Triority(トライオリティ)

四十にして惑う、それがトリニータ。

PO進出ならず(42節湘南戦)

2014-11-24 17:21:02 | マッチレポート14’

本当に素晴らしい雰囲気の最終節だった。試合終了のホイッスルが鳴ってわずかな沈黙の後のスタジアム全体を包んだ拍手には鳥肌がたった。あの拍手はシーズンの目標を達成出来なかったことはひとまず置いておいて、目の前で魂のこもった戦いを見せてくれた選手たちへの労いの拍手だったと思う。結果は二の次とは微塵も思わない。だけど、10月から豹変したチームは結果が伴わなくとも大多数の人に拍手させたいと思わせるほどに成長したことは間違いない。もちろん自分も最大限の拍手を送った。

シーズンが終了したので、シーズンを通しての感想になりがちなので、この記事では最終節の試合に出来る限り絞って、シーズン総括は次の記事で書こうと思う。


この試合で一番目立ったのはジョンヒョン。もうその活躍は3年間見続けた者にさえも少々の驚きを帯びさせる。水戸戦の後半戦に見せたFKで「あ、ジョンヒョンあるな」とは思ってたけど、それでもあのブレ球FKにはド肝を抜かされた。かつてこのスタジアムで「ベッカムのよう」と発言した選手がいたが、昨日そのスタジアムでクリスチャーノ・ロナウドの影をオレは見たよ。

もう一シーン。後半始まってすぐに相手陣内で相手の縦パスをカットして、そのままドリブルでゴール前に侵入。ファーに流れ気味の林に縦パスを送るもDFにカットされるけど、そのこぼれ球を直接シュートしたシーンがあった。偶然に見えるこぼれ球も前に前に進む選手にこぼれてくる必然性があると個人的には思ってる。2列目、3列目にそういう意識の高い選手がいるチームは強いと思うし、シュート自体はしょぼかったものの、そのジョンヒョンの意識こそがチームに推進力をもたらしていた。そのシュートも含めて、アンカーに位置しながら多分4~5本はシュートを打った。まだまだ最良のチョイスをしたとは言えないプレーも多いし、判断の面で改善の余地は残すものの、田坂さんが辛抱してその成長を待った秘密兵器がこの最終盤で遂に花開いたと言っていいでしょう。ちなみに最後に判定への不満でボールを叩きつけたのは、完全にジョンハン先輩の影響と思われる。

今季成長が著しかったタメとジョンヒョンの同級生コンビ。思い返すと二人のルーキーイヤーだった一昨年のアウェイ横浜FC戦はダブルボランチで同時起用なんてこともあったし、その年の大一番だったアウェイ千葉戦もジョンヒョンは先発だった。苦しかったけど、どっちも勝ってるんだよね。この二人をここまで育て上げたことだけでも、田坂さんは育成に関しては胸を張っていいんじゃないかな。来季も二人とも残ってくれると本当に嬉しい。



田坂さんが言うように負け惜しみでなく五分の勝負が出来たと思ってる。でもそれは勝ちたくてたまんないうちの心理状態を分かった上で湘南が真っ向勝負に応じてくれたからに他ならない。ちょこざいなゲームコントロールをすることなく、いつもの湘南で戦ってくれた。悔しいけど、そういうところを含めて完全に格が違った。「内容」は五分だったかもしれないけど、結局「結果」の部分は順当でしかなかった。間違いなく「過去最高、最強」だと思いますよ。でもそれは湘南ベルマーレ史上ではなく、J2史上「過去最高、最強」だと言っても過言ではない。常識的な投資でこんな成績出せるクラブなんて今後そうそうないと思う。でも楽しみな反面、来季のことを思えばきっと恐いよね。10年、13年と来年、また失敗すれば3季連続のUターンだもんね。別に応援する気はないけど、ここまで強かったクラブが来季J1でどこまでやれるかには興味がある。それと4年続いたあのスタジアムとお別れ出来るのは正直嬉しい。


先に10月にチームが豹変したと書いたけど、終わってみればその10月からの残り8試合は4勝4敗だったわけで、昇格を目指すチームの成績としては不十分だった。それでも個人的にはあの磐田戦から気持ちがブレることは全くなかった。それは目指すサッカーの完成に近付きつつあるチームの手応えが手に取るように分かったし、クラブ全体の前向きなメンタリティも分かりやすく伝わってきたからだと思う。それを信じられたからの気持ちの安定だった。そしてそれを象徴するようなゴールが林の先制点だったように思う。大きくボールを動かした若狭のサイドチェンジ、完全にサイドを破った西と怜の二本の矢、そして抜群のタイミングでニアに飛び込んだ林。そうそうお目にかかれない美しい崩しの形だった。正直、西や怜のSB起用については否定的だったけど、この終盤は両側に構えても、同サイドに並べても、効果的に相手陣内に突き刺さった。懸念してたディフェンス面も対人についてはかなり上達したし、後はポジショニングと高さかな。前者は経験を積めば改善するだろうけど、後者はどうにもならないところがある。怜の去就も含めて(西は今日の合同のコメントで残留確定と見てる)、来季以降はどうなるか分かんないけど、複数ポジションをこなせることは試合中の不測の事態に対応しやすいという面もあるから、ないよりはいい。いずれにしても松原健の動向次第か。そして林は本当に救世主並みの仕事っぷりだった。近年の夏の補強選手の中でも特A級認定でいい。林の獲得が発表された時に何の期待感も持たなかったあの頃のオレをぶん殴ってやりたい。林を放出してから下降線を辿った岡山と獲得してから上昇曲線を描いた大分。直接対決でも決定的な仕事をしたし、あまりにも対照的。さてと、FC東京のクラブハウスにお歳暮を贈る準備をしとかなくっちゃ。



高木の涙は正直意外だった。ウエリントンにぶちかましたジャンボ鶴田ばりのジャンピングニーに代表されるように、高木のこの試合に対する気持ちの入り方はスタンドから見ててもすぐに分かった。サカダイのインタビューで今季は今までにないくらいにサッカーに時間をかけたというようなことを言ってたけど、それは40試合に先発してフィールドプレーヤー最長の出場時間という数字を見るだけで分かる。引退以外で高木ほどのベテランが涙するところはあまり見たことがなかったから、このシーンを見た時はグッときた。





試合結果がどうなろうと、既に来季に向けある程度の方向性が決まっていたかのようだった社長と監督のセレモニーでのコメント。社長が言うところの「勝負」というのが何を意味するのかは分からないけど、その言葉に素直に来季への期待を感じたし、個人的には昨シーズンからずっと反対してた田坂監督の続投にも今のサッカーならもう一年という気持ちがあの場で芽生えたことも事実。例えば、ダニエルの獲得に当たって、複数クラブと競合したと何かに書いてあったのを読んだ。もちろん競合の相手や条件も詳細には分からないけど、それを読んで感じたのはJ2では「勝負」が仕掛けられるくらいの土台は固まりつつあるんだなということ。




一般的に「勝負」と言うと、「大型補強」をイメージしてしまうけど、アノ一件からまだわずか5年。極端なその方向性はこのクラブが目指すべき方向性と違うと思うし、来季はそれこそ大分トリニータの「未来たち」が入団してくる。アカデミーの強化だって立派な育成だし、もっと言えば希望だ。信頼する青野社長がその方向性を踏み外すことはないとは思っているけど、「勝負」と言い切った社長の表情に心のどこかでうっすらと前社長の雰囲気が感じとれちゃったことは否定しない。


とにかく試合単品で評価すれば、とてもいい試合だった。チームの完成度だけを見れば、「終わり良ければ全て良し」と言いたいところだ。純粋にサッカーだけを楽しみたいという思いもあるけど、やっぱり「終わり良し」と言えるのは、順位であり昇格だから、今季の評価として「終わり良ければ全て良し」とはならない。その辺は総括記事に書こうと思う。

まずは大分トリニータに関わる全ての皆さま、1年間お疲れさまでした。また来季がんばりましょう!
コメント (8)
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