降格したのに、この何の感情も湧きあがってこない感じは何なんだろう。4年前とはえらい違いだ。この記事も2週間前には大体書き終えてたから、腐らないうちに早く公開しときたいなんて思うようになってしまう始末。
ということで、大分トリニータの2度目のJ1チャレンジは何のインパクトも残せないままにひっそりと終焉を迎えた。せめて残留を争ってほしかったし、J1昇格を決めたあの歓喜の国立からせめて1年はJ1でいて欲しかったよ。文字通り「救いようのない」シーズンを心を鬼にして総括する。
個人的に降格してしまったポイントとして4点書きたい。
1.『補強の失敗』
第26節ホーム湘南戦のコラムが掲載されたエルゴラに象徴的な文章があったので、引用したい。書いたのはエルゴラの大分番記者であるひぐらしひなつさん。
「西の滑るようなドリブル、為田のやんちゃな仕掛け、森島の迫力に、チェ・ジョンハンの突貫小僧ぶり、土岐田や安川の意表を突く最終ラインからの攻め上がり。いま最もサポーターが見たがっているのは、選手たちのそんな姿だ。」
この記述に100%共感なんだが、冷静に考えてみるとここに一人も今季J1で戦っていくために補強された選手がいないことに気付く。9月のこの時点で新たに補強された選手がほとんどチームに貢献していなかったことが分かる象徴的な文章だと思う。稼働という面でかろうじて木村に合格点が出せる程度でその他のシーズン前に補強した選手は期待に応えられなかったとハッキリと言える。もっとストレートな言葉で言えば、「失敗」だ。特にDFラインには十分な補強をした印象だったけど、結局のところ夏頃にはスタメンに阪田が名を連ねてる方が安心感があるという状態だった。松本怜についてはケガが多く同情の余地はあるものの、反面1シーズンでこれだけケガを繰り返すのはケガをしやすい体なんじゃないかという推測も出来る。J2で戦う来季以降もビッグクラブで燻る戦力をお借りするという方針は絶対に避けては通れないと思うけど、何と言うか、能力的に燻る選手ではなく、能力的には既に疑いがなく出番で燻ってる選手を冷静に見極めてとってこないと即戦力化するのは難しいと感じた。
松田力や梶山のようにシーズン途中で補強した選手たちには「当たり」と言える選手もいたものの、うちのように戦力で上回る相手に組織的に立ち向かっていかなければならないチームでやはり重要なのはシーズン前の補強だ。シーズン前は追い立てられるものがない状態でじっくりと1ヶ月半も戦術構築に時間が割けたわけだから。
この後に列挙する3点は雰囲気的なもので個人的な思いに偏ったものだけど、この「補強の失敗」については誰もが認める今季降格の大きな要因になったということで間違いないでしょう。もともと選手層が厚いとは言えないクラブがなけなしの金で補強した選手たちが戦力にならなければ、そりゃ降格する。特に経験値からいって、高木と深谷にはガッカリした。
2.『きっかけ』
ここで言うきっかけというのは、ポイントとなる試合をことごとく落としてきたということ。そもそも1勝しかしてないわけだからポイントとなる試合というよりもほとんどの試合を落としているので、的外れな指摘かもしれないけど、ここではもしそのポイントとなる試合を勝ってればという、「たられば」の世界で読んでいただければと思う。
自分がきっかけだったなと思う試合は、第5節H甲府戦、第7節A湘南戦、第15節H仙台戦、第18節A鳥栖戦、第21節A浦和戦の5試合。多すぎるというご指摘もごもっともだと思うけど、このうち1つでも勝ててれば、もうちょっと悪あがきというか、せめて残留を争うことくらいは出来たんじゃなかったのかなと思ってる。
まずは第5節H甲府戦。これは言わずと知れた「昇格クラブ勝ち点5のジンクス」がかかった試合だった。結果的に今季もこのジンクスをパスした甲府が生き残って、パス出来なかったうちと湘南(多分)が叩き落とされるというジンクス通りの結果になった。
当時の記事で書いたけど、このジンクスって確率の面だけを見ても多分Jリーグで噂されてるあまたあるジンクスの中でも最強。そんな大事、いやこのジンクスのことを例え選手や監督が知らなかったとしても、昇格クラブ同士の直接対決なわけだからもちろん大事だった試合をあまりにも不甲斐ない内容で落とした。失点シーンなんて自分のチームながら失笑しちゃったもんね。
第7節A湘南戦。この試合もたった2節前に直接対決に敗れたばかりなのに、それを取り返そうという気概の感じられなかった試合。屋根がなく値段が高くて、さらに見にくいスタジアムのスタンドでびしょびしょに濡れて身も心も芯まで冷え切った印象だけが残る試合。
第15節H仙台戦。1ヶ月以上の中断明けの横浜戦を希望の持てる内容で終えて、ホームに戻ってきた1戦。ここでポイントとなったと思うのは、試合というよりも一つのプレーだ。確か前半15分くらいだったと思うけど、仙台の蜂須賀が出したイージーなパスミスをかっさらった松田力がキーパーとの1対1を外したシーン。多分冷静に振り返れば、あそこで決めてればなんてシーンは他にもいくらでもあったと思うけど、特にこのシーンでは自信を掴みかけてたチームがホームで真夏の連戦の試合序盤にいきなり先制点をかませれば、どれだけ楽になってたことかと思わざるを得ない。この試合に限らず運でも誤審でも何でもいいからもっと実力以外で勝ち点が転がり込んでればなと思うことが今季は特に多くあった。この試合も結局、真夏の連戦にありがちな動きの少ない膠着状態が長く続く試合で、前半の失点を最後まで返せずに終わってしまっただけに、序盤の決定的なシーンを決められなかったことは本当に痛かった。いま思うと、あそこで繋がりそうだった流れがプツリと切れてしまったような印象だ。まあ松田力はヘディングシュートとぶちかますシュートは絶品だけど、繊細な足元は並のFWだもんね。
鳥栖戦については別のところで書くので割愛。そして浦和戦については言わずもがな。この試合こそ、最後はどんな形でもいいから勝ち点3が転がり込んでて欲しかった試合。前節梶山が上々のデビューを飾ってチーム状態も上向き加減、そして望外の3ゴール。どんなに弱くたって残り70分で3点リードしてたらやりようはあったはず。サッカーってそういうスポーツだと思うし。それが出来ないところに、シーズンの流れを自力でこっちに向かせるだけの力強さが全てにおいて欠けていたということが象徴されてる。この試合後に梶山が途中で戦い方を変更したいと思ったけど言わなかった、言えば良かったみたいなことをコメントしてたけど、それを加入して2試合目の選手に言わせちゃって周りの選手どうなのよって思ったことを強く覚えてる。
あの松田力のシュートが入ってれば、さいスタで3-2でいいから勝ってれば。本当にそういう試合をことごとくあっさりと落とした。きっかけを自ら放棄してたような印象すら受けた今季だった。
3.『採用した戦術の失敗』
田坂さんが就任後一貫して言っている「走ること」と「ボールを動かすこと」。J2でやってきたことを昇格後も継続したこと自体は悪いことだとは思わないけど、結果的にはこの成績だし失敗だったわけだ。田坂さんがこの戦術を採用したことがベストでそれ以下も考えられたとも言えるけど、まあでもこの成績ならそういう可能性を加味したとしても最低の成績と言われる部類に入るでしょ。確かに「走ること」に光明を見出したかったし、専門のコーチの招へいも期待した。でも冷静に考えれば、今のJで走りに重きを置かないクラブなんてあるわけないし、その中で傑出した走力を発揮するのは並大抵のことじゃないわけだし、それをさらに「ボールを動かす」という戦術と同時進行させていってどっちつかずで終わっちゃったのってある意味で必然だったように思う。試合は負けたけど、よく走ってたっていう試合も結局のところほとんどなかったし。ついでにその期待された専門のコーチだけど、抽象的な言葉ではあるけど、負けた試合後にあたかも出来ない選手たちのせいにしてるかのようなことをtwitterでつぶやいてて、しばらくは我慢してたけど、さすがに我慢出来なくなってフォローを外した。言葉の真意は分からないけど、プロフェッショナルなら結果の出ない時は誤解されるようなことすらも言わずに黙ってろって話だ。
シーズン前はとにかくサッカーの面で「ブレない」でほしいと強く思ってた。今まで降格したチームを第三者として見てきて、そのまま継続してれば、必ず上向きそうなのに、目先の勝ち点に目がくらんで、迷走するのを何度も見てきたから。でもここまで成績悪いと、さすがに「ブレろよ!」と思わざるを得なかった。サッカーに限らず、理想を持って地道に取り組むことはとても大事なことだと思うけど、弱肉強食感の強い勝負の世界では具現化出来ない理想は鼻くそ同然で、前向きになれる要素を何も生み出さないことを痛感した。最後までほとんど「ブレなかった」田坂さんの心の強さは立派だけど、成績というフィルターを通してしまうと、「試行錯誤」を怠ったという評価を下されても仕方ないと思う。それほどまでに酷い成績だということ。
4.『雰囲気』
一言で言って、降格やむなしの雰囲気が常にクラブ全体にあった。まず個人的には今季の最大の目標は残留ではなかった。クラブとしての根をしっかりと張りつつ、それが出来た上でお財布的に無理をしないで残留出来るならした方がいいというスタンスだった。次にクラブとしては、J史上最悪の成績の監督と心中すると決めた時点で降格もやむなしと思っていたはずだ。田坂さんには十分な戦力を与えられていないし、この成績でもやむを得ないと思ってたはずだし、推測だけどそのことを田坂さんにも伝えてたんじゃないのかなと思う。最後にサポーター。09年の時と同じような成績でシーズンが進みながらも、選手の補強や監督の交代を求める声が圧倒的に少なかったことが降格やむなしの雰囲気を如実に物語ってる。09年の時との比較でなくて一般的なクラブと比較しても、これだけ酷い成績のクラブに対してここまで寛容なサポーターはある意味で異様だと思う。それってまさに09年までの失敗を見据えてるサポーターが多いことに他ならないからだと思う。09年のオフに多くのサポーターが自らが愛するクラブが消滅する恐怖を現実として受け止めた。だからクラブが消滅してしまうことに比べたらJ2降格なんてサラッと受け入れられるという異質のメンタリティを身につけてるからだと思う。そういう全体の雰囲気が、いつまでも反攻に転じられずズルズルと下がり切ってしまったことに影響を及ぼしたことは否定出来ない。もちろんそういう接し方をしてるサポーターを否定する気持ちも全くないし、何よりも自分がそうだから。
ここ1ヶ月ほどJリーグに関わる人たちの間では、2015年から復活するという「2ステージ制」の話題が熱を帯びてたけど、大分界隈で盛り上がりを見せることはなかった。なぜなら2014年度末を越せなければ、オレたちに2015年が来ることはないからだ。だから所詮「2ステージ制」なんて他人事なんだ。「2ステージ制」だろうが何だろうがトップカテゴリーでサッカー出来てりゃ文句ねえだろってな感じでしょうか。これってやっぱり言いかえれば、今の大分トリニータというクラブにとって優先順位が高いのはサッカーで上を目指すことではなく、財務面の強化だということだと思う。もちろんだからと言って、昨シーズン昇格しなければ良かったというわけじゃないし、09年のような過ちを犯さなかっただけフロントは最低限の仕事はしてくれたと思ってる。
以上、4点を思いつくままに書いてみた。じゃあ、これからどうしていくのかってところを考えていかないと、一応J1として過ごした1年弱が本当に無駄な時間になっちゃう。
前から思ってるけど、責任者を置くことが必要だと個人的には思ってる。今季に関しては田坂さんを解任するという選択肢はシーズン前から想定に入れてなかったんだろうけど、そもそも今後そういう状況に陥った時に決断を下す責任者が誰なのか大分の場合よく分からない。サッカー素人の社長はそんなこと出来ないだろうし、強化部がどこまで権限を持ってるのか分からないし、監督がクラブの全権を掌握することは最も危険な状態だと思うし。金がないのは分かるけど、決断を下す責任者が誰なのかはハッキリしてほしいと常々思ってる。上の方で鳥栖のことを割愛したけど、ここでちょっと触れておきたい。悔しいけど、ここ数年で鳥栖は九州のトップクラブ(あ、盟主って言うんだっけ)になった。サッカーが大分の上をいってるのは言わずもがなだが、クラブの体制も鳥栖は間違いなくJ1に定着するクラブになりつつある。詳細は長くなるので書かないけど、1年ほど前に徹マガで鳥栖の社長のインタビューを読んで、随分と先に行かれたもんだと思ったし、何よりも今季多くの人が大分への移籍を熱望してた菊地直哉を鳥栖に奪われ、そしてその菊地が出場した大事な直接対決に敗れたことはクラブの総力で上回られたことの象徴的な試合だったんじゃないかと思ってる。もちろん大分のフロントがオファーを出したかどうかも分からないけど、菊地が最終ラインに定着した鳥栖がその後順調に勝ち点を積み上げて早々に安全圏に逃げ込んだのを見れば、多くのサポーターが期待した「菊地の獲得」というのは、耳を傾けるべき「声」だったことは間違いない。でも責任者がハッキリしないと、果たして当時どうだったのかすら分からないから良くないと思うわけだ。
それともう1点。J1に上がることのメリットやJ1にいることで享受出来る利益をしっかりと把握しておかないと、今後またJ1を狙う時に県やスポンサーの協力が得にくくなっちゃうんじゃないかと思う。分配金とかが出てきて、収益がハッキリとするのはもっと後だろうから、今は分からないけど、とりあえず手っ取り早いところで観客動員はよく考えなきゃならない。
J2だった12シーズンとJ1だった13シーズンの観客動員を比較してみる。
まずは平時の最多動員試合。
2012・41節山形戦 17,028人
2013・ 1節東京戦 17,055人
総力戦
2012・32節甲府戦 23,617人
2013・20節柏戦 23,814人
湘南戦
2012・24節湘南戦 10,137人
2013・26節湘南戦 8,520人
シーズン前は4年ぶりのJ1だし、正直もっとお客さんは来ると思ってた。でもこうやって数字を並べてみると、お客さんが何を観たがってるかは一目瞭然。特に2年続けて同じディヴィジョンで戦った湘南戦の数字は顕著。12シーズンの湘南戦は前節の勝利でシーズン初の首位に立って臨んだ試合(結果が惨敗だったのは内緒だが)。一方の記憶に新しい13シーズンの湘南戦は半年間ホーム未勝利で降格秒読みで迎えた試合。J1だからというだけでお客さんが入る時代ではなくなったと捉えるべきなのか、ディヴィジョンに関係なく勝てなきゃお客さんは来ないと捉えるべきかはまだ分からないけど、この観客動員数を見るだけでも「J1昇格」が万病に効く特効薬でないことは明らか。例え「万年J2」でも安定的に1万人に愛され支えられるのなら、そっちの方が幸せかもしれないということも一つの目指すべき道だと思う。それが絶対に正しいとはもちろん思わないけど、あくまでも選択肢の一つとして。
総括とか言いながら完全にとりとめなくなってきたし、結局のところ自分でも何が言いたいのか良く分からなくなってきたので、この辺で締めます。これ書いてる途中に発表された
社長のコメントを読んで少しは前向きになれた気がする。シーズン中に選手や監督を見てて、「大分はまだ死んでない」って思えたことは一度としてなかったけど、この社長のコメントを読んでやっと「大分はまだ死んでない」って思えたような気がした。何て言うか、もう一度気持ちをリセットして、また一生懸命に大分トリニータを応援したいよ。「応援する」ってハッキリとは今はまだ思えない。今はそんな気持ち。