昨シーズンのプレーオフ以来の対戦となった熊本。またも決着つかず。
まずこの試合で結果を置いといて好感が持てたのは必要以上の熊本対策で臨まなかったこと。前節でも書いたけど、まだ今は地力のブラッシュアップを優先するべき時期。目の前の勝ち点1が大切なのは当然なんだけど、それで目指しているサッカーを置いてきぼりにしてしまっては例え目標達成出来て来季めでたくJ1で戦えることになったとしてもあっさりと降格することは目に見えている。勝ちたかった、3連勝したかったけど、語弊があるかもしれないけど「ちゃんと」試合して勝ち点を取ったことは評価出来ると思う。昨シーズンのアウェイゲームとプレーオフはともにゴリゴリの熊本対策だった。そして小出がミスをするまではそれはずっとうまく進んでいた。だからその(ほぼ)成功体験をもとにこの試合でもそういうやり方を採用しても不思議ではないなと思っていたから、少し驚きもあったし、何とかこれがチーム力の向上に繋がってくれればと願う。
細かいところに目を向けると藤本、伊佐、将輝の3つの決定機のうちどれか1つを前半のうちに決めておきたかったね。特に藤本のは決まっていればベストゴールへのノミネート間違いなしの3人抜き。シュートもミスでないだけに決めきりたかった。ちなみ個人的にここまでのシーズンでのベストゴールは山口戦の藤本のドリブルゴール。ここからは昨シーズンの健太と比較されることが多くなってくると思うし、より高い期待がかけられてくると思うけど、ここまで十分によくやっていると思うので、藤本には自信を持ってほしい。昨シーズンあれだけ大分サポーターに頭を抱えさせた守備も、密かに(あまり言及されなくなったという意味で)劇的によくなっている。そして武器である攻撃にもさらに磨きがかかっている。昨シーズンの今ごろの健太は完全に良くも悪くも藤本の日陰に入っていて、数ヶ月後にマリノスに移籍するなんて誰も思っていなかったと思う。ただ特にクロスの部分で健太が努力をしているんだろうなというのは手に取るように分かったし、藤本もここからが勝負だ。さみしいけど、シーズンオフにJ1に強奪されてしまうくらいの活躍をしてほしいと心の底から思っている。絶対やれる。
入団からしばらくはあまり良い印象を持てなかった中川。チーム全体が悪かったから当然だったのかもしれないけど、彼の印象が完全に覆ったのは他でもないプレーオフ熊本戦。前プレの代名詞といえばやはり伊佐になると思うけど、あの試合は中川もすごかった。間合いを詰める、パスコースを消すだけじゃなくちゃんとボールを奪いきりにいく姿勢がすごく良い。そして実際にボールに触って何かを起こしてくる。今シーズンは序盤は司にポジションを明け渡したものの、文字通りぶっ倒れるまでフルパワーで走りきる中川の良いところがどんどん出始めてきている。それがここまでチーム最多の4ゴールという結果にも結びついていると思う。この試合唯一の失点のきっかけになってしまったりとまだまだ改善の余地は当然あるわけだけど、走れる中川は見ていてシンプルに気持ち良い。
痩せたぜ、サムエル。古くは松坂大輔、サッカーなら大前元紀とシーズンオフにどうしたって太ってしまうアスリートというのはいるわけでもうサムエルもそういうもんだと割り切ろうぜ。痩せたとたんに見違えるようにボールも収まるようになるサムエル。わずか10分だったけど、ここからのサムエルに期待したくなってしまうような10分間だった。今の大分の弱点は最初に自分たちで描き始めたストーリー以外では勝ち筋を見出せないこと。例外は開幕の徳島戦くらいなもので、今は強引に自分たちのストーリーを描ききってしまう強さがあるから隠れてはいるものの、ちょっと相手チームから筋書きを変えられてしまうと途端にアドリブが効かなくなる。上位でシーズンが進めば予想外の書き換えられ方をすることが当然増えてくるわけでいつまでも一本調子で結果がついてくるほど甘いリーグではない。だからこそ書き換えられたストーリーをもう一度上書きし返すことの出来るサムエルの存在にはとんでもなく期待している。
対戦相手の熊本。昨シーズンの躍動は見事だったものの一転してオフシーズンでは地獄を味わった。菅田、河原、高橋利樹の背骨を完全に粉砕されただけでも大ダメージなのにさらに坂本、杉山という両方の翼までもがれてしまった。予想された主力の流出のうちただの1人も留められなかったことは熊本のクラブとしての今後の課題なんだろうね。ただ移籍による経済的な上積みは確実にあったようで、昨シーズンは黒字だったというニュースを見た。この部分のバランスをどこまでいっても難しいわけで熊本も大木さんのチームがうまく回っている間がクラブとして一歩前進する良いタイミングなんだろうね。抜けた穴の部分には石川大地や大本という岐阜時代に大木さんのサッカーを経験している選手を的確に補強し、メンバーがガラッと変わった割には序盤からそこそこやれているのはさすがの一言。
その石川大地。大学の頃は10番的な立ち回りの選手だった印象だけど、求められれば9番の仕事もやってのけてしまうのは見事としか言いようがない。この写真は2017年のデンソーチャレンジカップ。岩武、三笘、旗手あたりが全日本で、坂、新太、守田あたりが関東Aに選出される中、石川大地は関東Bでまだ知る人ぞ知るレベルの選手だった。岐阜→鳥取→熊本と少し遠回りをしたものの現在J2得点ランキング3位タイ。素晴らしいね。ちなみにこのデンチャレでの石川大地は抜群で、自分はこの試合で完全に石川大地の存在を覚えた。62分の収め方とかかなり好き。
昨日は先日2025シーズンの加入内定が発表された中京大の有働夢叶くんが見てみたくて愛知県三好市の東海学園大グラウンドまで東海学生リーグを観に行った。東海学生リーグを観るのは人生で初めて。有働くんはサブメンバー入りしていたものの、結局出場機会はなく残念ながらその勇姿を見ることは出来なかった。先週の天皇杯予選は出ていたものの、リーグ戦前節もメンバー外だったのでもしかするとどこか調子が悪いのかもしれないね。
おそらくこの中にいると思うんだけど、何しろ実物を見たことがないうえに、暗い大学グラウンドでの16時30分キックオフの試合だと見分けがつかず。
お目当ての有働くんが見られずに残念と思いつつも思いがけない発見も。2018年の帯広でのクラ選で良い選手だなと思ってこのブログにも書いた武藤寛くんが中京大にいた。中学年代はフェルボール愛知に所属していてそこから市立船橋に進んだところまでは把握していたけど、何しろコロナでその後は分からなくなっていたわけだけど、こんなところでまた見られるとはずっと育成年代を追いかけているとこんな面白いこともあるもんだなと実感。武藤くんは試合途中にサイドからトップ下にポジション変更し試合を決定づける3点目を決めた。
それと9永田貫太(鵬学園 4年)の先制点すごかった。スペースへの飛び出し、完璧な切り返し、ファーのサイドネットに巻き気味に突き刺したシュート。一つのミスもないパーフェクトなゴール。
もう3日後にはアウェイ山形戦。今シーズンここまで前の試合から5日以上のインターバルがない試合での結果は3勝1敗と上々の結果。まだ短いインターバルでの試合が4試合も残っているのでうまく立ち回りたいところだ。昨シーズン一番やりにくかった相手は山形だったと思う。プレーオフで熊本に勝っても山形が勝ち上がってきたらほぼほぼノーチャンスだなと思っていたくらいだ。ただ今シーズンの山形はずっとうまくいっておらず、監督交代という劇薬投入済みにも関わらず自動降格圏と勝ち点差なしという惨状。前節の東北ダービー仙台戦でもこれ以上ないダメージの残る負け方をしているので、この流れに乗って昨シーズンの嫌な感触を忘れてしまうような快勝を期待したい。