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安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

公共交通と原発を中心に社会を幅広く考える。連帯を求めて孤立を恐れず、理想に近づくため毎日をより良く生きる。

原発「母子避難」の背景に福島県の県民性??

2015-08-07 23:26:45 | 原発問題/一般
読売テレビ系で、毎週木曜夜9時から放送されている「秘密のケンミンSHOW」という番組がある。これだけ長く放送が続いているということは人気番組なのだろう。ご存じの方も多いと思うが、みのもんたと久本雅美が司会を務め、各都道府県の独特の文化・習慣などを紹介していくというものだ。当ブログ管理人の家でも、他によほど面白い番組と重ならない限り、木曜日の夜9時はたいていこの番組を観ている。東京一郎・はるみ夫妻が、全国を転勤しながら各都道府県の独特の文化・習慣に触れる「全国転勤ドラマ 辞令は突然に」というコーナーも、全国転勤族の私にとって他人事とは思えない。

先日、8月6日の放送では、「全国転勤ドラマ 辞令は突然に」コーナーも終了間際になって「全国驚愕の習慣BEST3」の栄えある第1位として「福島県民の会議における行動」が取り上げられた。概略は番組公式サイトに記述があるが、要約すると次のとおり。

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全国驚愕の習慣BEST3 第1位 福島県 「会議で積極的に発言しない!?」

福島県では、会議などでも進行役の話をだまって頷きながら聞き、最後まで発言しないというのは当たり前!? 何か意見があれば、会議が終わったあとでこっそりと担当に伝えるのが福島流なのだという。
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実際の番組では、全国転勤族のため地元の流儀を知らない京一郎が、福島県内の企業の会議で「何か意見はありませんか」という司会者の発言を文字通りに受け取り、「はい!」と元気に挙手、起立。その瞬間、隣にいた上司とおぼしき人物が渋い顔をしながら、京一郎の衣服を手でつかみ、まだ何も発言しないうちから座らせてしまうシーンが映し出された。

これ以外にも、番組公式サイトには掲載されていないが、福島県の離職率が4%台で全国47位(つまり最下位)であることも紹介された。福島県民は我慢強く、どんなことがあっても会社を辞めないのだという。

これを観て、ああ、なるほどね、と当ブログ管理人は納得した。福島にいた6年間、職場の会議はいざ知らず、反原発運動の市民団体にいくつか関わる中で、会議で決まったはずの結論が、参加者のあずかり知らないところでいつの間にか覆されていることは日常茶飯事だった。誰が何に対してどのように決定権を持っているのかわからないまま、参加者が自分の言いたいことだけを一方的に主張して終わる「会議」もたびたび見てきた。

一見すれば制御不能で、会議が形骸化しているように見えながら、決定自体はどこかの誰かの手によって行われている。決して表に出てくることのない「実力者」によって地域社会全体を覆う「空気」(「福島を捨てて避難するものは裏切り者だ」がその典型例)が作られ、この空気に逆らう者は弁明の機会も与えられないまま抹殺される――よそ者には一見不可解な福島での様々な出来事の背景が、この番組で少しだけ見えた気がする。やや極端な言い方をすれば、福島では「会議室にいない者」こそが真の実力者なのだ。

離職率が4%で全国最下位というのも、平時であれば生活の安定につながり悪いことではない。しかし、3.11以降はこうした県民性が、結果として多くの母子避難者を生み出してしまったように当ブログには思える。すでに原発事故から4年を過ぎたが、福島に残って働く父親がいつまでも転職して母子と一緒に暮らす決意をできないでいることも母子避難の背景のひとつにある。厳しい言い方になるが、「父親の仕事には代わりはあっても子どもの健康には代わりはない」のだから、この問題は本来、一家の稼ぎ手の父親がそのことを理解できるかどうかにかかっている。

しかし現実はそうなっていない。政府与党が、2017年3月限りで「自主」避難者に対する住宅支援の打ち切りを狙う中で、「勝手に避難しながら税金から支援を求める者は自分勝手だ」という非難を、何の罪もない母親ばかりが背負う状況が続いている。原発事故がもし福島でなかったら、「自分が転職して母子とともに避難先で新しい生活を築こう」という決意のできる父親がもっと多かったかもしれないと思うと、やるせないものを感じる。

福島を「復興」させるにしても、意味ある除染や避難者への支援を勝ち取るにしても、福島の多くの男性が「会議室では発言せず、陰でコソコソとボスにお伺いを立てる」「現状にしがみつき、今とは別の世界=オルタナティブを創る意思も気概もない」状況で実現などするはずがない。政府・東電に舐められたくなかったら、福島の男性が現状を打破し、新しい福島を1から作り直すくらいの気概を持たなければならない。

これは別に批判ではない。原発事故の影響を完全に除去でき、子どもたちが3.11前のように、病気におびえることなく暮らせる福島が蘇る道があるとしたら、その道をひとりでも多くの県民が、少しでも早く通れるようにするために、よそ者があえて贈る「苦言」である。

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