで、新党大地の「裏切り」、池田候補の擁立の出遅れというマイナス要因があったにもかかわらず、これだけの僅差に持ち込んだことは、敗れたとはいえ、野党共闘の今後に多くの希望をつなぐものといえる。
投票率は、補選では50%を切ることも珍しくないが、今回は異例の54.99%(午後8時現在)を記録した。昨年の知事選の投票率が59%だったことと比べると、有権者の関心は高かったといえる。現在、様々な投票率アップのための施策が行われているが、「魅力ある候補者がいれば投票率は上がる」ことが証明された形となった。
今回、選挙が行われた5区のうち千歳、恵庭の両市は航空自衛隊千歳基地などを抱え、住民の3割が自衛隊関係者といわれる厚い保守地盤である。注目すべきは、その千歳市で期日前投票が前回を下回ったことだ。最近の選挙では、期日前投票は本投票の「先行指標」の傾向が強いが、厚い保守地盤があり、かつ基地の町である千歳市で期日前投票率が下がったことは、戦争法成立以降、基地の町で不安が広がっていることを裏付けるものだ。
加えて、昨年の知事選より5%近く投票率が下がり、かつ保守政党である新党大地が自民支援に「寝返った」にもかかわらず、池田候補が和田候補との得票率の差を半分以下に縮めたことは、前回と比べて保守層、与党支持層の多くが棄権に回った一方、過去数回の選挙ですっかり政治をあきらめていたリベラル層の投票率が前回より上がったことを示唆する結果である。共産党との共闘にアレルギーを示す民進党内の保守勢力がしばしば口にする「共産党との共闘は、得る票より逃げる票の方が多い」という言説が完全に間違っていることを示した。実際には、民進党には逃げるほどの保守票は初めからなく、むしろ同党がリベラル勢力によって支えられていることが明らかになったのである。
私は、今年3月に発表したレイバーコラム第25回「いま改めて考える打倒自民の可能性」で次のように指摘した。すなわち、「NHK放送文化研究所年報」2015年版に掲載された同研究所世論調査部の河野啓氏による論考「2度の政権交代をもたらした有権者の政治意識」の中で、「日本の政党のあり方」に関する調査結果を見ると、「政策が近い2大政党」「政策に差がある2大政党」のうち、前者が33%(2012年)→29%(2013年)と減少しているのに対し、後者が28%(2010年)→32%(2012年)→34%(2013年)と、緩やかながら着実に増加していることがわかる。2013年にはついに両者が逆転し、「政策に差がある2大政党」を求める有権者のほうが多くなっている。
こうした調査結果、また今回の補選に現れた民意の細かい分析の結果は、有権者が安倍自民政治に代わる新たなオルタナティブを切実に、かつはっきりと求めていることを示している。今回の池田候補の善戦は、民主党政権崩壊以降、行き場を失ったまま漂流を続けてきたリベラル勢力、安倍政権に強い不満を抱きながらも、どこに投票すべきかわからず、投票所から遠のいてきたリベラル勢力の受け皿として、野党共闘が有力な回答であることを見せつけた。安倍自民は、何とか勝つには勝ったが、この結果にはまったく満足していないだろう。
野党各党は、今回の選挙結果に一喜一憂することなく、野党共闘を今後とも進めていくことが必要である。今後、十分な準備期間が与えられれば、安倍自民1強を掘り崩す大きな力として、野党共闘は間違いなく機能する。安倍首相の長年の野望であった憲法改悪を阻止し、安倍政権を打倒する可能性が、北の大地から見えてきた。池田候補はあと一歩及ばず敗れたが、私たちに改憲阻止への希望を与える選挙結果だったと言っていい。